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中国の歴史 2007/2015

 岸本美緒『中国の歴史』2007/2015。あとがきによれば2007年に『中国社会の歴史的展開』と題して放送大学の教材として出版したものの文庫化である。ちくま学芸文庫として2015年の出版である(写真は憲政記念館前庭から桜田門、警視庁方面を望んだ景色。2020年1月6日。)。つまり教科書であり、入門書である。そこに多くのことを期待するのは無理なお願いであろう。限られた字数で何を削り何を入れるか。どこまで記述するか。この本は入手してから、清末のところから読み、今回改めて冒頭から通読した。

 本書が、中国とは何かという、問題から入っているのは、確かに中国とは何かというところから、私たちは中国に接近をはじめるので、なるほどと思った。また華夷思想を説明して、中国を高しとするだけでなく、中国文化を取り入れる者ならば誰でも「中国」の中に包含しようとする包含性もその特色との指摘もよく分かる。そこから中国史では、諸民族を融合するようなあり方と、その逆の排他的な在り方とが、交互に繰り返されるという指摘もでてくる。

 もう一つは国の興亡を考えるうえで、貨幣制度について述べていることはおもしろい。元の時代、大量の紙幣が登場して銅銭の不足を補ったこと。明朝はしかし紙幣をうまく流通させられず、銅銭の不足が商業を阻害したこと。逆に16世紀に世界的に銀生産が増え銀貨が流入したことで、中国の経済が盛んになったこと。背景には中国は国内での銀生産量が少ないのに、銀が通貨として大きな役割をしていたことがある。そして19世紀にはアヘンの対価としての銀の流出が、経済を停滞させたとしている。

 本書は中国史の講義の先例の一つとして参考になる。

#中国 #銀貨 #中華思想

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