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薛暮橋 社会主義経済の在り方(中国社会主義経済問題研究より) 1979/1983

薛暮橋「中国社会主義問題研究」(1979年 人民出版社 なお1980年外文出版社から邦訳 手元には1983年版 人民出版社がある。こちらを原書として引用する)第3章。邦訳pp.79-106 原書pp.51-67
(薛暮橋は社会主義的共有制には全人民所有制の国有経済と集団所有制の協同組合経済があるという。最初は工業については全人民所有制への発展を描いている。つぎに企業内の管理を論じたところでは、企業に経営自主権を与えるべきことを明確に主張している。その後、集団所有経済を議論するところで、生産の自主性を個々の経済主体に与えるべきことを主張。1983年版で加えた本章末尾では、全民所有制、集団所有制を補充するものとして個人経済を発展させるべき3番手に加えている。個人経済の活力や活発さを評価していると考えられる。)

集団所有制は未成熟な社会主義的所有という前提があるので 邦訳p.81

社会の発展方向としては二種類の社会主義的共有制の併存から単一の全人民所有制への発展が想定されている 邦訳p.81 83

この点で工業については、はっきりその方向が示唆されているが、農業については生産力の発展水準が違うので、集団所有制の方が生産の運営と労働の管理に有利だとされる 邦訳p.83

つぎに企業の管理の問題に移り、まず全人民所有制経済について、国家がすべてを直接管理することは不可能なので、国営企業の労働者(職員と工員)が生産手段と生産物を共同で掌握する(翻訳は所有するとなっている p.86) 職員と工員が経営参加しなければ、企業そして国家と共同の利害関係にあることを体得することはむつかしい。邦訳pp.86-87

中国が1950年代にソ連から学んだ国民経済管理制度の下では、企業の指導者は国家に対してのみ責任を負うが、中国では勤労者の利益も保護しなければいけないと言っている。邦訳pp.87-89

(他方でソ連の制度に学んだ結果として)、企業に(経営)自主権がなく企業は経済活動について国家計画に従うことになっている。人員、物資、資金管理そして調達、生産、販売いずれの自主権もない これでは技術革新の推進、経営管理の改善、労働効果の向上に必要な措置を取り、国家と人民に大きな貢献をすることはむつかしい・・・こうした管理制度が続くなら、社会主義の優位性が発揮されるどころか、経済発展は資本主義にも劣ることになる。邦訳pp.89-90

(中には社会主義制度の優位性を疑う人もいるがそれは間違いで、)全人民所有経済は全国人民の共通の利益を代表でき、社会化の程度のわりに高い現代工業の発展の必要にかなっており・・・管理さえうまくいけば、国家と企業と勤労人民の利益を結び付け、彼らの積極性と創意性を存分に発揮することができる。邦訳pp.91-92

(指令的な計画をやめてそれぞれの集団所有制経済の自発性にゆだねることを主張した以下の文章は自由経済を唱道しているようにさえ見える。この箇所は農業の集団所有制経済に関する部分ではあるが、広く経済主体に経営自主権の付与を求めているようにも読める)
邦訳p.97 原則として、国家はかれらの生産にたいし、指導的な計画を与えることはできるが、指令的な計画をあたえることはできない。個々の集団所有制経済は、国家の定めた重要農産物の供出義務を達成する限り、国家の計画指標に照らし、地元の実情に応じて、自分で生産を按配する権利をもつべきである。国家は集団所有制経済の所有権と経営自主権を尊重しなければならない。個々の集団所有制経済は国家にたいする供出義務を達成する限り,何を生産するか、いかに生産するかは、その集団経済が自分で決定すべきである。 

邦訳pp.99-106 原文pp.63-67 (このあと農業について自留地と副業の問題を改めて許すべきこととして述べている。続けて都市の手工業やサービス業においても、集団所有制経済に優位性があることを指摘している。なお邦訳でみると1979年版ではこのあと社隊企業について詳しい記述があった。1983年版ではそこがかなり短くなり、全民所有制企業、集団所有企業に続けて個人企業をあげて、都市でも農村でも法律が許す範囲で、個人企業の発展を求める記述が、最後のパラグラフに入った。個人企業はその経営の積極性が評価されている。)

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