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知覚狭小化について: LとRを聞き分けられますか?=サルの顔を見分けられますか?

学校教育の場でのマスク着用強要や行動制限、乳幼児ワクチンなどを考えるにつけ、とくに子供達がコロナ騒動の大きな犠牲になっている事に心が痛みます。

子供の好奇心の強さは、新しい事を学習する能力の現れでもあります。大人が必ずしも子供より優れているとは限りません。例えば言語学習能力です。海外で暮らす日本人家族の中で、親が現地の言葉を学ぶのに苦労しているうちに、子供達があっという間に現地の言葉になじむようになるというのも珍しい話ではありません。人間は成長するにつれ全ての能力が上がっていくとは限らず、むしろ能力によってはそれを捨てていくからこそ、環境に適応できるという面もあるのです。子供の方が大人よりも優れている能力すらあるという事です。

人間の乳児は生まれつき様々な刺激を感知する能力を持っています。しかし年齢が上がるにつれ選択的に認識を狭め始め、それにより社会的、文化的に適応するようになります。この過程で、常に使われる神経経路は強化されるのに対し、使われていない神経経路は効率が悪くなっていきます。これはシナプスの刈り込みを含む神経可塑性の結果です。「知覚狭小化」は脳の発達過程において、通常認識しない刺激を認識する能力が弱まる現象です。このプロセスは、感受性の高い時期に最も顕著に現れます。

人間の乳児は多様な言語の発音の違いを聞き分ける能力を持っています。生後6ヶ月未満の乳児は日本語や外国語を問わず、様々な発音の違いを区別して認識できます。例えば、日本人の乳児でも生後6ヶ月頃まではLとRの発音の違いや中国語特有の多様な発音さえ自然に聞き分ける事ができます。しかし、乳児が成長し脳が発達するとその能力は急速に失われていきます。非母国語の音素を区別できなくなり、母国語に反応するようになるのです。この知覚の狭窄現象は生後1年の間に生じます。生後6〜8ヶ月の乳児は非母国語の音を聞き分ける能力が高いのですが、生後10〜12ヶ月の乳児にはこの能力がすでに低下しています。
Kuhl et al. (2006) Infants show a facilitation effect for native language phonetic perception between 6 and 12 months. Dev. Sci.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1467-7687.2006.00468.x

幼児期では、言葉を学習するための脳の回路が開いており、文法書や辞書無しでも、ゼロから言語情報を頭の中で体系化していると言えます。大人が外国語を学習するには、このやり方では到底難しいでしょう。例えば、日本語のそれぞれの方言にも特有の単語や文法があるはずですが、子どもの頃から親しんだ方言は単語や文法を意識せずとも理解して話せるものです。反対に自分の馴染んでいる方言を文法的に説明せよと言われても難しいでしょう。

6ヶ月児、9ヶ月児、大人に、それぞれ人間の男女およびサルの顔を見せ、どの顔を覚えやすいかを比較した研究があります。
Pascalis et al. (2002) Is face processing species-specific during the first year of life? Olivier Science
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12016317/

それぞれの顔写真は二枚セット。一枚は初めて見せるもの、もう一枚は以前に見知っているものです。個体差が見分けられた場合、初めて見た方をより長く注視する傾向があり、反対に見分けがつかない場合には二枚の写真を見る時間に差が出ない事が知られています (一対比較法)。この手法を使って実験したところ、生後6ヶ月の乳児はサルの顔を見分ける事ができましたが、生後9ヶ月の時点ではすでにサルの顔を識別する事はできませんでした。ただし、サルの顔に名前をつけて、生後9か月に再試験を行ったところ、サルを識別する能力は維持されていました。この研究から分かるように、6ヶ月児の認知能力は驚くべきものです。また名前を付けて個性化されるとその後の親しい顔の認識に役立つという事も別途分かりました。知覚狭小化においては経験もまた重要なのです。

「共感覚」とはある感覚への刺激が別の感覚にさらなる刺激を呼び起こす状態です。人によっては音を聞く際に色や形のイメージが浮かんだりする事が知られています。乳幼児は大人に比べて感覚領域間のシナプス結合の数が多いため、自然に共感覚の経験を持っています。多くの人では、自然な発達の過程で共感覚は知覚狭小化によって消滅するという研究もあります。
Spector et al. (2009) Synesthesia: a new approach to understanding the development of perception. Dev Psychol
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19210000/

小さな子供が見ている世界は大人が見る世界のミニチュア版ではありません。むしろ成長する事により見えなくなってしまう世界もあるのです。そして、そうした世界を体感できる貴重な時期を大人は誰もがかつて経験してきたはずです。乳幼児の脳は、スポンジが水を吸うようにあらゆる知識を吸収します。大人が想像できないほど、赤ちゃんは世界を豊かに感じながら、あらゆる環境からの情報を通して世界を学んでいます。まだ言葉を話せないような時期の乳児であっても視覚や聴覚など五感を使って世界を体験し、そうした中から自然に学習して成長していくものなのです。

ワクチン接種を含め、コロナ騒動にまつわる多くの事が子供達の健全な成長を阻害するという虐待にも繋がっています。その影響はこの先何年、何十年にも渡って続き、現在見えていない深刻な害も徐々に顕在化してくる事でしょう。学校や教科書から学ぶものだけが勉強ではありません。人間の表情を隠すマスク社会も、子供から言語や表情、感情を学ぶ貴重な機会を奪う可能性があります。多感な時期は限定的であり、その時期を過ぎると学習には大変な労力を要するかもしれません。コロナ騒動によって歪められた世界の状況から子供達を少しでも守り、彼らの健やかな成長を願います。



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*記事は個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。


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