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朱鎔基 金融工作指導監督強化 1999/01

中央が行った省部クラスの主要幹部の金融研究グループに対する講話。加强對金融工作的領導與監督(1999年1月8日)載《朱鎔基講話錄 第三卷》人民出版社2011年pp.204-215, esp.204-209 朱鎔基の言葉は、多くの問題を指摘しながら、しかし指導者としての自信に満ち堂々としていることが大変印象的である(写真は六義園にて。2020年6月8日)。

 p.204      一、我が国の現在の金融形勢の基本情況
    我が国金融の状況は、二つの言い方にまとめることができる。「成績はとてもよく、問題は少ない」「リスクは十分予測されるが、自信(信心)は決して動揺しない」。
 少し前に開かれた中央経済工作会議は、我が国の昨年の経済、金融の形勢に対し全面的な推計と分析を行い、容易に得られない(來之不易)成績は十分評価(肯定)された。特にアジア金融危機の継続と蔓延で世界の金融市場が激しく動揺するなか、我が国の金融の運行は平穏で、泰然(巍然)として動かなかったこと。(また)金融改革の足を上げての歩み(邁出)で大事なのは歩幅(步伐)である。金融の整頓と監督管理の程度がさらに深まり、金融は経済発展を支持し、社会の安定を保持するうえで、重要な作用を発揮している。金融機構で少なくないいくばくかの問題が表面化したとしても、しかし大ごとは何も生じていない。次のように言える。我が国の金融の全体の形勢は基本良いと。
 我々は金融工作の成績をすでに十分肯定している。また問題がかなり大きいことをはっきりと(清醒地)見抜いている。金融領域におけるリスクはわが国が当面する経済の進展(運行)における重大な隠れた疾患であり、金融リスクはすでに一触即発の(危険な)状態にある。金融リスクの一つの重要な表現は、国有商業銀行の不良貸付比率の不断の上昇であり、(その)数字は人を驚かせる。不良貸付とは何か。現在わが国の計算方法と国際的に通用する標準(的計算方法 訳者挿入)との間には大きな食い違い(出入)がある。我が国の不良貸付は、逾期貸款,呆滯貸款そして呆賬貸款を含んでいる。(これは)主要には貸款期限による区分で、逾期貸款は
p.205   貸付契約の満期になっても未償還の貸付、呆滯貸款は逾期満1年から1年以上未償還の貸付(去年基準が改訂されるまでは逾期満2年から2年以上未償還の貸付)、呆賬貸款は損失(となった 訳者挿入)貸付である。国際的に通常(の不良貸付計算方法)は、借入人の総合償還能力から不良貸付を区分し、一般には五段階(五級)に分ける。国際上の標準計算によれば、我が国銀行の不良貸付は現在の数字よりも多くなければならない。不良貸付の比率が高くなれば、未収利息も大量に増加、銀行収益リスクは強まる、経営面は重大困難に直面する。一部の政策性銀行と都市(城市)の商業銀行の不良債権比率はなおとても高い。またいずれも不断に上昇趨勢にある。相当に多くの信託投資公司など非銀行金融機構は資本が負債をカバーできなければ(資不抵債),破産に瀕することになる。多くの都市農村(城郷)信用社など中小金融機構は支払いに危機が現れ、一斉に(預金を 訳者挿入)引き出す波が時々発生する。株券先物市場は法や規則の違反が重大とされ、多くの証券機構は虚偽情報をもてあそんでおり、顧客の保証金を流用している(挪用)。保険業のリスクも軽視(忽視)できない。金融領域の大きな重要案件は不断に増加している。現在各地の集団騒擾(群體鬧事)事件で最も多いのは、金融リスク事件である。我が国の目前の金融リスクは局部的であるにもかかわらず、あるいはシステム全体的(全局性的)ではないが、問題の多さ
p.206  は確かに内心驚かせるもの(觸目驚心)で、我々に高度の警戒をひきおこさせる。
