見出し画像

ソフトバンクGの投資戦略 2020/02

 長年の懸案だった傘下のスプリントと、TモバイルUSの合併が2020年4月1日にも実現する見通し(2020年2月24日現在)。(写真は御茶ノ水駅近くを走行する総武線E235系 2020年2月24日)
 この結果、ソフトバンクG(SBG)はスプリントへの出資比率を下げて、スプリントはSBGの連結子会社でなくなる。最大のメリットは4兆円とされる巨額の有利子負債も連結債務から外れること。スプリントの株価上昇も朗報。デメリットはSBGの経営で、投資ファンドの収益への依存が増す点。その投資ファンドは直近営業赤字とのこと。
 投資ファンド1号ファンド(ビジョンファンド 10兆円 2017年立上げ。ビジョンファンド:1号ファンドの低迷により、同規模に膨れるとされる2号ファンドへの外部資金の参加が遅れている。)は、シェアオフィス(オフィスを借り上げて転貸するビジネスモデル。そのリース料の支払いが巨額であるため、資金繰りが厳しい。稼働率が上がることが至上命題。)のウィーカンパニーを割高な株価で取得し、巨額の損失につながったとされる(加えて経営悪化により2019年9月に上場は実現できず。上場が流れたことでIPOによる巨額資金調達も流れ、ソフトバンクGはウィーの経営再建に向けて資金確保に追われた)。同じく投資先である、ライドシェアのウーバーテクノロジーズ(ライドシェアは、競争の激化で収益悪化が伝えられる。運転手の権利保護の動きも懸念材料。ネットを通じて仕事を請け負うギグワーカーを保護する動きが広がると、労務関連費用が増える可能性もあり、ライドシェアはバラ色ではないことに注意するべきだ)も上場したものの株価低迷が続いている(ビジョンファンドでは中国の滴々出行、シンガポールノグラブへも出資。ライドシェアへの出資が多い。)。(なお楽天が出資した、米ライドシェア大手リフトの株も低迷している。つまり米ライドシェア株はいずれも軟調だ。)
 ところでこれまでソフトバンクGが投資ファンドの投資先と選ぶものにはいわゆるユニコーンが多い(ファンドの規模が巨大なので、投資先が巨大化するのは仕方ない面もある)。問題はユニコーンは、創業者が経営者であるケースが多く企業ガバナンス面の稚拙さが目立つものも多いことである。投資で失敗が目立つのは、投資にあたってそうしたガバナンス面のチェックがソフトバンクGは甘かったからではないか、とも指摘されている。(ユニコーン:評価額10億ドル以上の大型未上場企業。さらにデカコーンは評価額100億ドル以上。将来の成長期待と称して、利益がでていない赤字のものも多いが、これらの上場が2019年あいついだ。ウーバーやリフトが代表例だったがいずれも上場後株価を下げた。しかしこのような未だ利益を出せない会社、赤字会社をベンチャーキャピタルではなくて一般の投資家の投資対象として議論するのは、よく考えると、際どい話だ。理屈ではスタートアップ企業で、なお支出が収入より多い段階の企業の資金調達に証券市場が役に立つということであるが。そしてこうした未上場企業について企業統治における問題を指摘する声が多い。)
 SBG株の低迷を機に同株を3%程度取得したエリオットマネジメントが、SBGの経営の在り方の転換を求めているとのこと(2020年2月7日に報道)。一つは保有株を処分して巨額の自社株買いの実施することだ。そのためには、アリババ株などの売却をSBGは迫られる。アリババ株などの含み益を使って、資金調達をして投資資金に使うマジックに事実上修正を迫る提案だ。また孫正義さん(約22%所有)主導のSBGの企業統治についても改善を求めているとのことだ。株高を利用して投資規模を拡大するマジックが、株主のために本当になっているか、孫さんも考え直すべきときかもしれない。
 → 株価低迷とソフトバンク 2019/10

#ソフトバンク #ビジョンファンド #ユニコーン #赤字企業
#総武線

main page: https://note.mu/hiroshifukumitsu  マガジン数は20。「マガジン」に入り「もっと見る」をクリック。mail : fukumitu アットマークseijo.ac.jp