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工程比率は清く正しく美しく(ソフトウェア分析)

ソフトウェア開発における工程比率はどのようになっているでしょうか。ウォーターフォール開発ではそれが開発計画の中心というべき指標です。アジャイル開発でも一定の比率があります。この工程比率には古(いにしえ)の言い伝えがあります。それは設計:製造:試験=3:4:3というものです。この古き言い伝えを信じて守り、開発計画を立てているプロジェクトが多いので、この言い伝えは強化されていき、やがて絶対守るべき神託となっています。たぶん。引用元:IPA ソフトウェア開発分析データ集 FAQ



工程比率とは

ソフトウェア開発にも開発作業を分解したいくつかの工程があります。ソフトウェア開発の工程についてはSLCP(Software Life Cycle Process)に定義されていますが、ここでは簡単に、要求分析が終わった後の、設計~製造(プログラミング)~試験(結合試験、システム試験)を考えるようにします。その後に運用・保守作業の工程がありますが、これも考慮外にします。つまり、設計と製造、試験の3工程を考えていきます。

この3個の工程に掛ける工数の比率はどれだけでしょうか。この工程比率は一定の比率になるのでしょうか、そこには法則があるのでしょうか。もちろん、ソフトウェア製品の一品一品ごとに清く正しい工程比率を考えるにしても、何らかの標準となる工程比率はあるのでしょうか。

この工程比率がどの程度になっているのかを見ていくことにします。

工程比率の古き言い伝え「3:4:3」

工程比率については、古き言い伝えがあります。COCOMOのものがあります。そこでは概略、設計:製造:試験の比率は3:4:3というものがあります。
例えば、1億円の開発仕事があった場合、3000万円を設計に、4000万円を製造に、試験には3000万円をかけるというものです。
実際は製造がもう少し多いのですが、この3:4:3の法則が一般的に広まり、信じられています。

これを見て、どう思うでしょうか。試験に思った以上にお金が掛かっているとか、製造は案外少ないというような感想があるかもしれません。外の人は特にそう思うでしょう。でも中の人、側の人間には実感があるかと思います。試験では結局は、これくらいのお金が掛かるでしょうし、設計も多くしておいた方がいい、この結果、製造工程に掛けるお金は相対的に少なくなります。

ここで注意することがあります。この3:4:3の法則が長い間流布し、信じられたため、多くの人が、この法則で見積を行い、プロジェクト計画を立てるようになりました。この結果、3:4:3の法則は強化され続け、やがて事実となり、真実となり、紙の言葉、神託となりました。注意してください。

工程比率は変わりゆく

工程比率は新規開発か改良開発(既存開発、派生開発)で変わり、ウォーターフォールかアジャイルでも変わり、ソフトウェアの対象でも変わり、このように色々な状況で変わります。
なお3:4:3の法則は、ウォーターフォールで新規ソフトウェアを開発するときの工程比率です。

ソフトウェア開発は時代とともに変わっています。フルスクラッチで開発する時代から、パッケージソフトウェアを利用して開発する時代に来ています。この結果、製造工程の比率は下がり、試験工程の比率は上がるでしょう。

ウォーターフォール開発からアジャイル開発になる時代変化でも工程比率は変わっていきます。アジャイル開発では工程比率を定量的に管理することは難しいでしょう。アジャイル開発での工程比率はプロジェクトごとに違い、一定の比率がないかもしれません。

このように時代が変わっていくと、製造工程の比率は少なくなってくるでしょう。実際、1:1:1の比率になっているデータもあります。
実際の数値はIPAのソフトウェア開発分析データ集などを参考にしてください。

清く正しく美しい工程比率

工程比率はプロジェクト計画を立てるときの柱になります。荒っぽく言えば、予算を工程比率で分配し、それぞれの予算でその工程を運用する計画を立てることになります。だかr工程比率は重要です。ゆめゆめ、3:4:3の法則だけを信じるのではなく、他のものを参考にして、そしてプロジェクトに性質に合わせて、清く正しく美しい工程比率を導き出してください。

ということで今日の結論。「工程比率は自分で決める」以上です。

引用:ソフトウェア開発分析データ集2022 | 社会・産業のデジタル変革 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

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