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中国思想・短編小説・歌曲選

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https://blog.goo.ne.jp/fu12345/e/7cc5e1ad373775c11668b88a748c64a6 中国的な考え方を知る手がかりを探しています。
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2022年5月の記事一覧

陳再見「黒豆,或者反賊薛嵩」『創作与評論』2017年第12期

陳再見は1982年広東陸豊生まれ。以下、老弭(ミイさん)から聞いた話が語られる。  当時ミイさんはなお書記で、バイクを1台もっていて、昔のことを「あの時、私はまだ書記だったが」と話し始めるのが常だった。私は当時、もう子供ではなく小学校で代講していた。夏休みでその年は特に暑かった。他の話しを私が促すと、ミイさんは「黒豆のことを話そうか」といった。  黒豆は女性の名前で、結婚して4日で実家に帰された。4日前に黒豆が結婚したときミイさんは黒豆の父親の米貴に招かれ、酒食をふるまわれ

郝景芳「写一本書」『天涯』2017年第3期

初出《天涯》2017年第3期。『2017中国年度短編小説』満江出版社2018年1月208-231より。なお著者の郝景芳(ハオ・チンファン)は1984年7月天津生まれの女性。清華大学物理系在学中から創作を始め、物理系卒業後、経済学および経営学の博士号を取得している。SF(サイエンスフィクション)作家として活躍(見出し写真は六義園)。  主人公の阿阑はおそらく地方の大学の出身。事情は書かれていないが、その大学を卒業したあと、北京に部屋を借りて落ち着いて1年になる。彼女には4つ上

楊小凡「尋找花木蘭」『収穫』2013年第6期

 この小説は5年ほど前に中国の短編小説を読み始めたときに、最初に読んだ小説で思い出が深い。以下はその要旨。原載『収穫』2013年第6期。『中国当代文学経典必読 2013短編小説巻』百花洲文芸出版社(南昌市)2014年pp.266-276より。なお著者の楊小凡(ヤン・シアオファン)は1967年4月生まれ。安徽省亳州の人。1986年から創作を始めた。教師、記者などの社会経験がある。(見出し写真は電通本社ビル)  1年前に艾文化(アイ・ウエンホア)から電話を受けた時、私は本当に驚

阿成「老秦」『作家』2013年第5期

 阿成の「老秦」は『軽風拂面』と題した中に収められた3篇の小品の一つ。その最初が「草根飯店」、二作目がこの「老秦」で、三作目が「野百合小学」。3作は独立しているが、主題は共通していてごく普通の人の情感を描いている。中國當代文學經典必讀 2013短篇小説卷 百花洲文藝出版社 2014,pp.18-21より(なお見出しの写真はヒナギク。英語ではdaisy。白いヒナギクの花言葉は純潔。)。  私と秦(ちん)さん(老秦)とは昔からの隣人である。秦さんは70をすでに超えているだろう