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病気とホメオスタシス (生体恒常性)

「ホメオスタシス (生体恒常性)」 とは生物の持つ重要な性質の一つで、環境の変化を受けても生体の状態を一定に保とうとする性質を意味します。例えば体温について。私達は意識せずとも、暑い時は汗をかいて体温を下げ、寒い時は体を震わせて体温を上げます。これ以外にも、体にはもともとミクロからマクロのレベルまでの自己修復能力が備わっています。体感できないミクロのレベルではDNA修復などがあり、このDNA修復が失敗すると遺伝子に突然変異が生じ、癌の原因ともなります。目に見えて体感できるマクロレベルでの自己修復能力としては、例えば切り傷、火傷や骨折の治癒などがあります。

皮膚の細胞は通常はそれぞれ隣同士が接触しており、接触阻害の仕組みによって過度の増殖が抑えられています。怪我などによって組織が損傷した場合、この増殖抑制のブロックが外れ、細胞が速やかに増殖し始めます。そして切り傷を埋めるように両側から増殖した細胞同士が出会うと再び増殖抑制のブロックがかかり、傷口の修復を終える頃には少し傷口が盛り上がった状態になります。怪我の際に塗る傷薬は主に感染症を抑える目的であり、傷の修復自体は体が本来持つホメオスタシスの仕組みによるものです。

骨折した際にはギプスなどで骨を固定したりしますが、骨が繋がる事自体も体のホメオスタシスによるものです。骨にはもともと大きく分けて2通りの役割があります。1つはイメージしやすいものとして骨格としての働きです。そしてもう一つの重要な役割はカルシウムの貯蔵庫です。脊椎動物では細胞質のカルシウム濃度は低濃度であり、カルシウムが細胞内に流入することで細胞内の情報伝達機構を制御する仕組みがあります。カルシウムシグナリング用のカルシウムが枯渇すれば、それはすなわち生命維持の危機に直結します。破骨細胞と造骨細胞が共同作用する事により、毎日貯蔵したカルシウムを随時取り出せる仕組みになっています。このように骨は毎日少しずつ溶けては繋がっているようなものなのです。骨折が治るのはこうした細胞の共同作業の副産物でもあります。

免疫系の主な働きは外敵からの防衛ですが、体内の癌細胞と戦う免疫細胞も存在します。代表的なものがNK (ナチュラルキラー) 細胞です。NK細胞はB細胞やT細胞のように特定の抗原を認識して対象を攻撃するわけではありません。また1種類の受容体だけを使って敵を判定しているのではありません。NK細胞の癌細胞の判定法は、標的細胞表面における目印のパターン認識です。NK細胞は、癌細胞に発現しやすいタンパクを認識する活性化受容体 (KAR) と、正常細胞が強く発現するタンパクを認識する抑制性受容体 (KIR) を備えています。NK細胞はKARからのプラスの信号とKIRからのマイナスの信号を総合評価する事により、自己性を喪失した細胞を癌のような異常細胞として識別します。そしてNK細胞はパーフォリンで散弾銃のように標的細胞を穴だらけにし、さらに標的細胞の機能を停止させるためにタンパク分解酵素グランザイムを打ち込みます。実際、癌細胞は体内で毎日のように発生していますが、NK細胞を中心とした免疫系によって排除され続けています。こういった免疫系の監視機構もホメオスタシスに大きく関わって来ます。

オートファジーは酵母からヒトに至るまでの真核生物に見られる細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つですが、ホメオスタシスに重要です。オートファジーは1992年に大隅良典先生の研究室が出芽酵母で初めて観察しました。auto-はギリシャ語で「自分自身」、phagyは「食べる事」で、オートファジーの直接の意味は「自食」です。オートファジーの生体内での役割は大きく分けて2つあります。1つはタンパク質分解による細胞の品質管理で、異常なタンパク質や不良ミトコンドリアを分解したり、細胞質内に侵入した病原微生物を排除したりします。もう1つは飢餓状態という緊急事態から生命を守る働きです。生体が飢餓状態に置かれて栄養が枯渇した場合、細胞はオートファジーによる自食により自分自身のタンパクを分解して、栄養源としての必須アミノ酸を取り出します。例えばマウスを一晩絶食させると、肝細胞でオートファジーが起きる事が知られています。オートファジーの仕組みは基本的に異常なもの、余剰なものから優先的に消費しますので、栄養飢餓状態が一時的ならばオートファジーは体の浄化にも働くでしょう。

