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中国思想・短編小説・歌曲選

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https://blog.goo.ne.jp/fu12345/e/7cc5e1ad373775c11668b88a748c64a6 中国的な考え方を知る手がかりを探しています。
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#史跡湯島聖堂

知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は恐れない(論語子罕篇第九)

                             福光 寛  『中庸』の以下のフレーズは学問への姿勢を言っているように読める(写真は湯島聖堂にある孔子像 2020年2月24日)。  先生(孔子)はいう。学ぶことが好きなものは知に近い、努力して学ぶものは仁に近い、(知らないことを)恥と知るものは勇気がある。この3点を知るものは、努力して自身の徳を高めることを知っている。徳を高めることを知った人は、すなわち人を治めることを知る。人を治めることを知った人は、天下国家を治める

人は学ばなければ道を知らない 人不學,不知道(礼記学記第十八)

 少し前のことだが、道徳に属することは、小さな子供のときに教えるしかないのだといわれたことがある。人を殺してはいけない、人のものを盗んではいけない、などの道徳。『礼記(らいき)学記第十八』にまさにそれを書いた文章がある(写真は湯島聖堂)。  「玉は磨かなければ器にならない。人は学ばなければ、道を知らない」(玉不琢,不成器;人不學,不知道。) ここで道というのは、もっと高い次元での道徳をいっているのかもしれない。しかし人を殺してはいけない、といった基礎的な道徳律を含んで

趙宏興「耳光」『長江文芸』2017年第12期

趙宏興(チャオ・ホンシン 1967- 安徽省合肥の人。この作家の細かな履歴は分からない。本作を自伝としてみれば、安徽省の貧しい農村出身かもしれない。なお合肥は安徽省の省都で、今では先端科学技術の都市との触れ込みで知られる。)の短編小説。両耳を両手で叩くことを「打耳光」という。子供の教育に望みをかける農民の気持ちが伝わる。この小説は最初に『長江文芸』2017年第12期に発表された。以下は《2018中国年度短編小説》灕江出版社2019,pp.81-95からこの。小説の要約である(

責任を果たして満足する 先義後利 孟子

 「先義後利」は有名な言葉で、商道徳を説いた言葉のようにも日本では理解されている(写真は湯島聖堂仰高門 2022年4月23日)。  孟子の梁恵(リアンホイ)王上が出典とされているが、出典だという意味は「先義後利」を孟子がここで教えとして説いたという意味であって、「先義後利」という言葉が梁恵王上に出ているわけではない。  孟子と会った梁恵王は、あなたはわが国にどのような利をもたらすのかと質問する。そこで孟子は、なぜ最初に利をいうのですか。義をあとにして利を先にいうのは、国を危う