すべからく『愛』を謳え 第五話 『少年』
すべからく『愛』を謳え 第五話『少年』
①葛西さおり
「三点で千二百八十円です」
材料費の高騰で、ここのケーキ屋も、とうとう値上げに踏み切ったようだ。時勢柄それは致し方ないとは理解するものの、やはり給料据え置きの契約社員からしてみれば、そこ百円、二百円の値上げでも辛いのが本音。
「あ、いつも来ていただいてらっしゃるので、おまけ、つけておきますね!」
女子大生だろうか? 小柄で愛嬌のあるバイトらしい女の子が、マドレーヌ二個をそっと包装箱の中に忍ばせた。
「あ、あ