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【ショートショート】りんご箱を置き配するのやめてください #シロクマ文芸部

りんご箱が置き配されるようになって今日で三日目だ。注文していないのに。

りんごは嫌いではないが、食べようという気にはならない。恐怖が先立つ。自分で注文していない食べ物が届くと怖いのだと知った。

一体誰が何のために送ってくるのか。りんご箱には送り状が貼られておらず、送り主に心当たりはない。

結構大きなりんご箱なのだが、その割には重くない。それもなんか怖い。持ち上げるとりんごが2、3個コロコロと転がる感じがする。中はスカスカなのだろうか。それともりんご以外の何かが入ってるのか。

まさか爆弾とか入ってないよね?

どんどん怖くなってくる。
りんご箱は釘でガッチリ蓋をされている。釘抜きはとっくに買ってきて用意してある。いつでも開けられるが怖くて開けられない。開けた瞬間、ドカンとなったらどうしようと思ったらもう無理だった。
中がスカスカの大きなりんご箱が溜まっていく。

もうできることは置き配の現場を押さえることしかない。どうやら早朝に置き配しているっぽい。毎朝ドアを開けるとりんご箱にぶつかるからだ。三日連続。これも地味に嫌。もう耐えられない。誰の仕業か知らないが、明日は置き配させないと誓った。

午前零時を過ぎた頃からインターホンのモニターで家の前の監視を始めた。なかなか来ない。静かに時間が過ぎていく。眠気が限界に近づいた午前四時過ぎ、路上に忽然とバンが現れた。配達員が降りてきて、バンからりんご箱を運び出そうとしている。

これ以上、置き配させるものか!

私は勢いよく玄関のドアを開けた。
りんご箱を抱えた配達員はビクッと身体を震わせたが、朗らかに言った。

「どうも未来急便です。早起きですね。あなたにお届け物です」

私は一番聞きたかったことを聞いた。

「誰からですか?」
「未来のあなたからです」
「?」
「あれ?必要なかったですか?ピンと来るはずなんだけどな。今って2033年ですよね?」
「……2023年ですけど」
「やばー!10年間違えたー!」

私は今のところ怪しさしかない配達員をじっと見た。

「あのー言いにくいのですが、これまでお送りしたりんご箱、全部回収していいですか?10年早かったので」
「いや、むしろお願いしたいくらいです!全部持って行ってください」
「かしこまりました」
「いや、ちょっと待って。あなたの目的は何なの?」
「私の目的?そりゃお客様に荷物を届けることですよ」
「そんな白々しいことは言わなくていいから。なんで私にりんご箱を送ってくるのよ」
「それは未来のあなたに聞いてください。私は何も知りません」
「嘘よ。理由もなく引き受けるわけないわ。過去への配達なんて。あなたは知っているはず。そんな気がする」
「ははは、勘弁してください。私はこの仕事が気に入っているのです。余計なことを言うとクビになるので。それではまた10年後に」

それだけ言うと配達員はバンにりんご箱を詰め込んでどこかへ走り去ってしまった。

未来の私は一体何を考えているのだろうか。
そして、りんご箱の中身は何だったのか。
最初の一個が届いた時にさっさとりんご箱を開けていれば良かった。

未来の私が善人とは限らない。今から対策を練っておきたい。とりあえず、りんご箱を買いに行こう。私のことだ。何か思いつくかもしれない。

(1325文字)


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