一燈蛍然として、万籟声無し
一燈蛍然(いっとうけいぜん)として、万籟(ばんらい)声無し。此れ吾人(ごじん)初めて宴寂(えんじゃく)に入(い)るの時なり。暁夢(ぎょうむ)初めて醒め、群動未だ起こらず。此れ吾人初めて混沌を出ずる処なり。此れに乗じて一念光りを廻らし、烱然(けいぜん)として返照(へんしょう)せば、始めて耳目口鼻、皆、桎梏にして、情欲嗜好は悉く機械たるを知る。
灯がひとつ、かすかにまたたき、物みな眠りにつくころ、私の心にも安らぎが訪れる。暁の夢から目覚め、物みな眠りからさめやらぬころ、私の心は