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中国経済学史

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#民主

張維迎(1959-) 中国改革のロジック

張維迎(1959-)  中國改革的邏輯 世紀大講堂 内容から判断して2009年前半頃の採録。1993年頃を境に改革の中心が価格自由化から企業非国有化に移行したとする。鄧小平が始めた市場化改革の内容を、資源配置を政府の計画が決定するのか市場価格が決定するのか。企業制度が国有を主とするのか私有を主とするのか。前者では主要的地位を占めるのは国有企業、後者では非国有企業になるとする。今後の政治改革ではまず所有権(産権)が確立され、そのあと民主の問題に移るとする。国有企業の株の国民への

胡鞍鋼《中國崛起之路》2007にみる「全面的な小康社会の実現」に到る経済目標の変遷

 胡鞍鋼《中國崛起之路》北京大學出版社,2007 pp.323-332, 372-388(王京濱訳『国情報告 経済大国中国の課題』岩波書店, 2007 pp.161-191 王訳は原書をかなり大胆に編集している。しかしこの大胆な編集については、どこにも明記されていない。その意味で王訳については、かなり問題を感じるが、ここでは中国における全面的小康社会の実現に到る経済目標の立て方の変遷を見る資料という意味で資料としてだけ使うことにする。  「小康」が1980年に鄧小平の発

民主化についてのー胡鞍鋼、李羅力、吳敬璉の議論(2019/05/13)

民主化についてのー胡鞍鋼、李羅力、吳敬璉の議論  福光 寛  胡鞍鋼《中國崛起之路》北京大學出版社,2007 pp.198-204(王京濱訳『国情報告 経済大国中国の課題』岩波書店, 2007 pp.104-110)ここでは胡鞍鋼を引くが中国の経済学者の中国経済に関する議論をみるとき、一つの注目点は政治改革の問題の扱い方である。胡鞍鋼の本書での主張は、共同綱領で見られた民主党派との連携という政治の在り方がその後失われたことを問題にしているが、この問題は事実関係としてはよ

趙紫陽 民主政治は必ず始まる 1993/12/14

宗鳳鳴《趙紫陽軟禁中的談話》開放出版社,2007年,120-121 1993年12月14日 趙紫陽(チャオ・ツーヤン 1919-2005)は考える。「中国で過去、マルクスレーニン主義を導入(引進)したのは必ずしも社会主義を実現するためではない。「中華復興」「国家民族の危機を救う(救亡圖存)」のためだった。のちにソ連のこの高度集中体制を導入したのは、まず重工業の発展に力を集中し、軍事工業をおこすためで、富国強民のためであり、社会主義を実現するためではなかった。毛主席が中

中央組織部 中国特色社会主義八講 2013

「社会主義初級段階理論」についての党員向け説明。中共中央組織部党員教育中心組織編写「自分の道を歩め(走自己的路) 中国特色社会主義八講」人民出版社, 2013年9月, pp.120-123, 125(写真は成城池に面して成城大学3号館) p.120 1956年に我が国社会主義制度が開始されて(建立)以来,数十年の発展を経過し、わが国はもともとの基礎に加えて大きく発展した。しかし発達した国家と比べると、わが国の生産力水準は低く(比較低)、わが国はなお社会主義初級段階(階

徐偉新 等《中國新常態》2015

 新常態new normalについては2014年5月以降の習近平の発言により、中国は新たな経済状態に対応せねばならない、という経済面での文脈で使われることが多い。  しかし新常態には、政治・思想面に重点を置いた説明が今一つある。以下は徐偉新 等著《中國新常態》人民出版社,2015年, pp.1-125からの抄訳。徐偉新は中央党校副校長で全体の調整を行ったとのこと。10人の実際の執筆者の名前が巻末にある。参照 p.124 本書は党員向けの教材だと思われる。 p.1 はじめに: