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ファイザーモデル Pfizer model

 武田薬品による製薬大手シャイアー買収(2018-2019)について、これはファイザーモデルではないかと指摘されました。ファイザーは世界最大手の製薬会社ですが、大型買収を繰り返して(特許切れを買収で乗り切る形で)成長してきました。そこで武田は6.2兆円の大型買収でファイザーモデルの後多いをしているとされたのです。背景には、医薬品の開発問題があるとされています。巨額の開発費を投入しても、新薬につながる確率は3万分の1ともされています。そこで有力な特許権をもつ製薬会社の買収に走って収益力の回復を急ぐことになります。
    医薬品の開発で多くのトライアルの中で成功するものが極めて少ないとされる構造は、エンターテイメントの世界と似ています。たくさんの上演作品の中でメガヒットするものは、わずかです。ですが、そこに資金を投入すると、ビジネスとしては、大きな利益がえられます。このように成功の確率の高いものに、集中して投資する戦略をブロックバスター戦略blockbuster strategyと呼んでいる。希少疾患治療薬(そして血液製剤)に強いシャイアーを買収する武田はブロックバスター戦略をとっているという言い方がある。しかし患者数が少ない希少疾患治療薬では、大きな利益は期待できないので、この大型買収は、リスクが高いようにもみえる。
 注目してよいのは、この買収に創業家の一族が反対意見を示したことだ(2018年12月の臨時株主総会および2019年6月の定時株主総会)。買収は現金約3兆円と約4兆円相当の新株発行で賄われる。大量の新株発行と負債の急増で、株価の下落(利益の希薄化)が予想されるところから、この反対は理解できる(会社側は売上が2倍、EBITDAが現在の3倍になると言い訳を述べている)。19年6月には、将来減損損失が生じた場合、過去にさかのぼって経営陣に報酬返還などを請求できるクローバック条項(clawback clause   払い戻し条項:一度与えた報酬を払い戻させるもの、行き過ぎた利益追求の歯止めになるとされる)の導入を、この創業一族が株主提案している。創業一族の提案のうち、買収中止の提案は否決されたものの、株価の低迷に株主の不満は強いようだ。創業一族が2019年6月に提案したクローバック条項は、内規を今後整備することになったとされている。
 しかし大型買収をしても、自社の新薬創出能力が中長期的に高まらなければ、時間の経過とともに特許権は喪失。再び収益力の低下に直面してしまいます。武田の戦略の有効性は、シャイアーの開発力が持続的であるかどうか、買収によって、武田の開発力が相乗効果で高まるか、などにかかっているのでしょう。しかしそれらがそれほど簡単ではないことはすでにわかっています。
 当面、約5.7兆円に膨らんだ有利子負債の圧縮が課題だ。非中核事業の売却で有利子負債1兆円余りを返済する方針。
 製薬会社による買収戦略はそこで、有望なタネをもつスタートアップ企業の買収に移行しているとされています。大型買収には財務を悪化させるリスクがありますので、投資金額を抑えてしかし有望な開発力は刈り取るよりリスクの低い戦略に移行しているのかもしれません。

 ファイザーについて
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