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宮本雄二『習近平の中国』2015

著者は元駐中国大使。大使として実際に何度か習近平と会食の機会があり、習近平が2009年に来日したおりは、主席随伴員として全日程に同行した人。日本人として最も習近平を身近に見た人であることは違いない。当然だが、習近平と交わしたお話の内容などは一切書かれていないが、人物としての印象には触れている(写真は東京大学本郷キャンパス 2019年12月4日)。饒舌な人ではなく、人の意見を聞く、胆力のある人(7章p.160)。

冒頭は中国政治の構造が説明されている。8668万人の党員からの2325人の党大会代表、そこから205人の中央委員、さらに25人の政治局委員、最後に7人の政治局常務委員および1名の総書記。この重層構造の説明は分かりやすい(2章)。

 江沢民に触れてその功績として朱鎔基を呼び戻したことを挙げている。朱鎔基については、2001年末のWTOへの参加問題に触れて、中国はWTO参加を受け身でなく中国自身の大改革のための積極策として行ったと指摘している。まさにその通りであるが、江沢民―朱鎔基の貢献をこのように指摘するのは、ポイントをついている。と同時に江沢民時代に、腐敗問題が著しく悪化したとする(3章)。その流れで習近平の地位に立つものとしての使命感に言及している(7章p.163)。

 宮本さんは、かつて中国共産党の統治はあまり長くないという議論をかつて外務省内で流したことを隠していない(2章冒頭)。その後予測は覆り、判断ミスを反省したと。どれほどの知見の上にその結論を導いたのか、中国外交の戦略を立てる責任者にしては議論が軽いとは感じる。その議論が浅かったと2章でいいながら、9章で再び共産党統治の崩壊を書いている(p.224)。どうもこの崩壊説は宮本さんの年来の持論であり変わっていないようだ。

#習近平 #朱鎔基      #東京大学本郷

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