見出し画像

趙紫陽「資本主義は比較理想的社会制度である」1995年7月8日

宗鳳鳴『趙紫陽軟禁中的談話』開放出版社2007, pp.169-170
(要旨)1995年7月8日。趙紫陽は、最初に資本主義と社会主義の発展について自身は作家章韶華(チャン・シャオホア)が1993年刊行の「人類の第二次宣言」で述べたのとと同じ観点だとしてうえで、現在の資本主義制度は活力があり、批判を受けて自己調節ができる、比較理想的社会制度だとしている。そしてケインズ主義をとり、福利政策を実行し資本主義は新たな段階に達したとまず指摘している。

p.169(訳文)  私(宗鳳鳴)はかつて青年作家章韶華の著作『人類の第二次宣言』を趙紫陽に渡した(轉給)ことがある。彼は読んだあと、今日私に言った。私(趙紫陽)は章韶華の資本主義と社会主義の発展には「趨勢(趨同)」があるという見方に同意する。
 加えて趙はさらに述べた。今までのところで、相対的に言えば、現在の世界で資本主義制度は比較理想的社会制度である。確かに各種の欠陥があるが、活力があり、ここで重要なことは批判の中で「自己調節」を実行できる。多くの学者がまた同じくこの制度は欠点があると言うが、批判の中で最後には前進する方法を探し出している。たとえば資本主義は1929年に全世界にわたる経済大危機を爆発させたが、のちにケインズ主義を採用し、国家干渉(管預)を実行し、資本主義の生命力を回復させた。また例えば、社会の安定のため、余るほどの福利政策を実行し、経済の発展に影響し、現在、克服と矯正が進行しており、資本主義はいわゆる組織された、あるいは国家が調整する現代市場経済の新段階に進んでいる。

(要旨)これに対し宗鳳鳴は、資本主義は批判を受けることによって改善されてきたが、社会主義に対する批判はこれまで反社会主義であるとして許されなかった、顧准はヒットラーのファシズム崩壊は批判を受け入れなかったからだと言っている、自分はソ連の崩壊も(原因は)同じだと思うと返している。

p.169(訳文) 私(宗鳳鳴)は口をはさんで、資本主義制度は批判されるほど発展し、生命力を持つようになった。なのに社会主義は過去、自らがもっとも進んでいると、もっとも優越、完成していると吹聴を続け、他人に批判させなかった。社会主義制度の欠点や誤りを指摘すると、社会主義への攻撃であると認定して、反社会主義、反党、反人民だとした。経済学者顧准はかつてこう述べた、ヒットラーのファシズムは批判を受けなかったために滅亡に至った、私はソ連も同様に瓦解に到ると考えていると。

(要旨)これを受けて趙紫陽は資本主義は批判を受けることで改善発展してきた。他方、社会主義国家が独裁となったのはマルクスの意図ではない。マルクスは労働者の自由連合体の樹立、人の全面的発展をもとめていたのであり、独裁体制を作ることが目的ではなかった。また独裁は過渡期にそれも短期で終わるものとしていた、と説明している。(なお資本主義は批判を受けて改善されてきた、というのは顧准の説でもあるので、この趙紫陽の意見は、顧准の影響のようにも思える。)

p.169(訳文)趙は述べた。資本主義は200年というものこのように批判の中で次第に建設され、完成され、
p.170  社会の発展に適応してきたものだ。(他方)我々の社会主義各国家が独裁(専制)政体に発展してしまったのは、決してマルクスのもともとの本意ではない。マルクスは人の全面発展を求め、労働者の自由連合体の建設(建立)を求めていたので、決して独裁政体の建設を求めたのではなかった。実際、マルクスの言葉がある、資本主義が共産主義への過渡において、無産階級独裁を経過する必要があると。これはしかし長くない過渡を指している。なのに我々はこの独裁を独裁政体に変え、併せて全面独裁とし、さらには長期間維持してしまった。

 (要旨)このあと趙紫陽は、レーニンがロシア革命成功後、帝国主義国の干渉を受けて、次第に独裁制に移行したのには、それなりの客観必然性があったと説明する。次に中国に目を転じて、孫中山は清朝の封建独裁を倒したあと、民主共和議会を始めようとしたが、軍閥や国民党内の腐敗もあり失敗、やむを得ず、国民党を改組、黄埔軍校を作り、党が国を治める形をとった。それを蒋介石が指導者の独裁政体に発展させることになった。それは孫中山の政治を民衆に戻そうという考えとは違っていた。と説明する。
 趙紫陽は、我が党の場合は、段階的目標がなく、ただ無産階級独裁を強化するだけだった。もし共産党が最初からそれを掲げていたら、知識人は恐れて参加しなかったであろう。しかし資本主義が危機にあった1930年代に共産主義は、流行でもあったとしている。(このあとも二人の議論は続いているが今回紹介はここまでとする。)


main page: https://note.mu/hiroshifukumitsu  マガジン数は20。「マガジン」に入り「もっと見る」をクリック。mail : fukumitu アットマークseijo.ac.jp