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中国に関連して生じた事実

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https://blog.goo.ne.jp/fu12345/e/7cc5e1ad373775c11668b88a748c64a6 政治的文化的側面を中心に年代順に採録。
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2019年10月の記事一覧

柯隆『中国「強国復権」の条件』慶応義塾大学出版会2018年4月

 中国人の経済学者が中国を語るとき前提にしている知識は何だろうか。それを考えるとき、時々戻るのが柯隆(クー・ロン)の著作だ。この本は慶應義塾大学出版会2018年4月の出版(正面奥に成城大学図書館)。  柯隆は1963年中国南京生まれ。1988年来日、愛知大学法経学部を経て名古屋大学大学院経済学研究科で学び、現在は富士通総研のエコノミスト。つまり日本式経済学にしっかり浸かった人であるためか、その議論の組み立てや問題意識はとても理解しやすい。でもやはり中国人なので、読んでいてあち

張博樹『六四以来の中国政治思潮(2015)』2019

 翻訳は張博樹著 石井智章ほか訳『新全体主義の思想史 コロンビア大学中国講義』白水社 2019年。元のタイトルは張博樹《改變中國:六四以來的中國政治思潮》2015年。翻訳で読んでタイトルと中身の違いに驚いた。改めて原題を見て、この翻訳のタイトルは誰がつけたのか、悪いことをしていると思った。この本の中身は、中国語のタイトルが示す内容だ(写真は成城大学成城池傍の緑陰)。  思想史というアカデミックなタイトルと、この本の内容には大きな齟齬がある。これを思想史として白水社が出版したの

中国現地法人の出口戦略と撤退実務 2014

『中国現地法人の出口戦略と撤退実務』(前川晃廣)2014。この本は一般的な出口戦略(事業からの退出方法)。きんざい(金融財政事情研究会)の2014年発行。発行当時、おりからの日中関係悪化を反映して時宜にかなった本だと妙に感心した。  ただ著者によると、外資に対する様々優遇措置が2008年前後に一斉になくなっている。2008年1月1日施行の企業所得税法により企業所得税率は25%になった。これまでは33%の基本税率が外資系企業は15%に優遇されていた。高度新技術事業に15

柴静《看見》2013年1月

 柴靜(チャイ・チン 1976-)の『看見(カンチエン =分かった、理解した、といった意味である。彼女がキャスターを務めていた報道TV番組のタイトルでもある)』廣西師範大學出版社は好きな本で繰り返し読んでいる。このニュースキャスターがなぜ生まれたのか。ということが語られ、それに引き付けられることもこともあるし、彼女が紡ぎ出して見せる物語、そこで語られるメデイアや事実の掘り下げ方の議論につい関心を寄せることもある。  彼女がこの本で取り上げているテーマから三つを強いてあげるなら

中国ビジネス必携 2012

 『中国ビジネス必携』(菅野真一郎)2012。出版は今から7年前。きんざい(金融財政事情研究会)の発行。中々おもしろいので改めて読む。 冒頭、中国が輸入代替(輸入を国内生産に置き替えること)を進めていること、外資の投資制限項目(国内で供給過剰とみなされているものなど)に指定される前の進出すること、系列にとらわれない新たな取引関係の可能性が、早期進出すべき理由として上げられている(第1章)。  たとえば、土地使用権の現物出資にどのような問題があるかを指摘している。評価にお

中国株式市場の真実 2007

 張志雄・高田勝己『中国株式市場の真実』2007年。本書は、非流通株の流通株化という股改(グーガイ 2005-06)と呼ばれる株式市場改革が行われた直後の2007年6月。ダイヤモンド社から発行された。著者は中国の証券専門紙の記者である張志雄と上海在住の長い高田勝己の二人。この本も時々読み返すのだが、いわゆる学術論文よりはよほど中国株式市場の真相に迫っているように思える。今回は1990年の市場のスタートから1999年5月、米軍機によるユーゴスラビアの中国大使館爆撃事件までを拾い