マガジンのカバー画像

ロシア関係

45
https://blog.goo.ne.jp/fu12345/e/7e3b3749b0b6bcb77991b41833f7a5f4 ロシアに関係するものをまとめます
運営しているクリエイター

記事一覧

ヘンダーソン ビジネスとしての民主主義救済 HBR Mar.2020

(解題) ヘンダーソンは事業展開にとって基礎になるのは、民主的政府による事業環境の公正・公平さの維持だとして、公正な法制度の担い手として、また不正競争を防止するなど市場の調整者として、また教育・医療など公共財の供給者としての、政府の役割の重要性を説いている。この話は、自由市場資本主義と民主主義とがどのような関係にあるかを論じるということでもある。ヘンダーソンは、公正公平な競争の維持、教育や医療の面で政府の役割を積極的に認め、将来の経営者たちに、民主主義的政府を支持する立場、過

Janos Kornai 1928-

コルナイ By Gocalo L. Fonseca Cited from History of Economic Thought  ハンガリーの計画経済学者。1960年代と1980年代、Janos Kornaiはおそらく東ブロックの最も著名な経済学者だった。 Janos Kornai (生名Janos Kornahuser)は、ハンガリ―の裕福なブルジョア家庭の息子だった。(しかし)その運命はナチによるハンガリー占領により大きく変わった。Kornaiの家庭は、一時

コルナイモデル 1985年9月

  1985年9月2日から7日 世界銀行、中国社会科学院などが共催して、重慶から武漢まで巴山輪号という船に泊まり込んで揚子江を下りながら、中国内外の経済学者が中国の経済改革について語り合う大規模な会議が行われた。歴史上「巴山輪會議」といわれるもの。海外からはA.Cairncross, J.Tobin, W.Brus(Poland), J.Kornai(Hungary)など、中国からは、薛暮橋,馬洪,劉國光,張卓元,吳敬璉などが参加している。手元の張軍《“雙軌制”經濟學:中國的

Russian's Invasion into Ukraine in Feb. 2022 ロシアのウクライナ侵攻

コロナの収束とロシアのウクライナ侵攻  コロナ第六波は、2022年2月第二週には収束過程に入った。表1は東京都の報告日による感染者数の推移だ。そのタイミングで*、世界を揺るがしたのが、ロシアによるウクライナ侵攻だ(2月24日侵攻公表)。武力で他国に意思を通そうとするプーチンが批判されるべきなのは当然として、ウクライナ側=ゼレンスキー政権に、ロシアに対し武力行使の口実を与えない選択肢はなかったのかは、現在も疑問として残る。 *なおコロナの感染者は、3月27日以降第5週から再び増

ウクライナ侵攻とルーブル価値の回復

(以下の記事内容は2022年5月1日に内容をチェックの上更新したもの)  ロシアによるウクライナ侵攻(2022年2月24日)により、ロシアに各種の経済制裁を科された。ところが制裁にもかかわらず、ルーブルの価値は、開戦当初こそ下落したものの、その後、急速に回復。3月末には、開戦時の価値を回復するに至った(表1)。仮にこれをルーブル価値防衛の戦いと名付けるなら、現在(4月末)の時点で、なおロシアはこの防衛戦に勝利を収めている。ではこの「勝利」はどのようにもたらされたのか?

ウクライナ、物価高騰の懸念と金利、為替、株式相場

 ロシアによるウクライナ武力侵攻とともに国際商品価格が急騰している。日本では、物価上昇を起こそうと超金融緩和政策がとられている(これは政府日銀の公式の説明である。しかし実際には、超金融緩和政策は、膨大な規模に膨れ上がった国債など公的債務の負担を軽減するため、金利を引き下げるためとみられている。)のに消費者物価が上がらない現象が続いていたが、この国際商品価格の急騰を受けて消費者物価が上がる気配が広がっている。しかし、パンデミックに加えてのウクライナ問題により経済の先行きには不安

ロシアのウクライナ侵攻と中国 2022/03/20

 ロシアによるウクライナ侵攻に対する中国の姿勢が注目を浴びている。2022年3月1日のウクライナ中国の外相電話会談で、ウクライナ側は中国の仲介を正式に要請。3月19日にはバイデン大統領は習近平主席とのTV会談で、ロシアへの制裁への協力を求めたとみられている。  しかし中国はもともと2月4日の習近平、プーチン会談や、2月27日の国連安保理決議への対応にみられるように、ロシアの安全保障上の懸念を理解する立場。NATOの東方拡大へのロシアの懸念を理解する立場である。 ところで

