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朱鎔基 テレビでの講話 1989/06/08

    (朱鎔基、朱鎔基上海講話実録、人民出版社、2013年、pp.298-309
    写真は1989年6月9日夜 上海市市内における朱鎔基) 
    全ての市民、同志の皆さん。皆さんこんにちわ。
 ここ数日、私たちはみんな、上海がすでに危機的な局面に達したことを痛感しています。
 6月4日以来、上海市のすべての交通は止められ、労働者は出勤できず、生産は減少しています。物資はそれでも充分にありますが、小売りにまで運送できず、市民生活には困難が生まれています。道路を進む人は安心できません。少数の学生が車を止めようと、タイヤに穴を開けています。それを制止しようとすると、仕事をしていない人たちが、取り囲んで騒ぐ始末です。交通が途絶しているために、幾つかの病院では重病人の救命に必要な、血浆、酸素(氧气)が底をついています。幾つかの地区では、亡くなった人の死体が臭っているのに運び出せません。ゴミや糞便も運び出せません。バス、パトカー、バイクがひっくり返され燃やされたり、勤務している民警を殴る状況まであります。私は市長として、ここ数日、法を厳格に執行することができず、市民の通常(正常)の生活を守れず、残念でなりません(深感不安和内疚)。とても多くの同志が手紙や電話で、私に質問してきました。「市政府はどこに行ったんだ?」私は彼らの気持ちがよく理解できますし、ここで皆さんに対し(自己)批判します。
 昨日の夜から明け方にかけて、光新路鉄道口で上海で長い間(多少年)なかった重大な騒乱が発生しました。1万人余りの人が汽車(火车)を取り囲み、誰かが郵便車両に放火しました。近くの汽車の先頭には3000リットルの軽油が積まれていました。もしも爆発すると(軽油の着火点は250度。着火点に達すると一気に爆発的に燃焼する。ガソリンの着火点は300度だが引火しやすい。福光)その被害は近くの硫酸工場や化学工場に及び、その結果は予想したくはないが、何人死ぬかわからない。当時我々が派遣した、各クラスの責任ある幹部、公安局の副局長、500人余りの武装警官、80人あまりの鉄道警察、9両の消防車、いずれも近づくことができなかった。多くの警察(官)が乱暴され、消防車のホースの筒先(水龙头)は外されてしまった。我々は当時十分あせっていた。一度爆発すると、死傷者は多数で、上海に混乱を起こす可能性があった。この数日の事態の展開に、私の不安は燃え盛るようであり(忧心如焚)、寝ても食事しても不安がつきまとった(寝食不安)。
    6月4日から今日まで、われわれ上海の市民の5日は試されたのです。私はここでまず、多くの上海市人民に、とくに上海の労働者に感謝したい。みなさんはこのように複雑で困難な条件のもと、それぞれの立場(岗位)をしっかり守って生産を堅持された。皆さんは出勤のため、バスが通行できないとき、足を使って(歩いて行かれた)。このような状況で、市全体では60%から70%の出勤率が維持され、上海の工場は基本的には操業を停止せず、財貿系統職工、食堂(粮店)やおかずやさん(菜场)は工夫して(千方百计)市場供給を維持(保证)した。わたしたち上海の労働階級はなんと偉大なことだろう!
 私はまた公安干警と武装警察に感謝しなければならない。皆さんはこの数日立場を堅持し、殴られたり罵られたりしながらも、十分に忍耐されて、治安秩序の維持に尽力された。大局を鑑みて、私たちはみなさんにしばらくの我慢を求めざるをえない。皆さんは不当な扱いを受け、悪い人に殴られ、心の中で我慢を重ねれている(窝囊)。私の気持ちを示すことで、皆さんの気持ちを和らげることができればと思います。
