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中国経済学史

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2020年11月の記事一覧

Brus & Laski, From Marx to the Market(1989), OUP:2002

 本書の結論部であるが、市場社会主義market socialismが何かについて明確に述べられている。大きな主張点は、従来の資本主義に代わるものとしての社会主義と言った考え方が否定されていること。「社会主義国」で行うべきことは、革命によって中断された市場化を進めることだとされていること。この2点において、従来の社会主義者の主張を覆している。この本は1988年に書かれて1989年に発表された。社会主義圏の崩壊を背景に、社会主義国で何をするべきかが論じている。今日読み返すと幾つ

Walter & Howie(2011), Red Capitalism, John Wiley and Sons:2011

p.21  朱鎔基が進めた金融改革で驚くべきことは、包括的で、変革的であったことと、一貫性をもって進められたことだ。しかし、特別利益集団が支配的政治実体である中国共産党と共存している、中国の政治体制の分散的fragmented構造のもとで、見直し(follow through)に欠けることは不可避であったかもしれない。この構造を動かすのは、市場経済そしてその需給の法則ではなく、政治的エリートを構成する革命家族の特別な利権をめぐり構築された慎重にバランスをとったメカニズムであっ

Kwek Ping Yong(2012), Private Equity in China, John Wiley & Sons:2012

p.33 中国は13億3000万の人口を抱える世界で最も人口の多い国である。その面積は960万平方キロであり、23の省、5つの自治区、4つの特別市、そして2つの特別管理地域からなる。中国の政治制度は中央化されている。中国共産党は、中でも、いかに政府が機能するかについて権限を保有している。重要p.34 な事実は規制環境に対しての含意にあり、国家および投資に関して誰が究極の決定権を持つかwieldsを決定しているということである。たとえば党の書記は市長より上位である。  政府と序