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債券市場 bond market

 債券について語るべきことは何だろうか。債券は一種の借用証で、借入には金利が支払われる。この金利の支払いの仕方は、まず固定利付といって、当初決めた金利の大きさを満期まで固定したままのものと、変動利付といって、満期までの間に見直すものとがある。そもそも金利は次のような要因で上下する。
 1)   全体の資金需給。貯蓄と投資との需給によって上下する。
 1)インフレ率。インフレ率が高いと高くなる。
 1)   借り手のリスク。借り手の債務不履行リスクあるいはデフォルトリスクが高くなると高くなる。
 1)   期間。借入期間が長くなると、通常は高くなる(このことを順イールドという。期間が短いほど金利が高い状態は逆イールドと呼ばれる)。
 固定利付債券の相場は、次のように動くと言われる。
 1)インフレ率が上がるとき、債券相場は下がる。
 1)    借り手のリスクがあがるとき、債券相場は下がる。
 1)    満期が近くなると償還価格に収れんする。
 1)    市場利子率と債券相場は逆にinverse動く。

 つぎに金利の支払いの方法には、クーポンと言って定期的に利子(利息)を支払うものと、発行時の価格を償還時の価格より低くして、両者の差額である償還差益の形で利子を支払うものの区別がある。一般に満期までの期間が1年未満の短い債券は償還差益方式がとられる。このような債券は割引債とよばれることがある。クーポン支払いのものは利付債と呼ぶことがある。
 満期までの期間の長さで、名称を区別することがあり、例えば米国国債は、期間1年未満のものをTreasury Bills, 期間5年以上のものをTreasury Bonds、両者の中間をTreasury Notesと呼んでいる。
 大企業の社債Corporate bondsはdebenturesとよばれる無担保債unsecured bondsが中心である。そこで債券につける財務上の約束が重要になってくる。この約束のことを、covenants;trust indentures;indenturte provisionsなどと呼ぶ。これにはたとえば、借入についての行動制限、配当支払いについての行動制限、担保資産の売却制限などがある。
 社債には、あえて債務としての支払い順位を落として利回りを高く設定する劣後債subordinated debenture; 株式に転換される転換社債convertible bondsなどもある(近年、ベイルイン債といって、ベイルイン条項:一定の条件のもとに債務ではなく資本としてのリスクが生まれる条項が付いた債券も頻繁に発行されている。これはもちろん金利が高い設計である。)。
 投資家は社債購入にあたって、格付け機関が出す格付けratingで、投資適格債券であるかを問題にしてきたが、高い利回りを狙って敢えて投資適格以下(MoodysでBBB以下、S&PでBaa以下)のJunk bondsを選択する投資家もいる。

    以下はCorporate Finance InstituteのDebt Financingの説明。とても良くできているのでぜひ見て欲しい。DebtはEquityよりコストが安くEquityの希薄化を避けることが出来るという出だしの説明にまず魅了された。続くdebt capacityの説明も、cashflowの安定性、財務比率、cash flow対比比率を、一挙に説明するもので、あざやか。劣後債subordinated debtと優先債senoir debtと併せて説明するのも斬新だった。subordinated debtは市場化になじまないという説明をそこで加えているのも大変よい。⇒ 債務問題については企業金融のファイル参照。


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