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引きこもる危険を避ける

40年くらい前の今頃、大学の入学式が終わり、いよいよ4年間という学究生活を始めることになりました。入学するまでは長い道のりでした。3科目の受験勉強ではあったものの、当時は狭き門。倍率は10倍であって、ほとんどが朝から夜遅くまで受験勉強に明け暮れていた。受験勉強というのはひとりで机に向かっている時間が長く、日中外に出ることはありませんでした。

ようやく長いトンネルから抜け出して、桜が満開になり、陽気がすっかり春になった。ただ、外に出ると覚えています。日差しがまぶしい。そこですぐ校舎の中にはいってしまった。それでも、それだけで済んだ。

先週の水曜日、3月30日、18:00から政策大学院主催のオンラインイベントに参加しました。そこでテーマに取り上げられていたのは、「引きこもり対策 ・・・ メタバースを活用する」というもの。

引きこもりって何だろう。メタバースを使って解消できるんだろうか。益々、引きこもるようになるんではないのか。そもそも何が原因でひきこもってしまうんだろう。病気なのか、行動嗜癖なのか、それとも社会問題なのか。区分けは専門家の中でもはっきりしていない。

イベント内の発表によると日本国内に引きこもりといわれるひとたちが100万人以上います。社会的孤立状態にあり、孤独感を強く感じているそうです。インターネットを使った無作為抽出の調査結果が読売新聞に掲載されていました。3011人から有効回答をうけ、20代では、43%近くが孤独感を感じるといいます。

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出所 「コロナ禍の孤独 深刻…若者・低収入の人 割合高く」 読売新聞、2022年4月6日 朝刊

この文章では、20代の大学生を対象にします。その中で医者にはかかっていない人。そして自身がやや引きこもり傾向があり、孤独感、虚しさを自覚している人。そういうひとに向けて書いてみます。わたしは、医者ではなく、心理学や社会学の専門家ではないことを断っておきます。

ですので、医者が病名をつけて、医療行為を受けている人は対象にはなりません。心理療法や社会的な団体NPOの支援をうけているひとも対象になりません。そういう前提でひきこもりへの危険を書いてみます。今はだれにでも引きこもってしまう危険性があります。それは、社会的な安全装置が働きにくくなっていることが背景にあります。

まず、その危険性について3点あげて、どういうことに注意すればいいか。注意しながら、外へ、外へと向かうにはどうしたらいいか。そんなことを書いてみます。

ネット依存

まず、第一に考えられるのがスマートフォンのやりすぎでしょう。平日、自由になる余暇の時間(Personal)は4時間くらいといわれています。8時間は勉強か運動をしている。4時間は生活に必要な行為(Survival)。つまり、食べる、お風呂に入る、掃除をする、買い物に行く。8時間は睡眠(Sleep)。平日の月曜日から金曜日、余暇の4時間で2時間以上スマホを使う人はスマホ依存症といわれます。

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出所 Adam Alter, "Why our screens make us less happy", TED Talk 2017
This is one of the best TED stages I have ever seen on You Tube.

スマホは、エンタメのツールであって、だれでもそそられるようなもの、あるいは、やみつきになるようなものがちりばめられています。もともとがカジノにあるスロットマシンをモデルに作られたものです。そういうものにとりつかれるとひとりでいるだけで時間が過ぎて行ってしまう。

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出所 Cal Newport, "Quit social media", TED Talk, 2016

中身は、ゲームが多く、これはゲーム廃人になってしまう危険性があります。SNSは、何の意味もなく、娯楽性、快楽性だらけで楽な方へ、楽な方へといく危険があるのです。facebook、インスタグラム、twitter、TikTok、 YouTubeといったSNSはすべてユーザーから時間を奪うことを前提に作られています。気楽にだれでも使えるが故にはまると抜け出すことが難しい。

facebookでは、コネクト(つながる)する必要はなく、インスタグラムは、投稿する必要さえありません。動画サイトも注意が必要です。

ゲーム、SNSだけでなくニュースもよくありません。20代であれば、ニュースなどは毎日、見る必要はなく、週末にまとめて1時間ほど見れば十分です。フェイクなのか、ほんとうなのかを見極めるのが難しい。これはあらゆるニュース番組についていえます。ほとんどが、大学生にとってはゴミです。このnoteでさえもSNSであり、そんなに読む必要はありません。有害になる可能性があります。

一度悲しい気持ちになるとかえって悲しさを増し、虚しくなるというのが実証されています。日常でもいったん虚しくなるとそれが頭から離れないという傾向があることがいわれています。

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出所 Alison Ledgerwood, "Getting stuck in the negatives", TED Talk, 2013

有効に時間を使うには、人との関係がとても大切。孤独感はとても耐えられない。それが1938年から75年以上続いている調査でもわかっています。

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出所 Robert Walinger, "What makes a good life? Lessons from the longest study on happiness", TED Talk, 2016  2,250回以上再生

