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朱鎔基 株券工作座談会講話 1992/08

在部分省市股票市場試點工作座談會上的講話(1992年8月13日)。載《朱鎔基講話實錄 第一卷》人民出版社2011年,pp.204-213 朱鎔基が証券や金融について、勉強したことが伺われる。注目されるのは、日本の間接金融依存型発展プロセスを学んだことをうかがえる一節である。経済発展における、金融の在り方について、国家の指導者にこのように知識として伝わったことが明らかであるのは、大変めずらしいことではないか(写真は六義園にてヤマアジサイの群生。)。

p.204 鄧小平同志が南方を視察し重要談話を発表されたあと、全国改革開放事業には旺盛な(蓬勃)発展の情勢(勢頭)が現れた。鄧小平同志は指摘している。「証券、株式市場、これらの者が究極的に(究竟)  良いモノかどうか、危険はないのか、資本主義だけのものかどうかどうか、社会主義は使えないのか?(こうした疑問の答えを 訳者)見ることを許そう、しかし確固として(堅決地)試そう」。鄧小平同志のこの講話は証券、株式市場の姓は資本主義か社会主義か問題を解決し、人々の思想の中の疑い戸惑い(疑慮)を消し去り、我々は大胆に探索を進め試験できるようになった。
 株式制と株券市場は世界ではすでに数百年の歴史がある。最初は経済規模を拡大し投資リスクを分散するために発展してきたものである。それは経済の発展に一定の積極的作用を発揮した。第一に経済発展のために低コスト資金を集め、投資リスクを低下させ、経済成長を加速した。第二に投資者の監督と市場の圧力を通じて、企業をして経営管理の改善を促した。第三に市場の需要に照らして役立つように、資源配置を改善し(優化)、産業構造を調整した。
 しかし株式制と株券市場の積極作用は、ただ一定の条件のもとでのみ発揮することができる。市場発展の一般規律から見て、資本市場はいつも商品市場(
p.205  消費品市場と投資品市場を包括する)にあって一定程度まで発展したあとに、開始発育が可能になるものである。現在、わが国商品市場はなお不健全で、なお相当部分の商品価格は統制と歪曲を受けており、企業の利益はとても大きな程度で国家政策の影響を受けている。この種の企業経営の外部環境がとても不確定な状況下、株式制と株券市場がとても早い発展を心から期待すること(指望)はできない。株式制は政治と企業の分離を実現するのに好都合(有利)であるが、しかし別の一面では株式制それ自身は経営者の自己抑制メカニズム(約束機械制)問題を解決するとは限らない。この問題を解決するためには、市場メカニズムと経理人才競争メカニズムの助けを借りねばならず、各種法律法規と各種仲介機構とを制定し完備しなければならない。当然これは一朝一夕でできることではない。経済体制の改革は膨大で複雑な体系的工程であり、どの一つの改革も孤立したものでありえず(不能孤軍深入),株式制は商品経済の発展が比較高級な段階に発展したときに生み出され発展を始める企業組織形式であり、その他の方面改革の進展や先立つ成功から切り離されることは不可能である。
 株券市場には積極面もあるが、消極面もある。もしも法律化や規範化の軌道から切り離されると、過度の投機が現れるかもしれず、公衆の利害が損なわれ、貨幣幻覚が生み出され、泡沫経済が生み出され、経済波動が引き起こされ、社会問題を誘発するかもしれない。
 今回深圳発行の股票認購証に問題が生じた。香港の新聞は、その原因は詰めたところ、成熟していない市場経済がもたらしたものだとしている。この種の見方は我々の注意を引き継がないことはできない。
 証券に対して、株式市場の試験について、鄧小平同志は十分慎重であり、彼は次のように指摘した。「(試してみて)良ければ、二年やって良ければ。続けよう(放開)。良くなければ、(誤りを)正すまでだ。停止(関)すればいい。停止、あるいは急いで停止、あるいはゆっくり停止。何を恐れるのだ。このような態度を堅持し
