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何清漣《中国現代化的陷阱》2002/2006

 何清漣(1956-)の《中国現代化的陷阱》は1997年香港で《中國的陷阱》の書名で出版されたのが最初でその後、各国で翻訳が出されるたびに著者は修正を加えてきたようだ(写真は東京大学安田講堂)。日本語訳(『中国現代化の落とし穴』草思社2002年)は2002年に英語版を出すにあたり改定版《中国現代化的陷阱》(中国語版)が用意され、それを訳出したもの。今回ここでPDFを紹介するのは2006年のドイツ語版をベースに著者がさらに修訂したもの。公開fileの日付けは2013年となっている。もっとも2002年以降の資料への言及はほとんどないので、ここでは年号表示を2002/2006とした。2002年の日本語訳と内容に少し異同があるが、おおむね同一と思われる。

何清漣《中国現代化的陷阱》2002/2006 

 改革開放をマルクスが資本論で描いた資本の原始的蓄積(primitive accumulation of capital)になぞらえたのは、この何清漣が最初かもしれない。株式会社制度の導入が、経営者の規律付けに役立つという想定とは裏腹に、国有財産の安売り、私物化につながったこと。開発区ブームは中国の囲い込み運動(enclosure)にほかならなかったことの指摘も鋭い。中国の腐敗が、中国がなお人治社会、法ではなく権力にあるものが支配する社会だということと、利益交換で人と人が結びつく中国社会の構造とに根差していることも語られている。本書に影響を受けたことを人々は語らないが、実は本書の影響は、かなり大きい。現代中国をとらえるエポックメイキングな本として若い人たちに一読を勧めたい。

#何清漣    #資本の原始的蓄積 #法の支配 #囲い込み運動 #株式会社
#東京大学本郷


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