メールも頻繁にチェックする必要はない。1日1回で十分。スマホは持つ必要はありません。PCもそれほどスペックのよいものでなくてもよい。10年くらい前のもので十分です。秋葉原なら2万円台で売っています。たとえ所有したとしても使う局面は少ない。

勝負性の高いスポーツ

次に危険なのが運動です。運動でも勝負性の高いスポーツは危険です。たとえば、バレーボール、テニス、ゴルフといった球技です。気軽に同級生と週3時間程度であれば問題はないでしょう。その3時間の中で身体をほぐし、気軽に汗をかくのはとてもよい。

ところが競技になると話が違ってきます。バレーボールは、大学レベルであれば、競技としてやるしかなく、気軽な練習というわけにはいかない。そんあこともあり、わたしは、中学、高校と6年間やっていたバレーボールをやめて、大学のときは、テニスを始めました。

ところがテニスもやってみるとわかります。中にはとても勝負性の高いサークルがある。そういうところでやりすぎると逆効果になるでしょう。そして安いからといって市民で運営しているテニスクラブやテニスオフで参加できるようなものに行きだす。そうするととても不快な体験をするものです。そういったところは社会的な安全装置が機能していない。

市民のテニスクラブは年間1.5万円程度でできるもので安価です。月千円ですから、月1回いけばもとは取れます。

運営は市民クラブがしており、そこに頻繁にいくようになると運営を手伝わなくてはなりません。一般市民は運営のプロではなくボランティアです。素人が独自のやり方で運営している。大学生がそういうところでテニスをするには向いていないのです。そこで不快な事件に遭遇するとテニスをしなくなってしまう。他で気軽に練習するくらいでいいのです。

ゴルフについてはいうまでもなく、時間とお金がかかりすぎます。

では、運動はどういったものをすればいいか。歩くことが基本にはなるでしょう。まず、できるのなら、毎日30分、夕方に歩く。それで物足りないのであれば、ランニングをする。ランニングをするひとには引きこもりは少ない。走るといってもジムでマシーンを使うのではなく、シューズをはいて、家の周りを走ればよい。

シューズをわざわざそろえなくても、はだしで芝生の上を歩くだけでも良い。特に雨が降った翌日の芝生はとてもよい。その芝生の上をはだしで歩き、ぬれた足の裏をタオルで拭いたあとどういう状態になるか。これはとても気持ち良い。家の周りの芝生を探しておきましょう。

サイクリングもお勧めですが、ロードバイクは必要なく、クロスバイクで河川敷や線路沿いを走るのがよい。線路沿いはもともと起伏が少なくて、自転車には向いている。半年ごとにメンテナンスは必要ですが、気軽に外に出かけられます。

そしてこれから夏季に向かって、7~9月はプールです。市民プールであれば、1回2時間200円程度で入れます。そこでもいきなり泳ぐといったことはしなくても、水の中を歩くとか、プールサイドにいるだけでもよいでしょう。

球技はほどほどにして、基本動作を外でする。

授業のとり方

最後に大学での授業のとりかたです。自分で10年間大学講師をした経験からいいますと、なるべく非常勤講師の授業はとらないほうがよい。よほど気に入っている講師であり、学生アンケートで評判のいい講師であれば、話は別です。

ただし、たまたま時間が空いている。他にいい授業がない。そのような理由では受講しない方がよい。とくに、これは首都圏の私立大学についていえます。

というのは、非常勤講師というのは、授業の30分くらい前にキャンパスにきて、授業をして家に帰るだけ。それだけのことを問題なくすればいいことになってます。ほとんどの非常勤講師がいかに効率的に授業を進めて、期末に成績評価を提出するかで頭がいっぱいです。それでなくても教務課からくる事務的な手続きや単年度での契約更新といったことがあり、学生だけを向いているわけにはいきません。

ですので、なるべく研究室を持っている先生の授業をとったほうがよい。なかでも若くて赴任して3年以内くらいの先生か、50歳を過ぎて教授職になって、研究はこれからは控えていく、授業や教育に関心が向く教授の授業を受けましょう。研究熱心な先生は授業の手を抜くことが多い。学生と真摯に向き合う先生の方がよい。そこでも社会的なやりとりが機能するかどうかが問われます。

以上、20代の大学生に向けて書きました。医者による治療を受けていない。NPOの支援を受けていない。そういった前提で書きました。

要点としては、スマホに代表されるコンピューターの使用を控える。スマホは週末のみ。コンピューターは、1時間程度。勝負性の高い球技、バレーボール、テニス、ゴルフにのめりこまない。やるのであれば、正しいところでプレイする。そして大学では、非常勤講師の授業はよほどのことがないかぎりは受講しない。ホームページで研究室を持っている教授を調べましょう。

なるべくクラスメートといっしょにいることです。

40年前と違い、今頃の日差しは心地よい。特に桜が咲いている道なりを歩いているときは、またなにか新しいことをしたくなります。40年間でこれほど危険が蔓延するとは考えられなかった。東京は社会的安全装置が働かない場所や仕掛けでありふれている。そういうところは避けましょう。

穏やかで心地よい日差しの中で大学生活を送れますように。