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中国に関連して生じた事実

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https://blog.goo.ne.jp/fu12345/e/7cc5e1ad373775c11668b88a748c64a6 政治的文化的側面を中心に年代順に採録。
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2019年12月の記事一覧

村上衛 森川裕貫 石川禎浩『中国近代の巨人とその著作』研文出版2019年1月

正式のタイトルは『中国近代の巨人とその著作ー曽国藩、蒋介石、毛沢東』研文出版2019年1月。これは、2018年3月12日に東京の一橋講堂で行われた講演会の記録である。一読して大変面白かったのだが、同時に三人の講師の学識の豊かさに関心させられた(写真は心光寺にある石仏。寛文元年1661年寄進の銘が確認できる。)。 第一報告は村上さんによる曽国藩だが、磯田道史さんの武士の家計簿にならって、曽国藩にまつわるお金の話である。曽国藩が科挙の試験に合格して上京するところから話を起こして

高口康太『現代中国経営者列伝』2017

 星海社新書である。中国の経営者の自伝を扱った本は中国の本屋さんでよくみかけるが、それを励志書籍とよび、かれらが最初に成功のきっかけをつかむことを第一桶金という、という知識の伝授から本書は始まっている。そして日本でもたびたび消息が断片的に伝えられる8人の経営者について、その成功物語をまとめている。まず本書について感じるのは、大変ありがたい労作だということ。ともかく知りたかった知識が満載である(写真は東京大学本郷キャンパス 2019年12月4日)。  本書に共感する点はもう一つ

譚璐美『近代中国への旅』2017

白水社2017。本書で著者譚璐美の生い立ちや、人生の一部が明かされる。お父さんの思い出も少し。でもいろいろな人との出会いが本書を彩っている。前編、朱鎔基との出会いがあるし、竹内宏さんが出てくる。いずれも通訳としての仕事を通じての接触のようだが、これらは通訳者として仕事を通しての接触だったようだ。後編、劉少奇夫人だった王光明が最後の床にあったときの面会の様子が語られるほか、大祖父の弟だとして全国政治協商会議副主席だった人物との面会の様子も語られている。著者の『中国共産党を作った

岡本隆司『中国の論理』2016

ちくま新書の『近代中国史』2013から3年後。中公新書である。正式タイトルは『中国の論理 歴史から解き明かす』。読み手を導いて、なんとなく中国の論理が分かったつもりにさせる岡本さんの文才はこの本でも健在で、大変分かりやすい(写真は東京大学医学部1号館 2019年12月4日)。 p.vi やはり現実は決して「一つ」ではない。けれどもその現実は認めがたい、だからこそ「一つ」であらねばならないし、「一つ」だといわねばならぬ。 p.9 儒教は中庸を尊び、神秘は例外。合理的なの

宮本雄二『習近平の中国』2015

著者は元駐中国大使。大使として実際に何度か習近平と会食の機会があり、習近平が2009年に来日したおりは、主席随伴員として全日程に同行した人。日本人として最も習近平を身近に見た人であることは違いない。当然だが、習近平と交わしたお話の内容などは一切書かれていないが、人物としての印象には触れている(写真は東京大学本郷キャンパス 2019年12月4日)。饒舌な人ではなく、人の意見を聞く、胆力のある人(7章p.160)。 冒頭は中国政治の構造が説明されている。8668万人の党員からの

遠藤誉『毛沢東 日本軍と共謀した男』2015

  新潮新書である(写真は諏訪山吉祥寺の山門。享和2年1802年築造)。  本書の最初の章で議論しているのは、毛沢東が現在の日本でいえば高校2年程度の学習で最終学歴が終わっていること。留学歴もない。そのコンプレックスが、知識人苛めにつながったというお話だ。示唆されているのは、北京大学図書館で働いたのは、大学受験資格を得るためだったというお話。なぜ図書館司書をしていたかという疑問があったので、この話はとても説得力がある。  そしてつぎのお話は最初のお話は1927年秋,蜂起に失

朱嘉明《中國改革的岐路》2013年1月

ここでは朱嘉明(チュー・チアミン 1950-)の1950年出生から1979年までをたどる。朱嘉明 《 中國改革的岐路》聯經出版 2013年1月,16-30 文革のところ四三派ー四四派の分裂のところはわかりやすい(写真はNTTドコモビル 2019年11月30日)。以下は内容のあらすじである。 嘉明の先祖は清朝の役人だった。頤和園の建設に関係していたのでお爺さんは頤和園の中で育った。ただ文革のときに家譜にあたるものをなくしてしまった。父親が1913年生まれ、母親は1917年

中国金融・資本市場 2013

 川村雄介監修『最新中国金融・資本市場』2013。中国の資本市場のハンドブックを作ろうとする試みは日本で何回かあって、そのなかで6年前に出された本書は刊行時点大変注目された(きんざい2013年)。とくに斎藤尚登氏執筆の第4章「中国の三板市場」。これは新興企業向けに2006年に稼働し始めた新三板市場の稼働後の情況を伝える貴重な報告だった。また編者の川村雄介氏執筆の第6章「中国債券市場の歴史と概況」は短編ながら、債券市場の問題点に視角を絞って議論しており有益だった。  同様の中国

譚璐美『中国共産党を作った13人』2010

新潮新書であるが、あなどれない本である。舌を巻いたのは綿密な取材だが、そのあとをこの本の中では自然にたどれるのがいい。どのような典拠に寄っているかがかなりしっかり書き込まれている。これは本書のよい点だ。取り上げている人物は、党を作った13人にとどまらない。日本との関係に注目するので、たとえば周恩来が日本に留学したときの顛末も書かれている(写真は吉祥寺経蔵の木彫(部分)である。経蔵は文化元年1804年の再建とされる。)。 13人のなかでも、李漢俊、張国燾、陳独秀、李達、周佛海

紺野大介『清華大学と北京大学』2006

中国の勉強を始めようとしたときに、たまたま出会ったのが本書だった。正式のタイトルは『中国の頭脳 清華大学と北京大学』朝日新聞社2006である。日本では中国の大学といえば、まず北京大学を思い浮かべることは、今でも多いと思うが、両者の関係は実際には逆であることを、詳述している。 今読み返すと、清華大学出身の朱鎔基と胡錦涛の履歴について詳しく述べていること、清華大学と北京大学、この二つの大学の歴史をかなり詳しく紹介していること、また浙江、復旦、南京、上海交通などの一流大学について