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無症状のPCR陽性者からの感染は0だった (Nature Communications誌に発表された論文から)

最初に新型コロナウイルスの感染が報告された中国の武漢。武漢でのロックダウン後の約一千万人の大規模PCR検査の結果、無症状のPCR陽性者からの感染は「0」だったという報告です。この研究は2020年の5月から6月に行われたもので、Nature Communications誌に論文が発表されたのは2020年の11月です。

中国・武漢の約1,000万人の住民を対象としたロックダウン後のSARS-CoV-2核酸スクリーニング


Post-lockdown SARS-CoV-2 nucleic acid screening in nearly ten million residents of Wuhan, China
Cao et al. 2020 Nat Commun
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33219229/

武漢では、2020年1月23日から4月8日までの間、COVID-19の厳格な管理措置が実施された。制限解除後の感染の有病率を推定することで、ロックダウン後のパンデミック管理に役立てることができる。ここでは、2020年5月14日から6月1日にかけて、武漢で行われた市全体でのSARS-CoV-2核酸スクリーニングプログラムについて述べる。

新型コロナ感染歴のない986万5,404人を対象としたスクリーニングで、新たにコロナ感染症が確認された症例はなく、無症候性の陽性症例が300例確認されました。検出率は1万人辺り0.303人です。PCR陽性者の近親者1174人を追跡したところ、全員がCOVID-19の検査で陰性でした。

スクリーニングに参加した新型コロナ感染歴のある患者は34,424人。COVID-19そのうち、107人が再び陽性となり、再陽性率は0.310%でした。

症候性の患者に比べて、無症候性の感染者は一般的にウイルス量が少なく、ウイルス排出期間も短いため、SARS-CoV-2の感染リスクは低くなる。今回の研究では、無症候性陽性者の検体を用いてウイルス培養を行ったところ、生存しているSARS-CoV-2ウイルスは検出されなかった。また、無症候性陽性例の近親者はすべて陰性であったことから、今回検出された無症候性陽性例は感染の可能性が低いことがわかった。


PCR検査のために、2つの標的遺伝子 (オープンリーディングフレーム1ab (ORF1ab) とヌクレオカプシドタンパク質(N) ) を同時に増幅しています。Ct値が37未満の場合を陽性とし、Ct値がない、またはCt値が40以上の場合を陰性としています。Ct値が37から40の範囲にある場合サンプルは再検査されました。再検査の結果、Ct値が40未満であり増幅曲線に明らかなピークが見られた場合は陽性、それ以外の場合は陰性と報告されました。陽性が出にくくなるような作為的な基準にしているという事はなさそうです。ウイルス培養は無症候性の陽性例と再陽性例の全てで陰性であり、検出された陽性例には「生存ウイルス」が存在しませんでした。


一般的な風邪の諸症状は、咳、くしゃみ、鼻水、発熱、等です。こうした症状はウイルスが起こすというよりむしろ免疫系による生体防御応答です。症状があるという事はウイルスが体内に大量に繁殖し、それに対抗する防御応答が起こっているという事です。咳は肺や気道からウイルスを含んだ空気を強制的に排出させて体から追い出そうとする反応ですが、ウイルスはこの経路を利用して周囲に拡散し感染を広げます。言い換えると、症状がある場合にはウイルスの量が多く、またウイルスを拡散させやすい。反対に症状が無い場合にはウイルスの量が少ないか存在せず、またウイルスを拡散させにくいという事でもあるのです。

無症状の方への大規模PCRスクリーニングが行われたのは歴史的にもコロナパンデミックが初めてです。感染症において無症状はこれまでの扱いなら「健康体」だったはずです。感染症で大事なのは本人に症状があるか、そして他人に感染させるかです。無症状のPCR陽性という事は本人には症状無し。既にウイルスに免疫で打ち勝った後の場合もあるでしょう。あるいは単にウイルスの死骸のかけらが喉の奥に付着しているだけの状態かもしれません。その方が周りに感染させないのであれば、そもそも問題は無いのです。

PCRスクリーニングを改善するとすれば、PCRスクリーニングを「症状のある人」に限定する。新型コロナ、他のコロナウイルス 、インフルエンザウイルス等を「区別できる方法で」PCRを行い、さらに新型コロナのPCR陽性であった場合はそれぞれの方に「Ct値を数値で報告」する事でしょう。それならばPCRの結果からも意味のあるデータを取る事ができるでしょう。

この論文の結果、つまり「0」人というのは正直なところ極端な結果にも見えます。PCRのキットや運用によっても結果は変わってくるかもしれませんし、Ct値の設定や運用によって恣意的に陽性者を増やしたり減らしたりできる可能性も否定は出来ません。またウイルスの株によっても結果は違ってくる可能性もあります。それでもやはり無症状のPCR陽性が怖いものではないという事が大規模な研究の結果として発表されたのは重要であると言って良いでしょう。

若者はコロナウイルスに感染しても重症化する事は稀ですし、亡くなる事もほとんどありません。「高齢者に感染させる可能性があるから」という理由で若い世代にワクチン接種をさせるのは改めて意味がない事に思えます。


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*記事は個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。


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