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陳雲「当面の経済工作」1988/10/08

這是陳雲同志同中央負責同志談話的要點。《陳雲文選 第三卷  第二版》人民出版社1995年,pp.365-367  (中央負責同志とは趙紫陽のことだと矢吹さんは指摘している。ー1988年11月には、陳雲(中央顧問委員会主任)が趙紫陽を呼びつけて、「八ケ条の意見」を説いた。矢吹晋『鄧小平』講談社学術文庫2003年p.150.  保守派は経済改革によってもたらされたインフレ、所得格差の拡大が中国社会主義の成果を食いつぶすと危機感をつよめた。同前p.149.)

  我々社会主義国家内で、西欧の市場経済の方法を学ぶことは、見るところ困難が少なくない。皆さんは正に模索中であり、模索の過程で出会った幾つかの問題は避けることはむつかしかった。模索を続けて良いが、必要に応じて経験を総括してはどうか。
 以下、私は八点意見を述べる。
 (1) 糧食問題はいつも大問題である。
 10億の人民が食べねばならない。農民が植えたものが糧として国家に売り渡される。疑いのない道理(天經地義)である。
    現在かなり多くの農民が郷鎮企業を営んで、糧食を買って食べている。これは軽視できない。
 郷鎮企業について少し研究し、どこが有用でどこが駄目か、調査研究するべきだ。積極的に誘導して、健全に発展(健康発展)させるべきだ。
 (2)耕す田は休ませねば(養地 肥料を与えことを指す)ならない。請負の工業交通運輸企業については、完璧な設備を確保すべきである。
 化学肥料を用いすぎると(一定数量を超過すると)すると、土地は痩せ始める。(こうした問題はあるが 福光挿入)今後、農家に施肥を多いに提唱すべきである。現在農民が農家の肥料を重視しない原因について研究すべきで、有効な解決方法を提起すべきである。
 企業が請け負い責任制を実行することには積極面があるが、同時に消極面がある。多くの企業が請け負い数を完成しようと、設備をフル稼働し(硬拼設備)問題があっても運転する。近年(安全)事故が増えているは、おそらくこれと関係がある。企業は良い設備を維持保護すべきであり、とくに重要設備はほぼ完全はだめで(四個九不行)1万は1も欠けてはならない。
 (3) 中央の政治権威のためには、中央の経済権威が基礎を作る必要がある。中央の経済権威がなければ、中央の政治権威は確固たるものではない。
 経済活動において、中央は集中した権力に集中するべきである。
 経済活性化は正しいが、権力があまりに分散しておれば、活性化もむつかしい。
 現在,非生産的な建設、とくに役所・講堂・宿泊所・ゲストハウス(樓堂館所)の建設があまりに多い。黒竜江から北戴河まで樓堂館所で埋まっているのはまことに奇怪なことだ。
 (4) 未来永劫赤字財政をしてはならない。
 全体から見て、幾つかの大きなバランス(平衡)の中で最も基本は財政のバランス、均衡である。
 現在の混乱した経済局面を転換(捏轉)するには、まずは財政の均衡、とくに中央財政を均衡させることである。
 現在、貨幣(票子)の発行が多すぎる。貨幣発行の権力は高度に集中されるべきで、私は一人の手に(一枝筆)にあるべきだと思う。
 (5) 歴史上起きたことは、現在すべて参照(照搬)されるべきで、一概に否定できない。
 三年回復(建国後3年で経済復興を成し遂げたことを指す)、蒋介石に追いつくのに22年(これは台湾との間で経済規模などで逆転を指していると思われるが確認できない。福光注記)。
 第一次五カ年計画(1953-57)から現在(1988年10月)までおよそ36年、その間曲折はあったが、発展がおそろしくゆっくりだったともえいない。これらの年において、我々は156のプロジェクトを実施した、すなわち先端科学技術、石油自給、武漢鋼鉄の1m7圧延機(轧机    軋機)、十三組(套:成分配合の意味)の大化学肥料、宝山鋼鉄、そして鉄道、電力,農田水利などの建設、これらの影響を低く評価はできない。
 ソ連は米国と競い合う(抗衡)ことができるまで、現在までに七十一年を要した。米国はワシントンの時代から数えて現在までおよそ二百年である。
 当然、目下の国内外の情況は過去と比べてとても大きな変化が生じている。過去我々は経済工作において、何も欠点や誤りがなかったということはできない。
 私は1979年3月に話したことがあるが、60年間というもの、ソ連あるいは中国をとわず、計画工作制度に出現した主要な欠点は、「ただ計画がありそれに比例させる」というこの部分にあったのであり、「社会主義制度のもとでも市場調節は必ず必要である」というこの部分にはなかったということである。したがって我々は改革が必要だった。しかし改革を進める中で、計画に従って経済を比例発展させるという所を取り除くことはできない。もしそうすれば国民経済全体が秩序を失ってしまうだろう。
 (6) 人民の生活水準を高めるのは、一定の幅を守る必要がある。過度に高めたり過度に早めることはできない。
 二つ昔からの言い方がある。一に飯を食べねばならず、二に建設せねばならない。(もう一つは)良いことはしなければならず、また力を出して行わなければならない。
 (7) 貯蓄には価値の安定が必要だ。同時に国庫券も価値の安定が必要だ。
 もしも市場物価を安定させる根本的措置がとられなければ、預金を引き出して競って物を買う風潮が再び起きるだろう。
 外債は借りてよいが、できるだけ少なく借りること。外債の借入は、用いれるところまで、返せるところまでにせよ。
 (8) 目下、財政経済は困難に遭遇している。この困難を克服するには、党の指導を強めること、とくに党中央核心の指導作用が不可欠である。

#陳雲

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福光 寛  中国経済思想摘記
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