日本代表を強くするために必要なのは物語。20240711

人を変えるの環境という記事を書いた翌日に
人を変えるのは人、という記事を書きます。(結局同じ)

日本代表が強くなるために。
別にローイングの日本代表ではなくてもいいし、
大学生が強くなるために、でも何も変わらないのだけど。

コーチをしていて強く思うのは、
「自分と同じだと思っていた人が良い方向に変化すると、人は強く影響される」
ということです。

例えば、
「俺達、ばかだから」って言ってたはずの「俺達」の一人が
急にテストで高得点を叩き出すと、
俺にもできるはずだ!って
強い行動欲が生まれるように思います。

逆に言うと、
「あいつは頭が良いから」って思ってた人が、
より高得点を出しても、
「あいつは頭が良いから」になって、
どうしても行動に繋がらない。別枠になってしまう。

「あの人ができるんだから、自分にもできるはずだ」っていう
対象者だけが、その人に強く影響を与えることができます。

その枠、対象者の線引きは人によって異なり、
例えば、幼い子供なら
「大谷選手にできるんだから、自分にもできるはずだ」って思います。
でも大人になってくると
「大谷選手はすごい」ってなって、
どうしても「自分にもできる」とはなりにくい。
どうしても別枠作り、言い訳作りが上手くなる。

自分の場合も、大谷選手の活躍を観て、
「海外で戦う日本人、かっこいい、俺も頑張ろう」とはなりますが、
「俺もあれだけ活躍できる」とはなかなか思えません。

いわゆる「ビリギャル」が多くの人に影響を与えるのも
共感しやすいから
ではないでしょうか。
別枠が、言い訳が容易に作れないからじゃないでしょうか。

本題、ボートの話に入ります。

世界選手権やオリンピックで優勝する選手を観て、
「俺もできる!」ってなかなか思えないのは、
共感できないから、別枠を作っちゃうから、
要は「あの人は頭が良いから」という言い訳を作ってしまうからです。

中野が学生と一緒にボートを乗って、
どれだけ良いローイングを見せても
多くの学生には
「中野さん違いますね」
「オリンピック選手は違いますね」
って思われるだけで、あまり影響を与えません。
唯一与えられるのは、「中野さんにできるなら、自分にもできるはずだ」って
思ってくれる選手だけ。
そういった選手はめちゃくちゃ伸びます。
だって中野にだってできたのだから。

だから中野もできるだけ共感してくれるように
自分も学生と同じであることをできるだけ強調します。
もっと失礼になってくれよ、敬うなよって思います。

日本に足りないのはトップ選手の共感できるストーリーです。

同じように生まれ、同じように育ち、
だけどとんでもなく努力した、
とんでもなく頑張ったから世界で勝てるようになった、
そんな共感できるストーリーを持った選手を
どれだけ周りに作れるか。

ヨーロッパは地理的に
そういう選手が周りに生まれやすく、
日本の場合、そういった選手は
他競技で探すしかありません。

少なくとも高校以降からボートを始め、
身長も低く、
どちらかというと胴長の日本人体系で、
割と同じような生活をしているのに
めちゃくちゃ頑張って世界のトップになった人。

そういう選手は世界中にたくさんいるはずですが、
どうしても知らない。
ストーリーを知らない。

強い国が強いのは、
そういった物語が多く蓄積されているからだと思います。

「君みたいな人は過去にもいたよ、
それを乗り越えて金メダルをとったんだ」という人・物語があれば、
人はどれだけ希望をもてるか、頑張れるか。

物語の良いところは、
発祥地が別に自国・自チームじゃなくていいところです。
共感できれば良いのです。

イチローの名言、ネルソン・マンデラの名言など
国や種目問わず、偉人たちの名言に共感できれば、
それだけで人は頑張れるのです。

「頑張れ」という単語での鼓舞ももちろん大事ですが、
今自分たちが輝かしい「ストーリー」の一部であること、
その物語をどれだけたくさん持っているかが、
最も大事なのではないかと思います。

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