汗腺のスパイクタンパクとmRNAワクチン後皮膚疾患: J Dermatologyに掲載された論文から
汗腺は皮膚にある汗を分泌する腺であり、汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺の2種類があります。アポクリン腺は毛穴に開口部があり、アポクリン腺から出る汗は脂質やタンパク質などを多く含んでいます。霊長類も含めてほとんどの哺乳類は基本的に全身が体毛で覆われており、アポクリン腺はその体毛に付随しています。一方、ヒトではエクリン腺は全身の皮膚に分布します。エクリン腺の働きは汗を気化させて、体温を下げる事です。エクリン腺が発達しているのは哺乳類の中でも人間の持つ際立った特徴です。
図1は私が描いたものです。ヒトが進化の過程で体毛を失った理由の一つは体温調節のために「汗をかく能力」を獲得するためだったと考えられています。実際、体温を下げるために汗の仕組みを採用している動物は非常に珍しく、哺乳類でもヒトとウマくらいですが、この仕組みにより長時間の激しい活動の際でも汗で体温を下げる事によって「オーバーヒート」を避ける事ができるのです。これはヒトの持つ特殊能力の1つであり、本来ヒトは哺乳類の中でも屈指の長期離ランナーでもあります。
コロナワクチンの大量接種開始以降、「mRNAワクチン後皮膚疾患 (post-mRNA vaccine dermatoses (PVD))」が多数報告されています。PVDには、注射部位の局所病変や既存の皮膚疾患の増悪、ヘルペス感染などの免疫不全状態に伴う皮膚疾患などが含まれます。論文の著者である高知大学名誉教授佐野栄紀先生のグループは以前にもPVD症例からコロナワクチン由来のスパイクタンパクを検出した論文を発表しましたが、今回の研究はスパイクタンパクと皮膚疾患への関わりのみならず、いわゆるコロナワクチンにおける「シェディング」現象の機序についての示唆を含む重要なものと考えます。
53歳の女性は、ファイザーコロナワクチン3回目の接種後、腕や脚に無症状の小さな小水疱と四肢の赤みを帯びた丘疹を呈しました (図2左、中央)。病状は15ヵ月間持続し、その間病変は次々と繰り返し出現し、一部は小さな潰瘍を生じました。最終的に自己治癒しましたが、皮膚には褐色の変色が残りました (図2右)。
小水疱は汗管に繋がっていましたので (図3)、水疱は汗によるものと考えられます。
小水疱と繋がった汗管は組織学的に表皮内で異常に拡張していました (図4左)。この症状は汗疹と診断されました 。汗管が存在する角質層と有棘層で免疫蛍光染色によりスパイクタンパクが検出されました (図4中央、スパイクタンパクは緑色に染まっている)。抗体はS1サブユニットに対するものです。ヌクレオキャプシドに対する抗体では染色されませんでしたので、スパイクタンパクはコロナウイルス感染によるものではなく、ワクチン由来と考えられます。
角質層におけるスパイクタンパクは、エクリン腺のマーカー (カルサイノエンブリオニック抗原 (CEA) と共存していました (図5)。これはスパイクタンパクがエクリン腺で発現している事を意味します。染色された細胞は1つだけではなく、実際、スパイクタンパクはエクリン腺に沿って広く分布しています (図6)。これは、エクリン腺の1つの細胞にコロナワクチンのmRNAが偶然取り込まれたというよりも、汗の通り道に沿ってスパイクタンパクが移動し、その途中で汗腺の細胞に取り込まれていった事を意味するのではないでしょうか。
ワクチン接種後にこの患者に発症した汗疹様皮膚疾患は、エクリン腺に発現したスパイクタンパクによるものであり、スパイクタンパクが汗腺や表皮を傷付け、それが水疱となって現れた可能性があります。あるいは原因と結果が逆で、水疱としての汗の滞留が起こったからこそ、汗腺細胞にスパイクタンパクが取り込まれやすくなり、検出できたのかもしれません。水疱を生じなければ、スパイクタンパクはそのまま体外に排出されていたのではないでしょうか。
患者は3回目接種後、皮膚症状以外にも継続的な頭痛、ブレインフォグ、疲労感、微熱も訴えていました。これはスパイクタンパクが神経系などに影響を与えた可能性があります。さらにはスパイクタンパクは接種後1年以上もの長期に渡って患者の体内に残存している事が確認されました。著者らはワクチンRNAから逆転写されたDNAか、あるいはワクチン内の汚染DNAを介してスパイク遺伝子がゲノムに取り込まれた可能性を指摘しています。
コロナワクチン接種者から他者に副作用を伝播する現象は便宜的にシェディングと呼ばれており、実際多くの人が被害を訴えています。本来の「ワクチンシェディング」とは、生ウイルス (ウイルスそのもの) を使ったワクチンを打った人間がウイルスに感染してしまう事によってウイルスを周囲に撒き散らすという現象です。そういった意味では、そもそも生ウイルスを用いていない遺伝子ワクチンによってワクチンシェディングが起こると言う事自体が奇妙な話です。
また、コロナワクチン接種者特有の体臭を指摘する声もあり、その匂いの代表的なものはケミカル臭と腐敗臭です。コロナワクチン接種者が何らかの有害物質を分泌し、それが周囲に影響を及ぼしているのではないかと考えられます。コロナワクチン接種者からVOC (揮発性有機化合物) を検出している報告もあり、シェディングを介在する物質の候補の1つはアルデヒドです。さらにはワクチンを接種した家族からシェディング被害を受けた方が、ヌクレオキャプシドに対する抗体はできていないにも関わらず、スパイクタンパクに対する抗体を持っていたという報告もありました。スパイクタンパクのような高分子膜タンパクでもエクソソームに取り込まれれば呼気や汗として分泌する事も可能であり、ワクチン接種者はスパイクタンパクを分泌している可能性すらあるという事です。
この佐野先生の研究は、エクリン腺にスパイクタンパクが局在し、しかもエクリン腺に沿って広がる場合がある事を示しています。そして、免疫染色の結果は細胞から細胞へとスパイクタンパクが「伝播」したようにも見えます。これはワクチンmRNAが偶然エクリン腺の細胞の1つに取り込まれたというよりは「汗腺を利用して移動した」と考える方が自然でしょう。実際、膜タンパクもエクソソームを利用して細胞から細胞へと移動する事があります。そしてエクソソームは呼気や汗を通して体外にも排出されます。その際には「人から人へと伝播」しても不思議ではありません。患者は汗が水疱として蓄えられて症状が出たために目視され、解析されました。しかしながら、もしこのように水疱にならずに体外に汗を揮発させていればスパイクタンパクを外部に放出していたかもしれません。むしろその方が一般的な状態である可能性すらあります。
これは私の考察になりますが、エクリン腺で観察されたスパイクタンパクの蓄積は「スパイクタンパクをシェディング仕損なった」症例であり、その結果ワクチンシェディングの中間体を観察できたものではないでしょうか。これは、水疱を形成せずに、有害物質を排出する経路として汗を利用して、積極的にスパイクタンパクを体外に放出している人が存在するという仮説にも繋がります。分解できなかった毒物を体外に排出するのは体の自然な浄化作用とも言えます。佐野先生の研究結果はシェディングの作用機序を考える上で重要な示唆を与えてくれます。元気に見えるワクチン接種者の周りで体調不良者が続出するメカニズムのヒントとなるでしょう。
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