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二億斉藤 #毎週ショートショートnote

私の名前は斉藤権蔵、六十歳。

斉藤という苗字が多いことはよく知られているが、年に一度、評価会が行われることを知る人は少ないだろう。

斉藤姓の幹部が集まり、被評価者が何斉藤に値するのか評価する。評価対象年齢は六十歳で、まさに今年、私は評価される。私は何斉藤なのか。

好むと好まざるとに関わらず、六十歳になったら何斉藤か評価されてしまうのだ。この評価会は斉藤姓にとって呪いとも言うべきものかもしれない。

私は飲食業で起業し、ガムシャラに働いて一代で全国に百店舗を持つ規模にまで会社を成長させた。自分の子供三人はもちろんのこと、斉藤姓の人間を多く雇用し、斉藤の発展に寄与したと自負している。

今日は妻の安子からも「大丈夫よ」と励まされ、評価会の会場に来た。いよいよ発表だ。

「次は斉藤権蔵さん。
 百斉藤です」

え?たったの百?
私はその程度の斉藤だったのか。

「次は斉藤安子さん。
 二億斉藤です!すごい!」

安子!
そうか、おめでとう。ありがとう。

(410文字)


※こちらの企画に参加させていただきました

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