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紺野大介『清華大学と北京大学』2006

中国の勉強を始めようとしたときに、たまたま出会ったのが本書だった。正式のタイトルは『中国の頭脳 清華大学と北京大学』朝日新聞社2006である。日本では中国の大学といえば、まず北京大学を思い浮かべることは、今でも多いと思うが、両者の関係は実際には逆であることを、詳述している。

今読み返すと、清華大学出身の朱鎔基と胡錦涛の履歴について詳しく述べていること、清華大学と北京大学、この二つの大学の歴史をかなり詳しく紹介していること、また浙江、復旦、南京、上海交通などの一流大学についても言及があるなど、本書は情報ソースとして有用である。著者紹介や本文の記述からは、著者が清華大学と北京大学のそれぞれの教壇に立ち、それぞれの大学の教員とも交流を重ねた上での記述であることが分かる。

ところどころ著者の私見が示されている。例えば、毛沢東について、自分の家族を犠牲にされながらも国を守ったのは毛沢東だけ、というのが中国人一般の理解なので、中国人は、毛の晩年の誤りに対しても寛大な態度をとっている、といった指摘(p.77)。中国のような人口の大きな国では「人治」が優先される領域があっても許されるような気がする。という表現(pp.86-87)。中国を批判すればいいとも思わないが、大躍進や文化大革命によって中国の知識人が被った被害の大きさを考えるとき、また「法治」の重要性が議論されているとき、このような私見の表明には違和感がないではない。

#朱鎔基 #胡錦涛 #毛沢東

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