中ソ緊張激化と廬山会議 1958-60

魯彤 馮來剛 黃愛文《劉少奇在建國后的20年》遼寧人民出版社2011年 陽雨《“大躍進”運動紀實》東方出版社2014年 黃崢《風雨歷程:晚年劉少奇》人民文學出版社2018年 等  1956年にフルシチョフが行ったスターリン批判。その後起きたハンガリー事件に際して、ソ連が中国共産党の意見を求めたことは先に述べた。しかし両党の関係はその後次第に悪化した。  1958年にはソ連が中国領内にレーダー基地を設けることとと共同艦隊構想を示したことに、これは軍事的に支配するものだと

ウクライナ危機の原因としてのネオコン(新保守主義):馬淵睦夫さんの議論

 駐ウクライナ大使(2005年10月4日ー2008年9月1日)だった馬淵睦夫さんの議論 ウクライナ危機の背後にネオコン(neoconservatism 新保守主義:民主主義や自由主義などの理想のため武力行使を辞さない考え方)の動きがあることを指摘している(今回の2022年の戦争を論じていた2022年3月10日の動画がなぜか削除されたので、2018年4月23日の動画をリンクしておく)。  馬淵さんの議論は、2014年の展開に問題の根があることを指摘している。そこでよく言及され

ウクライナオンファイア Ukraine on Fire

 標題は、2016年に作成されたドキュメンタリー映画。Youtubeで検索して鑑賞できるが、いざ見ようとすると、繰り返し「年齢制限」とか「この映画はあなたに合わないかもしれない」とか「あなたに好ましくない映像が含まれているかもしれない」といった警告が出てくる。この度重なる警告を超えると、映像にたどり着ける。  あまりに警告が多いので、Youtube社としては見せたくないのかなと感じた。制作には著名な監督オリヴァー・ストーンが加わっている。この映画は、確かに焼け焦げた人体など子

民主主義の不可欠性:中国とロシア 2022/04/12

 民主主義とここで言うのは、言論・出版の自由、少数意見の尊重のもとでの多数決主義といった内容を指す。少数意見の尊重には、少数意見であっても党派を結成して自説を普及することを妨げられない、つまり少数党派の政治活動の自由の保証も含んでいる。ロシアや中国が、民主主義でないとされるのは、言論・出版の自由、少数意見の尊重、少数党派の保護が不徹底だからである。選挙制度で直接選挙であるか、立候補の自由が確保されているか、投票が無記名で本人の意思で公正に行われているかなども問題として指摘され

Starlink:ウクライナそして日本でも

 ロシアによる武力侵攻後、ウクライナは善戦している。要因としてアメリカを中心とする欧米諸国による軍事支援も大きいが、通信回線の維持が出来ていることも大きい。これには既存のシステムが攻撃を受けて破壊されたり障害を受ける中、Spaec X社の衛星インターネットアクセス「starlink」が開戦直後、ウクライナに供与されたことが大きいとされている(もともとウクライナはロシアの通信衛星に、国内のインターネット回線を8割依存。ロシアは侵攻と同時にこの回線を遮断。これを救ったのがstar

ロシアの侵攻の原因と停戦のため今すべきこと:ミアシャイマーの議論

 今日本の国内報道を見ていると、ロシアの武力侵攻は、許されないことで、ウクライナの戦いを支援しようといった報道一色である。そしてロシアの武力侵攻については、プーチンの個人的な願望によるものだと言った解説が、まかり通っている。しかしNATOがウクライナを支援することが、ロシアを追い詰めることを予測し、警告してきた人がいる。こうした警告を見るにつけ、戦争開始前に、戦争を避ける努力をバイデン=ゼレンスキーが真剣に行ったかに疑問を感じないではない。  その人とは、シカゴ大学の政治学部

2014年3月のクリミア併合Annexation of Crimia, 2015年2月のミンスク合意

 2014年2月22日親ロ派ヤヌコービッチ大統領への不信の高まりの中、ついにヤヌコービッチ大統領が失踪した。そこでウクライナ議会(ラーダ 最高会議)は5月25日の大統領選挙を決定。さらに大統領代行に(ラーダの議長であった)トウルチノフを任命、暫定政権を成立させた。ウクライナ革命は、ヤヌコービッチ大統領を倒すという大きな課題を達成した。これに対して、ヤヌコービッチは逃亡先の東部で、暫定政権をクーデータ政権と非難した(ヤヌコービッチは2013年EUとの政治貿易協定調印に踏み込まな