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非情怪談 #毎週ショートショートnote

とある大学のサークルの夏合宿。

「みんなで怖い話してさ、一番怖くなかった奴が晩メシの当番やるってのはどう?」

「別にいいけど。ミカ、どうする?」

「本気出していいなら」

「何、怖(笑)」

「ハハハ、決まりだな」

トオルがロウソクに火をつけて電気を消す。

「じゃ俺から。これは親父の弟に聞いた話なんだけど……」

全く怖くない話だった。他も皆似たようなもので、笑っている者もいた。

「怪談だって言ってるのにな、ったく。
ミカ、本気のヤツ、聞かせてくれよ」

ミカが立ち上がって話し始めた。

「小さい頃、目の前でお姉ちゃんが溺れた。私はそれを見捨てた」

「え?」

「でも、親切な人が助けちゃった。もう気まずくて気まずくて。結婚して家を出て行った時はほっとした。だから、出戻ってきた時は殺したくなった」

「な、何?え?」

「首を絞めようとしたら逆に殺されちゃった」

「!?」

「トオル、テメーのが一番怖くなかったから晩メシ作れよ!」

ミカはそれだけ言うとスッと消えた。

(410文字)


※こちらの企画に参加させていただきました

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