胡平 趙紫陽の社会主義初級段階論 2011
胡平《關於趙紫陽若干問題的解讀》在《趙紫陽的道路》晨鍾書局2011年pp.217-233 この胡平の一文は、あくまで参考として読み始めた。ここでは趙紫陽が1987年の十三大で提起した社会主義初級段階といういい方の巧妙さを論じた部分を訳出する。胡平(1947-)は1979年の民主の壁運動で名を成した人物。以下の文章もなかなか文章を書きなれた印象を受ける。
p.222 2.「社会主義初級段階」について
「社会主義初級段階」という言い方は、早くも思想解放運動時に議論(探討)されている。しかしこの種の提起(提法)が正式に共産党の政治報告に書かれたのは、それは1987年の中共十三大においてであり、それはまた趙紫陽が総書記の時期である。この言い方は中共で今日まで一貫して使われており(一直沿用)、趙紫陽が引退したので廃止される(沒有終止)ことはなかった。それでは、当時総書記を担任していた趙紫陽はなぜこうした言い方を採用したのだろうか。のちに趙はこのことを少し説明している。
趙紫陽は言う。「数年にわたり一連の改革開放措置を実施したが、つまるところ(説到底)、これは50年代以来開始実行されかつ日増しに強化された大統一の計画経済、単一の公有制、単一の労働に従った分配方式の否定であり修正である。」
ここにおいて趙紫陽は明確に我々に伝えている。いわゆる改革はつまるところ、これまでの(先前的)革命の否定である。なぜ改革せねばならないか?もとの(原先的)革命が変革を誤った(革錯了)からだ。類似した意味を鄧小平も語ったことがある。早くも1985年に鄧小平はまさに指摘した。「改革とは二回目の革命である。」言うまでもなく(不消說)鄧小平の心の中の第一次革命は、1949年のあの革命である。いわゆる改革は別のものを改めるのではなく、1949年のあの革命を改め、1949年前の状態を回復する、第二次革命とはすなわち第一次革命の革命である。
ここから人々はすぐに極めて先鋭な問題をひきだすことができる。あの年の共産革命は誤りであり、改革とは50年代以前に戻ることなら、それなら共産党は人民に自らの罪を詫びて(請罪)、引責辞職(引咎辭職)するべきではないか?なにゆえに(憑什麽)自身社会主義を標榜し続けるのか?なにゆえになおいわゆる無産階級独裁すなわち共産党一党独裁をなお続けるのか?
趙紫陽ははっきりとこの問題を意識している。まさに趙紫陽は言っている。「しかし、われわれはすでに30年あまり社会主義を実行した。一貫して伝統的社会主義に忠実であった中国人民に対して、一体どのように説明するべきなのか?」
当時理論界には幾つかの説明(説法)があった。一つの説明は、中国社会主義はすでに行われた(搞早了)戻るべきである(該退回去)、改めて新民主主義を行おう(というもの)。一つの説明は、中国は資本主義の発展を経験せずに社会主義を行った、現在は資本主義の補講を進めるべきである(というもの)。趙紫陽に認めている。「この二つの説明は、道理がないということはできないが、しかし必然的に理論上大論争を引き起こし、思想上新たな混乱を生み出すだろう。とくにこのような言い方では通らないということなら、それでうまくゆかないと改革開放事業は夭折してしまう。それゆえに(こうした説明を)採用はできない。」趙紫陽ははっきりと知っている。もしも、この二つの説明を公に(公開)採用することは、共産党革命の正当性を公に否定することに等しく、共産党独裁の合法性を公に否定することに等しいことになる。それが社会に大きな震動をもたらすことは言うまでもない。それにこの二つの説明が党内では通らないことも、予測できる。
それゆえに趙紫陽は「社会主義初級段階(階段)」という言い方(提法)を採用したのである。「私は1987年春に十三大報告を検討(考慮)したときに、これに如何に答えるか長い時間考えた。思考するなかでますます「社会主義初級段階」という言い方が最も良いとますます考えるようになった。それ(その言い方)は我々がすでに数十年やってきた社会主義の歴史を承認肯定しているし、同時に初級段階であるから、いわゆる伝統社会主義原則の約束を受け入れないことができるし、歴史的生産関係を大胆に調整超越でき、上の位の場所から戻ることができ、わが国の社会経済の水準と生産力の発展適合した各種の改革政策を実行できる。」
説明されているように(説白了)「初級段階」という言い方の巧妙さはここにある。一面で共産党は社会主義を全力で調整する(改掉)なかで、全力で資本主義を回復する。他面で言葉の上でなお社会主義だと厚顔にも述べ続けることができる。それは社会主義「初級段階」で今日の改革は昨日の革命の継続であり、共産党は引き続き政権にとどまることができる。(以下略)
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