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中国医療保険改革で個人勘定縮小に各地で老人が抗議 纽约时报2023/02/24

Keith Bradsher   中国医保改革个人账户“缩水”,多地老年人抗议  纽约时报中文网 2023/02/24 この記事は、単純な報道ではなく中国の医療保険制度の在り方も論じている。問題の所在を地方財政のひっ迫に置いている。

 高価なゼロコロナ(清零)政策を3年にわたり実行したあと、中国の地方政府は財政危機に直面している。国家の医療保険制度を突然改めて、享受していた社会福祉(福利)削減を迫られ、民衆は憤懣を爆発させた。
 この数日、千人単位の老人が各地の公園やその他の公共場所に集まり、これらの改革措置に抗議した。彼らが最も影響を受ける集団だった。寒い東北都市の大連から、大連から2400キロ離れた亜熱帯都市の広州まで、(さらに)新コロナウイルスの大流行が始まった場所である中部の都市の武漢まで、(これら)すべてで抗議集会が出現した。
 最も切迫した問題の一つは、多くの人の入院治療費用を賄う政府の医療保障基金がすでに空っぽ(花光)ということだ。この基金は雇用主の支払い(征税)で賄われているが、今巨額の赤字に正面から直面している。法律の求めに応じて、地方政府はこの赤字を補わねばならない。
   過度の困窮している病院を支援するカネをひねり出すために、市政当局は医療保険の個人勘定への振り込みをすでに減らし始めたのである。(しかし)中産階級は個人勘定を医薬代や問診代に使っている。
 この変化に対する公衆の反対は昨年(2022年)11月下旬のゼロコロナ政策反対の示威活動の規模になお達していない(政府はすでに昨年12月に大規模なPCR検査(核酸検測)と小区閉鎖(封控*)との厳格な政策を廃止している)が、しかしこれ(この変化)は多くの中国人に幻滅をはっきり感じさせた。経済の快速成長時に老人に承諾した社会福利は、ますます不確か(不可靠)になりつつある。
   (訳注 コロナ患者が発生したことで一定期間閉鎖となる小区を封控区という。この封控区を抱えたより大きなまとまりが管控区である。単に感染を警戒している地区は防范区である。)
 「個人勘定は我々自身のカネだ」と現在59歳の陳広遥(音)は先週述べた。彼は武漢のある国有企業の退職職工だ。彼は2月15日16日の抗議活動に参加しなかった。しかし彼は参加した人と同じように怒っているという。
 「医療改革を認めることはできない、こんなことを考えることもできない、絶対にだめだ、人民の利益を侵してしまうなんて」と、公園の中でサックスを練習していた陳広遥は身体を止めていった。
 医療保険の費用を節約するため、各地の政府がとった方法は同じでなかった。武漢当局が、より多くの医療機関と薬局とを問診統合清算に組み入れ、個人勘定を大幅に削減したことは、不安をもたらした。
 医療保険改革への憤懣は、中国の地方政府にあまねく存在する財政逼迫状況を表面化させた。北京(中央政府)が下達した政策(たとえばゼロコロナ政策)執行について、地方政府はしばしばコストを負担している。
 コロナ感染時、通常でないコストを負担したほか、地方政府は急速に増える退職者の、ますます増える医療保障ニーズに直面している。地方政府の主要財源収入はすでに縮んでいる。不動産市場の動揺は続いており、不動産開発業者は公共土地の購入を減らしている。
 一部の公務員や教師は賃金はボーナスを欠いたり減らされている。地方政府や関連団体のなかには、すでに返済が滞ったり、過重債務状態のものがあり、銀行やその他の貸方に損失をもたらす恐れがある。
 医療保険の変化は人々にとても切実に受け止められている。
   中国の14億の人口のうち農民を含む4分の3は医療保険がない。農民、農民工、その他の低収入職業の人、そして児童。これらの人は、医療は住民保険の基本保障に依存している。
(コメント 4分の3に医療保険がないというのは言い過ぎで任意の保険制度は存在している。それをこの記事は住民保険といっている。そして確かに、住民保険と医療保険との間に大きな格差があることが問題である。)
 中国では人口の4分の1は医療保険プール基金と個人勘定をもつ。そこには多くの国有企業の職工と退職職工とが含まれ、民営企業の比較的高賃金の人々、さらにこれらの退職者までが含まれている。公務員は人口のごく小部分で、医療保険、個人勘定のほか補充保険をもっている。
(コメント 以下、二点の指摘が続く。このような都市の企業労働者向けの医療保険が、給付水準などで比較的恵まれた状態にある。大連でデモをしたひとは、中国の中では制度的には恵まれた立場の人だということ。これがまず指摘される。もう一つは、雇用主からの納付金でプール基金が維持されているのに、コロナ下で納付減らすことを政府は認めたとの指摘である。と同時にコロナ下で、入院費用が増加したーこれにより、コロナ関連支出がプール基金からだされたという説に言及することなく、雇用主からの納付金の減少と、入院費用の増加から、プール基金の財政の悪化を導かれている。これが二つ目の指摘である。)
(以下略) 


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