p.206  焦らなけば(不要緊)、大きな誤りをさけることができる。」我々は鄧小平同志の重要指示の全面理解が必要である。ただ我々が実際に即してあろうとし、鄧小平同志の指示に沿って動こうと固く決心し、積極的に条件を創造し、改革の組み立てて進めるなら、株式制と株券市場の試点は正常とすることができ、穏当に発展できる。
    今年になってから、株式制の試点と株券発行売買(交易)工作はともにとても大きく発展した。党中央、国務院はこの改革に十分関心をもち、江沢民同志、李鵬同志は何回も討論を主宰し、かついつも明確で具体的な指示をだされた。国務院、関連部門そして各地政府は大量の工作を行った。全体から見て、一定の成績を出している。しかしまた、株券市場の勢いが激しく、地区により、様々な程度の問題が現れている。主要な表れは以下の通りである。
   第一に関する立法と専門管理機構はなお不健全であり、一部の地方は国務院の関連規定に違反している。条件を考慮することなくあるいは準備することなく、職権によらず(擅自)株券の公開発行を批准し、交易所をはじめ、一定に混乱を生み出した。国務院はすでに通報をとおして一部の省市が職権がないのに株券、債券を発行した行為を批判した。私が知るところでは、一部の省市では実際上すでに株券を発行しているが、われわれはまだ調査して明らかにできていない。
 第二に、人々には必要な金融リスク意識が欠けている。株券にたいしては、さまざまな曖昧な認識が存在しており、株券を買うとすぐに大儲けできると誤認して、目も見えないのに市場にはいっている。(その結果)わが国の株価収益率は、世界各国の平均水準よりはるかに高くなっている。一般には十倍前後、香港の最も多いものは数十倍である。我々(の数値)は現在すでに数百倍に達し、あるものは1000倍に達した。これは明らかに不正常である。もしこの種の株券熱が上がるままなら(任其升溫),(やがて)株式市場は崩壊し、震動が引き起こされる。
 第三に、非法投機者が熱の塊を利用して、我々幹部の中の一部の意思薄弱なものと結びつくまでして、株をプレゼントしたり安く譲ったりする(搞人情股,關係股)。一部の機構は、一部の金融機構を含め、
p.207    多くの会社(公司)が規定に反して市場に入って、不法分子と連携して偽計(作弊)するまでして、市場を操縦している。このような醜悪な現象は大衆の不満を引き起こすだけでなく、海外にも良くない影響を生み出す。外国紙は報道している。中国民間旅行客はカネ持ちだ(充斥)。なぜ大衆の手にあんなに多くのカネがあるの?同志諸君、大衆の手にたくさんのカネがあるのではない、実際はすべて公(公家)のカネだ。銀行のカネであり、企業、公司が銀行のカネをつかって株取引(炒股)しているのだ。今年の前半、今年の前半、全国の貸付規模は計画を1倍より超過したが、その多くは株式市場に流れ込んだ。
 第四、一部の証券仲介機構の素質は高くない。一部の地方会計士事務所と資産評価機構は、基本的な業務の素質を備えておらず、審査が厳しくないだけでなく、偽証をなすに至っている。我々の政府がもしこれらの悪劣な行為を放置したまま放って置くなら、公衆の利益を保護できないだけでなく、失職、業務上重過失を犯すこと(瀆職)になる。 
   第五、株券発行市場の一般規律を把握(掌握)しないで、海外(国外)の成熟した経験から教訓を得ようとするのは十分ではない(不夠)。私は国際慣例によって試すべきだと感じる。一つは認購証を量を限定せず供給(供應)すること。二つは費用(工本費)を徴収すること。三つは身分証を検査(核對)すること。一人一部(一份)買う。私はこのやり方なら、あれほどの大混乱を引き起こさないとみる。香港のやり方は、申請表を受け取ると同時にカネも一緒に支払われる。クジが当たれば株券が渡され、クジが当たらなければカネが返される。このやり方は、ある同志によれば深圳に大量の資金流入をもたらす、しかしそれは短期的で、抽選が終われば資金はもどされるのである。自分の方法は良くないからと言って、国際的に行われているやり方まで軽々しく否定する必要はない。つまり、実践が以前のやり方でよいと証明したのでなければ、株券を軽率に(同じやり方で)公開発行はできない。再び起これば、内外の影響はいずれも良くない。
