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趙紫陽(1919-2005)

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#吳敬璉

物価闖關失敗の責任問題と趙紫陽

 物価闖關失敗の責任問題と趙紫陽           福光 寛  ここで物価闖關は1988年春中国で取られた価格自由化措置のこと。失敗とは猛烈な物価高騰を招いたことを指す。この問題については以下の別稿ですでに述べている。なお上の写真は1988年4月山東威海でのスナップ。『趙紫陽軟禁中的談話』開放出版社2007年p.22より転載。  ここで問題にしたいのは、この「失敗」の責任を当時総書記だった趙紫陽に求める意見があり、経済学者のなかでは吳敬璉が繰り返し執拗に、これに言及してい

朱嘉明先生訪談録:1988-1989

朱嘉明『中国改革的岐路』聯經2013年1月pp.44-46, 48-50 ここでは1988年の価格闖關(訳注 価格自由化の加速全面化)政策の採用から1989年の六四事件の評価までを採録する。ここで繰り返しでてくるのは、吴敬璉への非難である。一般的には呉敬璉は自由化政策の旗を掲げ続けている人物とされるが、他方で趙紫陽の「価格闖關」政策への攻撃を執拗に続けていることでも知られている。しかし少し調べるとわかるのは、この政策は鄧小平が推し進めたものだ。であれば鄧小平の責任も追及するべ

コルナイの市場社会主義批判 1997(吳敬璉2013)

 東欧の市場社会主義、そして中国における「改革開放」をコルナイはどう評価したか。吳敬璉は、1997年のコルナイの著書から、市場社会主義への批判を読み取り、それを記録している。吳敬璉  馬囯川《重啓改革議程》香港中和出版有限公司2013年·123-126 p.123     吳敬璉:私が見るところ、国際学術界で、ハンガリーの経済学者コルナイは「市場社会主義」に対し、最も全面的で深い(深刻)批評(評論)を行った。コルナイは p.124   経済学素養の高い、また人文に造詣の深い