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遠藤誉『毛沢東 日本軍と共謀した男』2015

   新潮新書である(写真は諏訪山吉祥寺の山門。享和2年1802年築造)。
 本書の最初の章で議論しているのは、毛沢東が現在の日本でいえば高校2年程度の学習で最終学歴が終わっていること。留学歴もない。そのコンプレックスが、知識人苛めにつながったというお話だ。示唆されているのは、北京大学図書館で働いたのは、大学受験資格を得るためだったというお話。なぜ図書館司書をしていたかという疑問があったので、この話はとても説得力がある。
 そしてつぎのお話は最初のお話は1927年秋,蜂起に失敗した毛沢東は、井岡山に逃げ込むことで革命根拠地造りに成功する。その時、もともと井岡山にいた指導者と支持者を排除することが、いわゆる1930年以降のAB団事件と呼ばれる粛清事件の内実だったというお話。この話も曖昧だった部分が明確に書かれているので、なるほどと感じる。もう一つは、革命根拠地つぶしにのりだした蒋介石が、ついに紅軍をせん滅しようとしたまさにその時に、
日本の関東軍は、1931年9月、満州事変を起こし、紅軍の危機を結果として救ったというお話。時間軸をみると、これもまさにその通り。
 その後、毛沢東は、国民党を抗日の一線に引きずり出して消耗弱体化させる一方、紅軍の戦力を温存、大衆の赤化、共産党の拡大に努め戦後につなげたとする。逆に言えば、日本軍の対中新出が、中国共産党の伸張につながった。
 戦後長春での解放軍による長期包囲戦でつらい体験をした著者。本書執筆で著者積年の思いを吐露したのか、自身の心の闘いにピリウドを打つことができたとも本書末尾で書いている。著者は1941年生まれ、本書は執筆時著者74歳にしてなお力あふれる著作といえる。

#毛沢東 #諏訪山吉祥寺

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