 第六、少なくない地方と企業は株券発行により、プロジェクトの資金を集め、投資規模を拡大している。このようにして、すでに十分緊張しているエネルギー、交通、原材料の需給の矛盾はさらに突出を加えた。目下、間接金融の規模はすでに偏って大きい、直接金融の成長の勢いもまたはなはだしく猛々しく、通貨膨張の危険を誘発しかねない。 
 現在出現の株券熱は国内外の関心を集めている。シンガポールにとどまらず、中国香港など国外の政界、経済学界の人士と新聞媒体はあまねく認識した。発展する国家が始める株券市場には「適切なことはゆっくり不適切に早く」だと。この方面では、インドネシア、インドなどの国家はいずれも手痛p.208  い教訓を経験している。たとえその株券市場が歴史悠久の西欧発達国家だとしても、ときに突然の株式市場の嵐による困難は被るものだ。一部の日本の専門家は、資金を集めたり企業経営を転換するメカニズムは、決して株式制だけを偏重する必要はないと考えている。日本の企業は経済高速成長の間、主として銀行が吸収した預金による間接集金(籌資)方式をとり、集金コストを低下させ、投資の失敗を減少させ、企業競争力を増強して、住民の金融資産の安全性を保障した。これは国際的に公認された成功経験である。我々はこの経験を真剣に研究し利用するべきである。
   この会議である人がある観点を示した。「なぜ株式熱は生まれたのか?これは需給の均衡が失われたからで、市場にある証券(籌碼)が十分でなかったからだ。解決の方法はもっと多く株券を発行することだ。」この観点はただ一方の方だけ見ていて、別の一面を全く考慮していない。株券市場は需給の規律の支配を受けているが、それはほかの一般の商品の需給の規律と同じではなく、大きな投機性をもっており、これには大衆心理の影響が特に大きい。このほか中国にはそれ自身特殊な状況があり、株式投資家(股民)はリスク意識が欠けていて、現実は株券は大金を稼ぐもので、当然(投資家の)要求を刺激する。この種の要求は満足しつかされないものである。
 株式制と株券市場試点工作の健康な発展を保証するためには、国務院の統一指導のもと、計画的に一歩一歩この工作を進めねばならない。目下、国務院と各関連部門の規定を今一度述べ、試点の原則を堅持し適切に調整し、一面で経験を総括し、他面で法律法規を整え(健全)必要条件を創造しなくてはならない。条件が整うのを待って少しずつ押し広げることを考慮したい。
 以下は党中央、国務院の確定した方針に基づき、幾つか個人の意見を述べるものである。

   一、株式制と株券市場の明文規定(規範)を今一歩進めよ
 まず株式制(股份制)と株券(股票)市場の法規起草工作を強化する必要がある。すでに国務院の関連部委員会はかつて前後して「株式制企業試点方法(辦法)」「株式有限会社(公司)規定意見」「有限責任会社規定意見」など十個近い株式制規定に関する意見をだしているが、
p.209  これは一つのシリーズの株式制と証券市場の法規であり、組み合わされる文件の一部に過ぎない。国家体制改革委員会が責任を負って証券法、株券発行と交易の管理規定の起草を急いでおり、全国人大に報告あるいは国務院批准後、迅速に頒布される。法規と各種の方法は初めから完全だ(儘善儘美)というのは不可能だ。実践の過程で現れた情況や問題をもとに不断に修正し、不断に完全を目指すことが必要だ。全国的法律は法規が頒布された後、各地の地方法規と矛盾するものである、全国的法律は法規を標準とするものであり、各地方(各自)が政治することで株式制と株券市場の規範標準をさげてはならない。同時に国際慣例との接続を強く求めるものである。
    つぎに株式市場仲介機構と証券交易所建設に力を入れねばならない。証券会社、会計師事務所、法律師事務所、資産信用評価機構などを含めて、株券発行と上場会社の質を保証することは、国家の利益を守るだけでなく、投資者の利益を保護している。我々株券市場の仲介機構は国際標準に習わねばならない(看齊)。財政部は国外の関連法規を参照すべきであり、会計師事務所の管理方法を休むことなく(抓緊)制定した。このことは株式制と株式市場試点工作を順調に進むことに役立つであろう。
 このほか、株式有限会社の組織と活動(動作)はルール化(規範化)が必要である。各試点地区と単位は現在すでに頒布されている法規により、株式会社(股份公司)のルール化を進め、一部のルールから外れた行為を正さねばならない。株式制企業のルール化工作を上手く行うことによってのみ、基礎が固められて、上場会社の質をすることができる。
 この会議の前に一部の地方では職権によらず(擅自)株式制企業を批准設立し、株券を発行している。(これは)真剣に前後処理を行うことが必要で、異なる状況を区別する必要があり、国務院の関連部門の規定により、ルール化を進め整理(清理)せねばならない。

    二、株券市場の管理監督工作を強化せよ
 株券市場試点の統一指導を強化するために、国務院は証券管理を行う公会議制度を設立した。(そこが)国務院を代表し証券市場の管理職権を行使する。現在の証券市場はわが国で最近数年に出現した新事物で、我々は監督管理した経験がまだなく、
p.310  他の国の成熟した、行いについての有効な管理経験を借用吸収して、わが国の実践と結合させて、わが国の国情にあった管理監督体系を建設せねばならない。
    国務院はすでに国務院証券委員会と中国証券監督管理委員会の設置を決定している。国務院証券委員会は国務院に列する(序列的)独立機構であり、株券、債券、国庫券の関連政策の統一協調の責任を負い、マクロ管理と指導監督について責任を負ってる。中国証券監督管理委員会は官に準ずるあるいは半官半民の監督管理組織で、政府部門ではなく、証券方面の知識と経験のある同志と専門家で構成され、その職能は国務院の授権により、証券市場に対し、検算(稽核)検査、管理監督を行う。この二つの機構が設立されるまでの間は、各部門はその職に応じて(職務を行い)、工作中の矛盾は国務院証券管理辦公會議が統一協調解決する。同時に株券市場の活動は、基本は法に従い進められるミクロの経済活動は、さらに多くが業機構の自律管理に委ねる必要があるが、政府部門の役割(主要)は立法と法による管理監督である。政府部門の過度な介入、直接の関与は、政府の公正を保持するに不利であり、規則を外れた立場(超脱的地位)は、あらゆるリスクをすべて政府におしつけかねない。
 試点工作の順調な進行を保証すること、株券の公開、公平、公正な発行と売買(交易)を保証し、株券試点工作の健康な発展を促進するためには、投機行為を抑制せねばならず、操縦、内外結託(勾結),インサイダー情報を利用した株式市場取引を進める不法分子に断固として打撃を与えねばならない。党政機関各級幹部と国営企業、事業単位が「機構」あるいは「基金会」の名義で株式市場に入り株券の売買を行うことを厳禁し、関係したものは規律処分せねばならない。株券発行試点の都市はブラックマーケットの取引やその他違法活動を努めて攻撃すべきである。

     三、株券発行と上場会社の質を保証せよ
 各地での進められている企業株式制と株券市場の試点において、株券の発行と上場会社の質は必ず重く注意して保証されねばならない。もし株券発行と上場会社の質が保証されないと、国家の利益が損なわれる可能性があり、投資者の合法的な権益も保護されない。(以下略) 

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