    ある同志が訊ねる。金融領域問題がかくもひどい(嚴重)のに、なぜもっと早く措置をとらなかったのかと。実際は1993年から現在まで、中央は一貫してこの問題を重視してきた。併せて絶えず一連の措置をとってきた。できる限り金融リスクを防ぎ除き、金融安全を維持保護するため努力してきた。1993年6月には、ある経済領域の過熱が過熱し、金融管理の統制が失われ(失控)、秩序がひどく混乱した問題、中央はすぐに果断に改革を深化させ、マクロ調整の強化措置をとった。《中共中央、国務院の当面の経済情況とマクロ調整に強化についての意見》のなかで十六条の政策措置が提起されており、そのうち十二条は直接あるいは間接に金融問題解決に関係している。当時我々は《約法三章》(ここでは1993年7月7日の金融工作会議で提起された約法三章のこと。なお共に守るべき約束を広く約法三章ということもある 訳者挿入)を提起し、金融秩序を厳格に整頓し(嚴厲整飭)、多くの地方で巻き起こっていた不動産ブーム、開発区ブーム、株券売買ブームという株の嵐を迅速に抑え込んだ(刹住了)。1994年、1995年中央はさらに多くの金融改革措置をとり、一連の重要な金融法律、法規を公布(頒發)し適切に次第に引き締まる財政貨幣政策を実行し、利率テコ(杠桿)などの手段を用いてマクロ調整を進め、深刻な(厳重的)通貨膨張を有効に抑えた。アジア金融危機発生の1年前早くも、中央は明確に提起した。メキシコなど一部の国家の金融危機の教訓を真剣に吸収して、我が国金リスクの防止と除去を重視せねばならないと。1996年8月、江沢民同志は中央財経指導小組会議を主催し、とくに国務院の関連部門から金融リスクの防止と除去に関する工作の報告を聴取し、併せて重要な指示を行った。1997年2月、中央は人々を組織する決定をして、深く研究させ、文件を起草し、休むことなく全国金融工作会議の招集、金融リスクの全面的な防止除去工作にあたらしめた。十分に準備した基礎上で党中央,国務院は1997年11月に全国金融工作会議を招集した。会議の後、発表された「中共中央、国務院が金融改革を深化させ、金融秩序を整頓し、金融リスクを防止することに関する通知」は、金融領域問題の主要任務、基本原則、と政策を明確に提起している。(その後)1年余りが経過し、金融改革、整頓の深さはさらに一歩前進しており、
p.207   金融リスクを防止し除去する工作は急速な歩みで進展している。一部の問題が深刻な金融機構は法により処理され、大量の金融の大きな重要な案件が処理され、金融犯罪分子は厳しく処罰されている(嚴厲懲治)。この数年間、金融システム処理されたものは4万人以上、その中で公職を解除されたものは1.5万人、71人の中央局クラスの幹部が免職(被撒職)されている。これをまとめるに、金融領域問題解決のため、我々は固く緩むことなく(堅持不懈地)大量の困難で大変細かな工作を行った。それゆえに我が国はアジアの幾つか(の国)で発生した金融危機の運命を免れることができたのである。もしもこうしていなければ、金融システムだけでなく、全経済社会の形勢で、今日のように良い局面は不可能だ。当然、金融領域の問題は十分複雑で、解決には過程が必要で、すぐに完全解決は不可能だ。
 わが国金融領域のリスクはつまるところいかに形成されたか。その原因はとても多いが、主要には以下の4つの方面からである。
 まずは歴史遺産(遺留的)問題である。計画経済体制から社会主義市場経済体制の過渡において、多くの長期にわたり蓄積累積して深く何層にも重なった矛盾は、金融領域に集中し反映している。住居不動産(房地產)から見ると、1992年1993年の不動産ブームは銀行不良債権数千億元をすぐに作り出した。全国の使われていない(閑置的)商品住居は7000万平方メートル以上とされ、その価値は4000億前後(に達する)。海南省だけで使われてないものは1600万平方メートル、銀行資金460億元を占めている。もともと(銀行資金を)占用していたあの貸付は、元金にも利息がついているが、現在は態度を一変せねばならない。同時に建設された住宅で質が悪いもの、価格が高いもの、場所(地理位置)が悪いものは、処理が本当にむつかしい。この絶大部分は、銀行の呆賬(つまり損失が出ている貸付)であり坏賬である。現在の政策性銀行のリスクもまたとても大きい。糧棉買付(收購)貸付は、長期にわたりひどく流用されており、銀行の帳簿(挂賬)で大量の損失になっている。国家開発銀行の報告が示すように、石炭(煤炭)建設プロジェクトが生み出した不良貸付は、石炭業が困難に陥らせるだけでなく、開発銀行の生存と発展にとり、深刻な脅威になっている。
