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中国経済学史

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2019年9月の記事一覧

圈錢(チョアンチエン) 中国経済用語

   もともとこの言葉は圈地(チョアンディ)から派生しているとのこと。圈地は土地を権力者が強制的に収奪する=expropriationのイメージだが(土地を囲い込む=圈地 なお囲い込みについては圍場:ウェイチャンというもっと直接的な表現がある)、上場会社が上場によって大量の資金調達をすること=financingに使うことがある。投資者の金を囲い込むということになぞられることがあるようだ。  その背景だが、証券市場での上場は、中国では権力と近いと考えられる。上場で資金を調達する

rent seeking 権銭取引 中国経済用語

 中国語で權錢交易(チュアンチエンチアオイー)。英語でtrading power for moneyあるいはpower for money deal。権力を持っている者と、その権力をカネで取引することである。権力をカネに変えること(權還錢)。自身の保有する行政的権限(特權:テーチュアン)を利用して、それを富裕化の手段とすること。場合によっては国有財産を奪い取るなどの行為につながることもある。別の言い方では尋租(シュンツー)。英語でrent seeking。 rent

三角債 中国経済用語

 三角債(サンチアオチャイ)、英語でいうchain debt。1990年代に中国の企業間信用の問題として、盛んに議論されたこの問題が近年も中国企業の債務問題が議論されるなかでときどき現れる。債務鏈(チャイウーリエン)という言い方もある(写真は心光寺の石仏。安永六丁とまで読める。安永六年のものであれば1777年のもの)。  そこで疑問は、最近指摘される三角債は90年代のものとどのように違うのだろうか?90年代のあと、中国政府は三角債問題に取り組んで、どこまで問題は解消されたのだ

小康(シアオカン) 中国経済用語

20世紀末までに小康社会を実現する、2021年、結党100年を目標に全面的小康社会を実現する。中国ではこの小康(シアオカン)という文字が目標につかわれてきた。ところで、いつから誰が言い始めたかは分からないが、この小康は古典「礼記(らいき リイチ)」に由来する。単に生活水準を示す言葉ではなく、もう少し奥深い意味があるのだと、議論されるようになった。確かに言葉というのは、そういうもので元の意味がある(写真は成城大学3号館ベランダ)。  問題の箇所は「礼記礼運編第九」である。

プロファイル

 私は1970年代に慶応の大学院で古典派金融論の文献を学び(指導教授は修士が北原勇(1931-2024)先生 博士が飯田裕康(1937-)先生)、国会図書館調査局, 立命館大学(金融論)を経て1998年度(平成10年度)から2020年度(令和2年度)まで成城大学で教壇に立った(証券市場論と財務管理論)(写真は成城大学3号館ベランダ。)。なお2023年(令和5年)6月から公益財団法人政治経済研究所理事を勤めている。  慶應では北原勇、飯田裕康の両先生のほか、渡邊佐平(1903-

趙紫陽 マルクスの限界 1993/04/03

宗鳳鳴《趙紫陽軟禁中的談話》開放出版社,2007年,85 1993年4月3日 趙紫陽は言う。「マルクスは19世紀に生活して、資本主義生産の社会化と私有制(私人佔)とを資本主義社会の基本矛盾だと認識して、資本主義の発展とともに(社会の)両極分化が激しくなり資本主義の晩鐘が鳴らされるとした。しかし20世紀の事実は、資本主義社会では物質製品の欠乏は全く生じないどころか、物質製品は極端に豊富だったこと。また労働者階級が日増しに貧困化したり絶対貧困化することがなかったばかりか、人民の生

股改(グウガイ) 中国経済用語

2005年から2006年にかけて行われた中国の株式市場改革。股權分置改革を略して股改という(股權は「株主の権利」、分置は「配置」という意味)。法人株、国有株(国家株)など非流通株を流通株に切り替えたとされる。条件として投票中、3分の2以上の流通株主の同意を得る、とされた。そのため、流通株主の同意をえるために、流通株主に対して無償で株式を分けたり、現金を贈る、買い戻しをするなどの措置が取られた。このように流通株主に利益を与える改革であったので、この改革は意外にも円滑に進

趙紫陽 資本主義過程の必要性 1993/04/28

宗鳳鳴《趙紫陽軟禁中的談話》開放出版社,2007年,86-87 1993年4月28日 趙紫陽は言う:国有企業の改造について、公有制を選択して主体とする株式制では問題は解決に至らない。というのもすべて公有制では過去と大差ないからだ、自身に損益を負わせるだけでは解決にならず、ただ国有企業の経営メカニズムの転換をしても同様に解決に役立たない。これはかならず所有制問題の解決を必要としていたと。趙紫陽は国有民営方式、リース方式更に中外合資方式を検討し、国有資産の価値を増やすことを

趙紫陽 民主政治は必ず始まる 1993/12/14

宗鳳鳴《趙紫陽軟禁中的談話》開放出版社,2007年,120-121 1993年12月14日 趙紫陽(チャオ・ツーヤン 1919-2005)は考える。「中国で過去、マルクスレーニン主義を導入(引進)したのは必ずしも社会主義を実現するためではない。「中華復興」「国家民族の危機を救う(救亡圖存)」のためだった。のちにソ連のこの高度集中体制を導入したのは、まず重工業の発展に力を集中し、軍事工業をおこすためで、富国強民のためであり、社会主義を実現するためではなかった。毛主席が中

趙紫陽 資本主義を発展させよ 1993/07/01

宗鳳鳴《趙紫陽軟禁中的談話》開放出版社,2007年,104-106 1993年7月1日 趙紫陽は言った。「社会主義の現行制度と社会主義道路(社会主義への歩み方の意味か)との間には、区別(区分)があっていい。過去には先験的公式が作ったミイラ化した制度によったのであり、とくに公有制だが、実行したところは、公有化の程度が生産力の水準を超えており、生産力は極大まで破壊されることになり、貧困が作り出された。(そして)我々を社会主義からますます遠ざけてしまった。これはつまり社会主義

趙紫陽 資本主義と民主議会  2000/05/13

宗鳳鳴《趙紫陽軟禁中的談話》開放出版社,2007年,303-304,esp,304-308 2000年5月13日 趙紫陽は言った「問題は資本主義には一種の内在的自己調節メカニズムがあり、自身とまることなく、不断に更新、発展、変化しているのに、社会主義はその体制がミイラ化し停滞してしまったことにある。たとえば自由資本主義時期には、つまりアダム・スミスの自由放任理論の指導のもとでは、資本主義生産の無政府状態は資本主義を周期的に経済危機を発生させ、工場の閉鎖、労働者の失業を招いて