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中国経済学史

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2020年1月の記事一覧

石川禎浩『革命とナショナリズム』2010

 岩波新書2010年刊で正式なタイトルは「シリーズ中国近現代史③ 革命とナショナリズム1925-1945」である(写真は憲政記念館前から警視庁を望む。2020年1月6日)。石川さんには『中国共産党成立史』岩波書店2001年という大著がある。同書は中国語版も刊行されている。ほかにも『赤い星は如何に昇ったか』臨川書店2016年など。  新書ではあるが記述は極めて緻密であり、非常に多くの新しい資料を読み込んでいる。なかでも蒋介石の日記などをもとに、蒋介石が、日本に対して、列強による

中国:抗戦前の銀行(1927-1938)

   戴建兵 等《話説 中國近代銀行》百花文藝出版社2007年,291-297(写真は2019年8月 瀋陽にて)  1927年から1938年は中国銀行業の第四期である。これは国民政府が国家銀行体系を建設(建立)した時代であり、国家の金融業に対する統制を強化するために、この期間に国民政府は前後して二度にわたる改元と法幣政策と2大金融法令を公布し、これにより強力に幣制改革を通して中国銀行業を強化した。古い伝統的銭庄は消滅し、政府は官商合弁銀行資本などを増加するこの方式で、中央銀

抗日戦争期間の銀行(1937-1945)

    戴建兵 等《話説 中國近代銀行》百花文藝出版社2007年,297-303(写真は2019年8月 ハルピンにて)   1937年から1945年は中国銀行発展の第五期であり、このとき中国銀行業は中国の抗戦を支援(支持)しかつ経済を発展させる二重の任務に直面していた。かつ政府はそれを口実に銀行業全体の統制を強化した。  全面抗戦が勃発したあと、中央銀行本店は重慶に移転した。この段階の初期においては中央銀行の力量は中国銀行に及ぶものではなかった。そこで「四聯縂処」の名義で

左派による反論 1958

 張春橋(1917-2005)が『解放』1958年6期(半月刊なので3月下旬刊行分だろうか)に”破除資產階級的法權思想”を書いて毛沢東(1893-1976)に賞賛され、この論文は毛沢東の指示で「人民日報」1958年10月13日付けに転載されたと、金春明は指摘している(金春明《『四人幫』沉浮錄》九州出版社2013年p.11)。張春橋は周知のように四人組の一人となる人物。金は毛沢東、さらには江青に張春橋を紹介したのは柯慶施(1902-1965)だとしている。  (柯慶施は毛沢東が

買殼上市・借殻上市 中国経済用語

   買殼上市(mai3ke2shang4shi3 买壳上市)は、非上場会社が上場会社(場合によって上場しているものの、実態を失っている会社の場合があり買殼には上場会社という殻を買収する意味がある)を買収して上場すること。反向收購あるいはreverse takeovers(RTO)ともいう。日本語では裏口上場back door listingともいう。     中国企業のRTOという上場テクニックについては、かつて私は論文を書いて報告している。福光寛「中国概念股の危機で見えて

西商(シーシャン)或是華商(ホアシャン) 中国経済用語

 馬鳴家主編《中國的證券市場》中國財政經濟出版社1993年    劉志英《近代上海華商證券同業公會評析》載《近代上海金融組織研究》復旦大學出版社2007年    馬長林《中國古代金融》中國國際廣播出版社2011年    朱蔭貴《近代中國:金融與證券研究》上海人民出版社2012年   すでに見たように、西欧商人(西商シーシャン)が主導して1891年に上海股份公所が設立され(1905年上海衆業公所と改称)、これは1941年に日本軍が上海に進駐するまで存続した。注意されるのは取扱