見出し画像

ソフトバンクGと株価低迷 2019/10

 ソフトバンクグループ=SBG は、融資 株式・社債発行 M&A助言など多額の手数料を金融機関に払う存在。そのため金融機関の利害と一体化。また   2017年からはビジョンファンドを始めたことで投資主体として一段と巨大化している。業界の利益と一体であるためか、ソフトバンクへの正面きった批判はなかなか見られない。ところで、ソフトバンクの問題は、保有株の株価を信用力の基礎としているのにその株価が現在低迷している問題に帰着する。
 アリババ株の低迷問題は米中貿易摩擦に絡んでいるがそれ以外の株価の低迷はIPOの問題が絡んでいる。IPO(株式の新規公開)に関して、IPOを請け負いたい金融機関は、引き受け手数料をねらって、創業者への個人融資に応じたり、高い想定時価総額を示したりしがち。⇒結果として、こうした意図的に作られた高い株価が、上場後の株価低迷などを招いている。業界とソフトバンクが利害を一致させるために、それを正しくけん制する機能が働かない。赤字企業の高値上場のように、バブルを業界として煽る結果、株価の低迷が繰り返されているのではないか。
 保有株の評価に対する負債比率を、財務安全度の指標としているソフトバンクでは、株価の低迷が、グループの行動に大きく影響する。

 ビジョンファンドには2017年スタートの1号ファンドが最初。これはサウジ、UAEの政府系ファンド アップルなど約80社が出資。約10兆円と言われたもの。しかし2年で投資枠使い切り、利回り45%を実現したとされる。こうしたファンドの利回りは10%から20%という世界で成功例とされる。ただし利益の多くは含み益とされる。そこで2号ファンドが2019年5月発表されている。出資者はアップル、ホンハイ、マイクロソフトなど 1080億ドル(約12兆円) 1号に続き人工知能関連へ投資する。

 ソフトバンクは巨額マネー(1号2号併せて22兆円規模)で成長企業の総取り目指しているが、これには巨大マネーを使って採算度外視の拡大路線との批判がある。その影響力の大きさから、経済全体にとって、ソフトバンクの行為はマイナスとの指摘が出始めている。SBGは、動画アプリの北京字節跳動科技 配車サービスの滴滴出行 シェアオフィスのウイーカンパニー 配車サービスのグラブ、料理宅配のドアダッシュなどユニコーンの大手10社中5社に投資している。