生体には他にも様々な緊急事態回避機能があり、その働きによって体の一部を犠牲にしてでも命を守ろうとする事があります。例えば雪山の遭難などの際に凍傷で指を失うのも、ただ指が冷たくなったからではありません。手足の末端には体温調節に貢献する特別な血管が存在しています。「動静脈吻合(どうじょうみゃくふんごう:Arteriovenous Anastomoses、以下AVA)」と呼ばれる血管です。通常、心臓から送り出された血液は動脈を通って毛細血管へと流れ、栄養や酸素を組織へと運びます。そして二酸化炭素や老廃物を含んだ血液は、毛細血管から静脈を通って再び心臓へと戻されます。AVAは毛細血管を介さず動脈と静脈を直接つなぐ血管です。AVAの役目は体温調節です。手足の指、鼻、耳からは多量の熱が空気中に放散されるので、寒さを強く感じるとAVAは収縮して末梢への血流を減らし、そこから熱が逃げるのを防ごうとします。冬に手先や足先が冷えて困るのもAVAの働きであり、末端を犠牲にして命を守ろうとしている反応なのです。その極端な例が凍傷に当たります。AVAが収縮するのは体幹の体温保持を優先するためですので、手足の冷えを防ぐには手足を温めるだけではなく、体幹を温める事が効果的です。

さらに生物における極端な緊急事態回避システムの例としては、節足動物やトカゲなどに見られる自切があります。これは、外敵から逃避し、身を守るために肢や尾等の生命活動において優先順位の低い器官を切り離す行為です。このためトカゲの尻尾はあらかじめ切り離しやすい構造になっており、切断面は筋肉が収縮し出血も抑えられます。切断後再生したトカゲの尻尾に骨は無く、代わりに軟骨により支えられます。また、哺乳類ではリスも自切を行う事で知られています。リスの尻尾は取れやすい構造になっており、敵に襲われた時などには尻尾を切り離す事があります。しかし、トカゲと違いリスの場合は取れた尻尾は一生再生しません。リスの尻尾は抜けやすいので、決して乱暴に掴んだりしてはいけません。

西洋医学では病気の症状が治療の対象となりますが、体が自己修復をしている過程が症状として現れる事もあります。症状を取り除く薬が病気や怪我を治しているとは限りません。免疫系やホメオスタシスを損傷するような「薬」を使用した場合、逆に薬が病状を悪化させてしまう事もあり得ます。私達は自分の体を自分自身で治す作用を日常的に使っています。意識せずとも、私達の細胞、組織、臓器は生きるための努力を毎日続けています。壊す作用よりも治す作用の方が強ければ、本来は体は回復する方向に向かうはずなのです。

コロナワクチン後遺症の患者が医者に相手にされず医療機関をたらい回しにされる話もしばしば聞きます。つまり、我々は未知のリスクのあるコロナワクチン接種を勧められながらも、実際に有害事象が起きた際にはそれは認められないという歪んだ医療体制の中にいるわけです。免疫系、血管系、生殖系、心臓、脳。このどれもが私達の生命線であり、またコロナワクチンの後遺症として特に報告されている対象でもあります。事実としてコロナワクチンは最新の医学の産物です。こう考えると、そもそもワクチンとは、薬とは、医療とは何なのか。立ち止まってもう一度よく考え直す必要があるのではないでしょうか。

「自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない」「依頼されても人を殺す薬を与えない」これらは医療従事者が従うべき大前提とも言えるヒポクラテスの誓いにある言葉です。では今回のコロナ騒動のように、政府や公的機関が突如として未知の毒性を持つ可能性が高い「医療」を人々に強要し始めた場合、どのような対応を取るのが正解なのでしょうか

最終的に自分の体と命に一番の責任を持つ必要があるのは自分自身です。自分の命は他人任せにすべきではないのです。「誰もが自分自身にとっての医者であり、科学者である必要がある。」このコロナ騒動を通し、私は改めて強くそう思います。



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*記事は個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。


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