 二つ目は重複建設である。毎年目の見えない人のように新たなプロジェクトをはじめ、大量の重複建設を行った。又主として銀行貸付に頼った。多くの企業は銀行からカネを借りるとき返さねばならないと全く考えていない。これまでの数年間、銀行の固定資産投資貸付利率は10%以上だった。どのプロジェクトがこのような高い報酬率だろうか?多くのプロジェクトは損失を出している。たとえば90年代初期、全国にはたちまち十幾つの小エチレンプロジェクト(年産11.5万t)が登場した。小エチレン(プロジェクト)はコストが高く、製品は
p.208   単一で、販路がなかった。広州の小エチレンは80億元あまりを費やしたが生産(投產)開始後1年で損失数億元に達した。重複建設は巨額の銀行不良貸付を生み出しただけでなく、大量の重複生産をうみだし、銀行の流動資金貸付に頼って生産した製品に市場がなく、倉庫に積み上がり、企業の損失もまた銀行の帳簿上に積み上げられた。
 三つ目が行政の干渉(干預  による弊害 訳者挿入)である。一部の地方、部門の指導幹部は、金融知識が欠けており、金融法律、法規を理解しておらず、銀行その他の金融機構の正常な経営活動に気ままに干渉(干預)して金融機構の貸付を財政支出の代わりにしている。この数年、多くの地方(政府 訳者挿入)が行った「現地見学会(現場辦公會)」「資金調達会(資金調度会)」は、しばしばいずれも銀行あるいはその他の金融機構に貸付を指令するものだった。市場調査もなく、科学的に政策を決めることもなく、その結果多くの貸付はすべて市場がないところに投資され、効果利益もなく、償還能力の項目もなく、ほとんどすべては返されなかった(有去無回)。相当部分の資金は、公務をするとして(辦公大樓)、奨励金、政府の支出として用いられ、最後はすべて金融不良資産を形成した。(中略)
   四つは金融システムの腐敗現象の深刻(厳重)であること。多くの銀行とその他金融機構は厳重に違法、規則違反経営を行い、高利でカネを集め(高息攬儲)、簿外経営を行い、小さなグループ甚だしくは個人の私利を図り、内外で不正に結合し、手段を弄して私利を追求し(營私舞弊)、腐敗堕落し(腐化墮落)大量の金融資産流出に至る。金融システムの中の腐敗行為に対して、我々は一貫して厳重な懲罰措置をとってきたが、この数年金融案件はなお繰り返し(屢屢)発生している。
   当面するわが国金融領域の問題は確かに比較深刻(厳重)であり、金融リスクを防止、解除する任務は十分に巨大であるが、(我々の 訳者挿入)自信(信心)は決して揺るがない。われわれには完全に条件があり、方法があり、直面する問題を解決する能力がある。20年来の改革と発展は良好な基礎を固めた。経済実力は十分(雄厚)であり、当面するマクロ環境は比較余裕があり、重要製品と外国為替の準備は十分あり、
p.209  党中央には複雑な情勢を乗りこなす能力があり、我々はまた金融リスクを取り除くいささかの経験を蓄えている。正確に問題の所在認識することは、問題を解決する必要条件である。これらの有利な条件を十分用いるなら、我々はいかなるリスクにも抵抗でき、いかなる困難にも打ち勝つことができる。それゆえに、我々は問題と困難を見るにあたり、光明をも見るべきであり、勇気を奮い起こし、自信を強めるべきである。当然、金融領域問題の根本解決にあたっては、容易にできる(輕而易舉)としてはならず、全党全国が上から下まで心を一つにして協力し、一緒に難局に当たらねばならない(同舟共濟)。
 (以下略)

#朱鎔基 #金融改革     #名勝六義園

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