 私はまた学校の指導者、党組織と多くの教師に感謝しなければならない。みなさんはとても困難な状況で、大局にかんがみて、学生に対し大量の説得工作をされ、道路の障害物を取り除く手伝いすらされた。皆さんは人の模範となることを恥じるべきではありません。ある大学では放送室が少数の学生に占拠されて、海外のデマが流されようとしました。二人の大学院生が指導していました。われわれの老教授は、彼らの指導教授で自ら身を挺して、道理をはっきりと示して(晓以大义)この二人の院生を説得し、ついに放送室は学校に返されたのです。考えるにこれは我々の中華民族の教師精神を体現したものでした。
 同志の皆さん、この重大な情勢に対して、政府はなぜ強硬な法制措置をとらないのでしょうか。われわれの手中に力がないわけではありません。現在の特徴は、一部の学生の感情がとても興奮した状態にあり(冲动)、学生はデマに扇動されてすでにかなりの程度理性を失っていることにあります。また社会的にはよどんだものが浮き上がってきて(沉渣泛起)、一緒になり、良い者(良莠)を区別しにくくしています。このような状況でもし強硬措置をとれば、良い人を誤って傷つける可能性が高い。また人々はなお(強硬措置を)了解(理解)できません。それゆえ、我々は人々を動かして、組織し、思想を統一し、認識を一致させ、すべての市民大衆の心を一つにしなければならないのです。(そうなれば)われわれの公安干警と武装警察は、彼らの任務を有効に執行することができます。
 多くの同志が我々に武装警察の動員を、はなはだしくは軍隊の動員を求めています。私は市長としてここに鄭重に声明を出します。第一に市委員会、市政府は軍隊の使用を考慮したことは一度もありません。軍事管制あるいは戒厳令の実施を考えたこともありません。第二に、その理由は、我々は99.9%の上海市民が「上海を安定させ、大局を安定させ、生産を堅持し、生活を保障する」というスローガンのもと団結することができ、党と政府の側に立っていると確信しているからです。第三に、上海は中国工業のもっとも集中した都市で、もっとも強大な労働階級の隊列を持ち、508万の職工、その中には230万の産業労働者がいます。彼らの組織が立ちあがり、我々を支持し、我々を支援するなら、われわれの公安干警と武装警察が、その全力量で上海の法制と治安の維持にあたれるからです。
 (中略)
 ここで私は社会のよどんだ部分である不法分子に警告します。あなたたちは形勢を見誤ってはなりません。天下を変えられると誤ってはなりません。1260万の上海市民はかような無法混乱を許しません。光新路鉄道口で列車を焼き、公安干警を殴り、重大な騒乱を生み出した不法分子、その中には改造が十分でなかった満期釈放分子が少なくないのですが、我々はすでに確かな証拠をつかんでおり、近い将来彼らは逮捕され、準備される公判において、法律規則に従い,法に従い、重く厳しくまた速やかに処罰されるでしょう。
 私はまた一部の学生諸君にもう一度心から忠告します。あなたたちの行動はあなたたちの願いと真逆の方向に向かうものです。あなたたちはすでに辺境に向かっています。あなたたちは社会のよどんだ者と一緒に立っていないか、警戒するべきです。あなたたちの気持ちは現在とても興奮しているので、(今は)私はあなたたちと問題を討論できませんが、将来また話しましょう。あなたたちはデマを信じすぎです。現在海外から伝わるデマが、天地街にあふれています。これは人々の思想を乱そうという心理戦です。最近北京で起きたことは歴史事実です。歴史事実は誰もかくすことはできません。事実真相は将来あきらかになります。みなさんはなぜ今、デマを信じねばならないのですか?
 (中略)
 学生諸君、私は皆さんが私が皆さんに送った对联を受け取ってくれることを希望します。上联は「上海を安定させ、大局を安定させる」。下联は「生産を堅持し、生活を保障する」というものです。横批は「上海は乱れることはない(上海不能乱)」です。私たちは法制を回復します。あなたたちは法制が必要だとは話さないのですか?法制がなければ民主がどこにありますか。どこに個人の自由がありますか?わたしのこころの言葉(肺腑之言)をちょっと聞いて下さることを希望します。
    (以下略)

#朱鎔基 #六四事件 #上海

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