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Information Asymmetry and George A. Akerlof by David R.Henderson from Econlib.com 情報の非対称性

 アカロフ 1940- David R. Henderson
Cited from Econlib.org

 George A. Akerlofは、Michael SpenceそしてGeorge Stiglitzとともに「非対称な情報を持つ市場の分析」(という貢献)に対して2001年にノーベル(経済学)賞を受賞した。経済学の多くは完全情報の仮定の上に築かれているが、様々な経済学者が過去において不完全情報の影響を考察してきた。この領域の二人の巨人は、Ludwig von MisesとFriedrich Hayekである。彼らは、中央の計画者は経済を計画するに必要な情報をもちことがおそらくできないであろうとの理由から、社会主義の崩壊を予測した。完全情報の仮定を緩和する次のステップの一つは、市場の一方の側が他方より、よりましな情報を持つと現実的に仮定することである。これは2001年のノベール賞受賞の3人すべてがしたことであった。
 その1970年の論文「レモン(欠陥車)のための市場」で、アカロフは、わずか数か月前に売られた車が新車に比べてかなり安く販売されるという、周知の現象に新たな説明を与えた。アカロフの説明(モデル)は単純だが強力だった。(ここで)幾つかの車は欠陥車で、幾つかの車は優良車だと仮定しよう。もし買い手がどの車が欠陥車でどの車が優良車だと言うことができれば、欠陥車市場と優良車市場という二つの別々の市場が存在するだけであったろう。しかししばしば情報の非対称性がある。買い手はどの車が欠陥車か言えないけれど、もちろん売り手はどれが(欠陥車かを)知っている。それゆえ買い手は買う車が欠陥車かもしれないという可能性を知っているし、もし優良車だと確信するときに支払うより少なく支払いたいだろう。中古車のこの低い価格は、優良車の売り手の気持ちを阻喪させる。優良車の買い手が進んで支払う価格であれば売るだろうが、買い手が欠陥車と出会うリスクを反映した低い価格では進んで売らないだろう。かくして買い手と売り手双方を満足できる(befit)取引は起こらず、効率が失われている。
 アカロフはレモン問題は政府の役割を必然的に含意するとは結論付けていない。むしろ彼は、多くの自由市場組織は、レモン問題を解決あるいは軽減する経路とみることが出来ると指摘した。アカロフは一つの解決は保証書warrantiesだと指摘した、それは買い手にその車はレモンでないことに安心assuranceを与え、そこで買い手は保証書付きの車には進んでより多く支払うだろう。また保証書を進んで提供しようとする売り手は、欠陥車を売らない自信のある売り手である。またアカロフの論文以来の市場のもう一つ(の解決)は、車の修繕履歴をとても低コストで入手できる方法であるCarfaxである(訳注 なお同様のサービスを提供している会社にはCarfaxのほかにAutoCheckという会社もある)。アカロフは車から先に進んで、同一種類の問題が、(貸付)信用市場そして健康保険市場で生じていることを示した。
 アカロフは共著者のJanet Yellenとともに、新ケインズ派経済学において、いくつか開拓者的な仕事をした。彼らは、価格について経験則に従う市場力のある企業の事例を考察した。彼らが考察した経験則は、需要が増えた時に企業は価格を増やさない、需要が落ちたときも価格を減らさないというもの。彼らはこのような経験則は、ほぼ合理的であることを示した。すなわちこの戦略に従う企業は、すぐに価格を調整する戦略に比べて多くの利潤を失わない。しかし彼らはもし多くの企業がこの戦略に従うなら、経済全体に大きな影響を及ぼすことを示した。彼らは注記したー価格調整の(このような)欠如(の結果)、貨幣供給の増加は実産出の成長を増加させ、貨幣供給の落ち込みは実産出の成長を減少させるだろう。
 最近、アカロフは、アメリカ黒人の間の高い貧困率と高い犯罪率の持続を説明しようとした。彼と共著者のRachel Krantonは、多くの黒人は、主流の文化を受け入れ経済的に成功するか、あるいは主流文化に敵対して自らを破滅させるかの選択に直面している、と論じた。彼らは、後者の誘因が高い、と論じている。
 アカロフは経済学士号を1962年にYaleで得た。また経済学のPh.Dを1966年にMITで得た。彼はその職業的人生のほとんどをカリフォルニア大学バークレー校の経済学教授として過ごした。1973-74年の間、彼はRichard M.Nixonの経済顧問会議の上級エコノミストだった。1978-1980年の間、彼はLondon School of Economicsで経済学教授を務めた。



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