 他方で、以下のようにSBGが投資した企業の株価低迷が生じると、それがソフトバンクの経営に及ぼす影響もそのつど注目されている。

 アリババの株価低迷。ソフトバンクは2000年に20億投資。中国ネット通販最大手に成長した。この株からはソフトバンクは2019年4月から6月約4600億円売却益を得ている。3年前2016年にも売却益を得て⇒240億ポンド3兆3000億円で2016年7月発表された、英半導体大手アームの買収資金の一部にしたことがある。SBGの約27兆円の保有株のうち4割強はアリババについての保有株の評価は13兆円ほどとされる:2019年9月末。9月27日 トランプ政権が米国から中国への証券投資制限を検討との報道を受けてアリババの株価急落、ソフトバンクの経営への影響が議論されている。
 ソフトバンクの株価の低迷している問題。2018年12月19日公開 公開価格1500円に対し上場初日終値1282円。原因はあまりにも高い公開株価。PER約17倍の割高設定は当初から批判のまとだった。2019年10月7日終値1496円まで回復している。主幹事には内外の大手金融機関。9割を国内で主として個人に売る想定。公開株価の高値設定は発行企業(そして手数料をとる証券会社)に利益ではあっても、株を取得する個人投資家の利害と相反している。間に入る証券会社は利益相反状態にあるが、こうした証券会社のビジネスが改まらないことには長年批判がある。また親子上場:SBGの6割支配を認めたままソフトバンクの上場を認めた取引所(東証1部 2019年3月末のSBG出資比率は63.14%)は、投資家によるガバナンスという原則を自ら無視した(親子とも上場会社を認めると、親会社に支配されている子会社を市場が監視する機能は弱まっているとしていた。市場の株主は半数以下の株しか支配していない、というのがその理由である。)。この親子上場を認めた日本証券取引所のご都合主義、でたらめさにもかねて批判がある(なぜなら取引所は親子上場の解消を指導していたからである。それにも関わらず、日本郵政やソフトバンクのケースでは自ら親子上場を認めた。)。
 なお上場についてのソフトバンク側のねらいはコングロマリットディスカウントの解消にあるとされる。つまり上場により経営を明確に分けて、ソフトバンクの価値の顕在化。しかしこの理屈が通るなら、親子上場はむしろ肯定されるべき経済行為の一つになる。取引所は、市場を通じたガバナンスなどそもそも存在しないことを主張したのは間違いだった、親子上場もその解消も企業は好き勝手に決定してよい、取引所は企業戦略に使われる道具に過ぎず、市場のルールは企業がきめればよいと正直に告白するべきだろう。
 なおソフトバンクは2019年6月ヤフー(東証1部 19年3月末の出資比率はSBG35.6% ソフトバンク11.9%)を子会社化。さらにヤフーはその後、出資会社のアスクル(東証1部 出資比率はヤフー45.13% プラス11.63%)の個人向けネット通販ロハコの譲渡をめぐり岩田社長と対立すると、岩田社長を退任に追い込んでいる(2019年8月)。さらにヤフーはその翌月2019年9月には衣料通販サイト首位のZOZO(東証1部 前沢氏持ち分は35.94%)の買収:買収額は最大で4007億円と、創業者の前沢友作社長の退任を発表している。
 2013年に216億ドルで買収したスプリント(NYSEに上場 SBGの出資比率は8割を超えとされる)は業績株価とも低迷。起死回生策のTモバイル買収問題も膠着している。2019年7月Tモバイルとの合併司法省が承認されたが、米連邦通信委員会FCCは正式承認に動かず、 地方自治体の合併差し止め訴訟問題も残り、合併はまだ見通しが立たない。2019年中の合併めざす。市場(合併すれば契約件数は首位ベライゾン.1.56億件 2位AT&T1.55億件に迫る1.34億件)は飽和で成長戦略は不透明。ソフトバンクは出資比率を84%から27%に下げ子会社から持ち分法適用会社にして連結から切り離す方針⇒しかし合併手続き後れ5G競争にも支障。スプリントの株価も低迷、スプリント株売却にも支障⇒スプリントについての先行きはなお暗雲がたれこめている。
 ライドシェア最大手のウーバーの株価低迷、投資評価額が大きく目減りした問題。同社は創業者の法令無視の姿勢に評判が悪かった。17年不祥事で混乱して株価が安値のときにビジョンファンドが出資した。77億ドル出資。18年12月期営業赤字30億ドル 2019年4-6月期も最終赤字。2019年5月10日上場したが初日公開価格の8%安で終値。赤字での上場に市場は拒否反応で答えた。2019年9月中旬で株価は公開価格を2-3割下回っている。上場前1200億ドルとされた推計時価総額に対し9月末の時価総額は537億ドルまで低下。また社会的には、ネットを通じて働くギグワーカー:ネットで単発の仕事を請け負う人を保護する仕組みの不十分さが社会問題になりつつある。最低賃金、社会保障が欠落。従業員化させる州法の動き活発化しており、ライドシェアには逆風が吹いている。
 シェアオフィスのウイーワークの評価額激減、そのために上場延期され投資額の回収が困難になっている問題。SBGとビジョンファンド併せて100億ドル超投資している。2019年1月出資時点の評価額470億ドルが、主幹事見積りで200億ドル程度に減少(9月上旬)。1ー6月期最終損益依然赤字。売上は急拡大しかし赤字のまま上場を予定した。時価総額見積り150億ドル程度にさらに縮小(9月13日報道)。ビジネスモデルの持続性(オフィス賃貸業なのにハイテク企業を装った)、現状は赤字企業であることや企業統治(創業者に特殊な種類株 通常は10倍程度なのに20倍の設定にしたこと)に疑問の声が出て、9月16日事実上上場延期。さらに9月24日には創業者アダム・ニューマン氏の辞任が発表された。トップを辞任させたことでソフトバンクと起業家との相互信頼に傷がつくとの指摘も出ている。
 これら一連の事態にソフトバンクの目利き力にも疑問の声が出ている。

#ソフトバンク #ビジョンファンド #IPO #ユニコーン #親子上場

main page: https://note.mu/hiroshifukumitsu  マガジン数は20。「マガジン」に入り「もっと見る」をクリック。mail : fukumitu アットマークseijo.ac.jp