宗教の事件 71 吉本隆明・辺見庸「夜と女と毛沢東」
●自分を疑う回路を失った社会の恐さ
吉本 オウム・サリン事件というのは戦後史最大の事件だと思います。事件の背後には戦後日本の弱点がぎっしり詰まっている。だから裁判にかけて、はい片付いたというものではないし、裁判で論じきれるものでもないと思います。
辺見 オウムという集団は、ぼくらの社会が無意識に生み出したものだと思います。ですから、ある意味では僕らの鏡のような集団ですね。オウムをつぶさに見れば、自分の顔が映ってくるようなものでしょう。オウムの犯罪に途方もない恐ろしさがある