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中国経済学史

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2019年12月の記事一覧

股票(グウピアオ) 中国経済用語

馬長林 股票の出現と外商股票交易機構 1860-1909 馬長林『中国古代金融』中国国際廣播出版社2011年pp.58-61(写真は東京大学総合図書館 2019年12月23日) p.58  一 股票の出現と外国商人股票交易機構(意訳:株券の登場と外国商人株券取引組織)  股票(株券)は有価証券の一種であり、近代資本主義発展の産物である。股票は企業資本の表現形態の一つであり、また社会個人の財を成し富に至る手段の一つであり、専門金融機構の最初のそしてその次の交易を通して、社会資

銭庄・票據・庄票 中国経済用語

馬長林『中国古代金融』中国国際廣播出版社2011年pp.8-12(写真は東京大学本郷キャンパス 2019年12月23日) p.8  一 銭庄の発生(興起)と発展    銭庄または錢舖,錢店と称するものは清代初めにすでに出現している。清代の貨幣流通は、銀(銀両)と銅銭(制銭)を中心とするもので、市場での購入で、大額(大銭)には銀を用い。小額には銅銭を用いた。早期の銭庄は市場の需要に適応して、経営の中心は銀と同銭の交換(兌換)であり、一般の商人や誰にであれ、銀を銅銭にあるいは銅

中国:改革開放前の銀行 1949-1978

李志煇《中國銀行業的發展與變遷》格緻出版社2008, 9-12(写真は伝通院山門 2019年12月28日)  改革開放前の中国銀行業は百年にわたる雛形(初期の)発展のあと、忽然と(悄然)形成され動作を始めた。各時期の経済主体に必要なサービスを提供することと、自身の発展モデルの模索と選択とを。ただしいつも政府の司庫(政府の金庫)にとどまるというこの狭い役割のなかで。  中国の貨幣と信用は上古の時代に始まる。銀銭業の記載は遅れるが、早いものには南北朝時期の寺廟での作物を担保と

中国:改革開放後の銀行 1978-2008

李志煇《中國銀行業的發展與變遷》格緻出版社2008   15-21(写真は東京大学本郷キャンパス 2019年12月4日)     党の十一届三中全会が招集開会され、機構(格局)は根本的に変化することになった。1978年12月18日から22日、中国共産党の第十一届中央委員会第三次全体会議が北京で招集開会された。会議は全党の工作の重点を社会主義現代化の建設に移すことを決定し、併せて経済体制改革の任務を提議(提出)した。我が国は改革開放の新たな歴史時期に突入した。と同時に、中国金

何清漣《中国現代化的陷阱》2002/2006

 何清漣(1956-)の《中国現代化的陷阱》は1997年香港で《中國的陷阱》の書名で出版されたのが最初でその後、各国で翻訳が出されるたびに著者は修正を加えてきたようだ(写真は東京大学安田講堂)。日本語訳(『中国現代化の落とし穴』草思社2002年)は2002年に英語版を出すにあたり改定版《中国現代化的陷阱》(中国語版)が用意され、それを訳出したもの。今回ここでPDFを紹介するのは2006年のドイツ語版をベースに著者がさらに修訂したもの。公開fileの日付けは2013年となってい

久保亨『社会主義への挑戦』2011

 正式タイトルはシリーズ中国近現代史④『社会主義への挑戦1945-1971』岩波書店2011年である。読み直して複雑な過程を見事にまとめていると感じた。中国でなく周辺諸国の状況を織り込んで書いていること。  また映画の話が随所にあり、使われている写真もなかなか珍しいものが多いのも、本書の魅力。ところどころハッとさせられる記述もあるがあるが以下はそのメモ(写真は高島屋タイムズスクエア 2019年11月30日)。 戦後の財政経済政策の相次ぎ失敗が、国民政府に対する信任を損ない、

新中国債券市場史 1949-2010

沉炳熙  曹媛媛《中國債券市場:30年改革與發展》北京大學出版社2010年pp.3-8(写真は東京タワー 2019年12月27日 撮影。東京タワーは1957年6月着工、1958年12月竣工。竹中工務店施工。高さ333m。日本では、2012年2月竣工の東京スカイツリー、高さ634mに次ぐ高さの建築構造物。)  わが国債券市場のひな型は新中国成立初期にすでに出現している。新中国成立直後、経済は極度に困難であった。一面で全国統一税収制度はなお未成立(未建立)であり、都市と農村の物

輪船招商局・交易所法・上海衆業公所

朱蔭貴《近代中國   金融與証券研究》上海人民出版社2012年,342-343(写真は東京タワー 2019年12月27日) 近代において中国証券市場が存在した時期において、もしその誕生や変遷と外部の環境をみるならば、はるかに正常ではない。この正常ではないという特徴は、現在以下の4つの面に集中して現われている。  その一。中国にある外国株券(股票)の売買は中国で早くから行われている。1843年から上海の開埠(貿易港として開くこと)が始まると、外国資本と外国企業が上海で相次い