田川健三「キリスト教思想への招待」 正統と異端

正統と異端とかいった図式を描いて、正統が異端を弾圧した、などとすぐに図式に考えたがる人は、短絡的に、悪いのは思い上がった正統で、異端にこそすぐれた正しさが見出される、などと思いがちである。いや、そのようにていねいに考えずとも、なんとなく「異端」の肩を持つ方がカッコいい、と軽く考える「学者」もいらっしゃる。いや、「正統」の教会の歴史はどのみちすでによくわかっているけれども(本当はそんな簡単にわかるわけないのだが)、「異端」のことはよく知られていないから、「異端」の「研究」をするのが「学者」としてかっこいい、とお思いの人もいる。しかし、「異端」思想を排除しようとした「正統」の側の努力に非常にすぐれた姿勢が見出される場合も多い、ということは知っておいた方がいい。


田川健三 「キリスト教思想への招待」

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