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中国経済学史

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2021年7月の記事一覧

中国=資本主義論 矢吹晋『鄧小平』1993/2003

矢吹晋『鄧小平』講談社学術文庫版2003年(底本は講談社現代新書1993年)より、その結論部を見る。まず「中国的特色をもつ資本主義」論。中国は端的に資本主義だと指摘している。この中国=資本主義論は鋭い。  他方で民主化については矢吹さんは、台湾や香港にならっていずれ民主化するとしたが、この30年に実際に中国がしたことは、台湾の選挙に干渉し、香港の民主主義を破壊したことだった。矢吹さんはこの民主化の議論ではいかに記述するかの判断を間違えたのではないか?矢吹さん自身指摘しているよ

ブレマー『自由市場の終焉』2010 権威主義=国家資本主義論 

 イアン・ブレマー 有賀裕子訳『自由主義の終焉 国家資本主義とどう闘うか』日本経済新聞出版社2011年 Ian Bremmer, The End of Free Market, 2010  ブログの標題は本の題名を英語原題の『自由市場の終焉』に戻している。 (解題)ブレマーの主張はかなり明解で理解しやすい。権威主義体制が市場主導型の資本主義を受け入れた仕組みとして「国家資本主義」を考え、中国をその一つとしている。しかし国家資本主義はあくまで仕組みであって、社会主義のようなイデ

王丹 中華人民共和国史十五講② 土地改革と反右派闘争 1950-62

王丹『中華人民共和国史十五講』ちくま学芸文庫2014年から第4講そして第5講から抜き書きをつくる。以下の記述のうち、いわゆる反右派闘争は1957年6月からであるが、その前に胡風批判などが先行しておきている。以下にでてくる大飢饉は1950年代末から1960年初頭にかけてがシビアだった。4000万を超える非正常死をもたらした一大惨事である。 p.112    1950年6月、中央人民政府は綱領的文書「中華人民共和国土地改革法」を発布した。土地改革の目的は、「地主階級の封建的搾取

王丹 中華人民共和国史十五講① 共同綱領と五反運動 1949-52

王丹 中華人民共和国史十五講 ちくま学芸文庫 2014年 王丹のこの本は2回ほど通読している。今回は第1講から第3講までからメモを作成した。 p.35  中共の建国がなされたばかりのころ、最高の政治権力機構は名義上は中国人民政治協商会議であった。・・・注意すべきは、このときに「共同綱領」が確立した国の体制は「新民主主義」であって、「社会主義」ではなかった点である。 p.36  「共同綱領」はこのとき臨時憲法に等しく、中国がようやく最初の憲法を制定したのは1954になってか