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曉蘇「傳染記」『天涯』2014年第2期

著者の晓苏 シアオ・スーは1979年に武漢にある華中師範大学中文系に入学。生年は大学のサイトでみると1962年1月10日。しかし農歴の1961年12月15日で通しているところにこの人の主張を感じる。卒業後、一貫して同大学で教鞭をとりつつ、創作もしてきた。この作品は、伝染病の深刻な話かと思ったが、そうではなく、気軽な笑いの話にしている。貨紹俊主編《2014中國短篇小説排行榜》百花洲文藝出版社2015年, pp.90-103(原載『天涯』2014年第2期)

 養豚場を営んでいる郝凤(ハオ・フォン)、邬云(ウー・ユン)夫婦。主人公は邬云だ。邬云が忙しく豚舎を掃除しているときに、飼料の販売人がやってきた。そこにさらに邬云の友達で隣に住んでいる傳彩霞(チョアン・ツアイシア)がやってくる。傳彩霞の旦那さんは広東に出稼ぎに出ている。
 傳彩霞は風邪と思われる症状がなかなか改善しない。たまたま豚の胆汁が風邪を治すのにいいと聞いて、邬云にもらいにきたのだった。話をそばで聞いていた飼料販売人が、ある種の風邪は薬が効かない。他人にうつすことですぐによくなるという。傳彩霞は半信半疑の様子(將信將疑)だった。
    数日経って邬云がお手製の餃子をもって、傳彩霞を訪ねるとどこにもいない。入り口にいたばあさんに尋ねると麻雀館に行ったという。そこで傳彩霞の家に近い麻雀館に行くと、煙草の煙の中で、麻雀もしないで傳彩霞が座っていた。
 事情を聴くと、胆汁を飲んでも薬を飲んでも良くならない。そこで誰か他人にうつそうと麻雀館に来たのだという。邬云の餃子を食べた傳彩霞は、なお他人にうつさなきゃと必死だった。
 さらに3日後、飼料販売人がピックアップトラック(皮卡)で飼料を運んできた。郝凤、邬云が飼料をトラクター(拖拉機)に積み替えようと忙しく働いているところに、傳彩霞が現れる。状態はさらにわるそうだった。そこで飼料販売人が人にうつす方法があるがと切り出したーそれをは男を探して寝ることさ、という。それを聞いた、郝凤まで旦那さんも広東にいないし、それはいい方法だとからかう始末。邬云は、こんな男どもの言うことを聞かず、早く医者にゆきなさい、と言って傳彩霞を見送った。

 ところが郝凤が風邪をひいてしまった。なんで風邪になったのと聞くと、寝ながら掛布団(被子)を外してしまった(掀了)というばかり。
 邬云はすぐに傳彩霞に会いに行った。傳彩霞はすっかりよくなっていた。で「誰にもうつさずよくなった」という。邬云は、傳彩霞と喧嘩をして家に帰ってきた。家に帰ると、今度は郝凤と大喧嘩をした。

 3日後、今度は邬云が風邪になった。それとともに郝凤は症状が収まりよくなった。邬云の状態はますますひどくなった。郝凤が医者に行くことを勧めても応じない。郝凤は、町の医者のところまで薬を取りにトラクターにのり出掛けた。郝凤を見送った直後に、飼料販売人がやってきた。邬云は風邪をうつすことができると、笑いが込み上げた。

コメント:伝染病は人にうつすと治るという言い方。これは日本でも笑い話でするが、中国でもそういう言い方をするようだ。ここには深刻な話はないので気楽に読んだ。登場人物も大きな悩みはなさそうだ。ただ、出稼ぎ、麻雀館、飼料販売人、と言った要素は、農村の風景をそれらしく演出している。ピックアップトラック(皮卡)、トラクター(拖拉機)もそうだ。中国の農村問題が描かれていない、と不満に感じる人もいるかもしれない。ただ著者の意図は、「伝染」の話を素材に軽い読み物を書くことにある。社会問題を書き込まないというスタンスは理解できる。


#中国文学 #中国短編小説 #曉蘇     #伝染

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