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【ショートショート】私が生まれた日に #シロクマ文芸部

「誕生日だったね、今日は」

目の前の中年オヤジが話しかけてきた。
口調は優しいが、信用ならない。私をこんな薄暗い部屋に閉じ込めているのだから。

頭でも殴られて連れて来られたのか、頭がボーッとする。いつからここにいるのか、記憶が定かではない。椅子に身体を縛り付けられていて逃げる事もできない。

「なんで私の誕生日知ってるのよ」

「そりゃ知ってるさ。君のことはなんでも知ってる」

「あなた誰なのよ?目的は何?」

「いや、君の誕生日のお祝いをしようと思っていたんだよ。でも、君が急に暴れ出すもんだから……。手荒な事をして悪かったね」

気持ち悪い。知らないオヤジに誕生日を祝われたくない。

「私はね、君のことがかわいくて仕方がないんだ。できれば元の君に戻って欲しい」

「私は私。何も変わってないわ。アンタなんか知らないし、関わりたくもない」

「参ったな。私の事を忘れてしまうとは。仕方ない」

中年オヤジが私に近づいてくる。

「ちょっと!こっちに来ないでよ。何する気?」

「やり直そう。シオリ」

「勝手に名前で呼ばないでよ!……わかった!アンタ、ストーカーでしょ?変態野郎!こんな事して何になるの?」

「そんな悲しいことを言わないでくれ。君はずっと私と一緒に暮らしていたんだよ。ちょっと、じっとしててくれないか」

そう言って中年オヤジは私に手を伸ばしてくる。

「やめて!触らないで!私に触ったら舌噛んで死んでやるから!」

中年オヤジは構わず私の首筋に手を触れた。

「やめてー!!」

「さよなら、シオリ」


(機械音)ピー。リセットされました。


「ふー。何だったんだ、一体。アンドロイド•パートナー社にクレームしないとな。
しかし、めちゃくちゃ人間ぽかったな、最後。丸2年持ったし、ま、いいか」

(716文字)


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