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スキル獲得のための社外学習

企業勤務をしていた頃はよく社内研修を受けていた。最初にはいった外資系投資銀行ですら新卒のわたしに社外学習の機会をくれた。外資系企業というのはそれまで社員に研修を授けることはなかった。むやみに研修を与えればそれを機に転職をされてしまうからだった。通常はないものの研修がないと仕事をこなせない事情もあった。

1993年ビジネススクール卒業後のコカ・コーラ渋谷オフィス。そこでさえ研修の機会があった。しばらく仕事(オペレーション)よりも社内研修漬けであったこともある。働くところを変えても45歳くらいまで続いた。仕事の時間を使ってスキル獲得ができるというのはありがたかった。ただ社内研修のほとんどは実践的でない。それほど役に立たないことが多い。

さていまはどうなっているんだろう。

経済産業省が発表した未来人材によると日本企業はOJT以外の人材投資を控えているという。それなのに日本国籍のひとたちは社外学習をしないともいう。

経済産業省 未来人材 令和4年5月 40ページ

左側の図はGDP比で2010~2014年までにわずか0.1%。14年までのGDP(実質、インフレ調整後)は平均520兆円であってその値の0.1%ということは年間たったの5200億円ということになる。GDPはそれほど伸びていない。にもかかわらず投資を減らしている。それが実情だ。転職されるのを嫌って企業が出費しないのだろうか。

こういった人材投資を控えている状況下では社外に学習機会を求めるのが普通であろう。他の国では自己啓発セミナーを探しスキル獲得を狙う人が多い。ところがアジア諸国と比較して日本では社外学習でさえしていない。数としては半分近くになる。つまり2人に1人は学びの機会を社外に求めていない。

そんなことが気になりあるオンラインイベントで質問をしてみた。社外学習を通して自己啓発をしていますか。学習・啓発でスキルを獲得していますか。その質問ができたのは5人のグループで機会があったからだ。そこではほとんどの人はしていないという回答であった。

この文章では新卒採用3年以内のひとたちに向けて書いてみます。このスキル獲得をしない状態が続くとどうなってしまうか。

要約を書いておきます。ひとつはスキルにはハードスキル(知識系)とソフト(人間系)スキルがあってソフトスキルは人との交流でしか獲得できない。次に交流にはプレゼンやファシリテーション、ディスカッションといった人とのやりとりによって練習・習得できる技術があること。オンラインイベントには参加しただけではなにも得るものがない。口を開けているだけでなにも積極的に行動を起こさない。いわゆるタダ乗りといった見学者・傍観者になると百害あって一利なしになる。むしろ逆効果になる。

まずハードスキル。これは客観的に判断が概ねできるようなものを獲得するということ。情報、知識、あるいは知恵といったものでこれらは書籍で獲得できる。セミナーでは一方的な講義やオンラインでの説明を通して理解できる。よく教科書を用う。ビジネスであれば会計・ファイナンス。技術面ではコンピュータ言語(Python)も学べる。ひとりでも学習できる可能性が大いにある。

ところがビジネスで必要なのはソフトスキル。つまり人との関係の上で成り立っているものは本からは学べない。それが次の点でいろいろな人との交流を通して得る。意見を聞きながら学ぶ。自分の意見をいうことで相手の反応を知るというもの。これは経験してみないとわからない。その方法としてプレゼンと質疑。ファシリテーションといった意見を出すのを促す行為。ブレーンストーミングという手法もある。それは反対意見を言わないこと前提とするアイデアだし。トピックが決めてそれに対して参加者と対峙をしないディスカッションという形式もある。

それらは人相手にしないと獲得できない。それをしないとなると人との交流が苦手になっていく。快適な環境だけを求めるようになる。あえて異なる意見を主張する人を避ける。不快なことに関わらないようになり耐性が失われてしまう。

オンラインイベントでも気を付けないといけないことがある。いつまで経っても自分の意見をいわない。トピックの提示をしないという人になってしまう。これはいわゆるタダ乗り。参加しても1時間口を開けて待っているだけ。なにか食べ物を無料で分けてほしいというようなもの。そんな都合のいいフリーランチ(ただ飯)はない。静かにしていればどこかに連れて行ってもらえるだろう。そういったフリーライダー(無賃乗車)になります。これは百害あって一利なしです。

そういったひとを企業はもう求めていない。オンラインのミーティングでもだまっているだけでなにも貢献しない。なんらかの貢献の仕方があるにもかかわらず。それどころかオフィスにきて動画をみて夕方に帰っていく。そういったひとに給料を払う余裕などない。

10年くらい前は結構社内研修もあった。研修が終わってから仕事をした。ただしそういう会社生活も45歳くらいになれば機会が少なくなる。年収もそれなりにもらっているわけですから。しかしどうも若い人たちに向けても研修費を減らしているのではないか。そうなると将来に対してやや不安になる。自分からやるしかない。それすらしない人が増えている。

むやみに研修費を増額したりだれが来るかもわからないオープンなオンラインイベントにいくのは注意した方がいい。しかしながらなんらかの方法で人といっしょに何かを成すようなことをしないとソフトスキルは身につかない。それどころかむしろ傍観者となって悪い癖がついてしまう危険がある。

さて読者の皆さんはどうでしょうか。どのようにこの2年のコロナ過を過ごしたでしょうか。