【第5回】秋田スズキ 石黒 佐太朗 専務「秋田愛:石黒専務の目指す“働くのが楽しい場所”」(後編) ~呼ばれたら飛んで行く「地方創生」屋さん~

地方創生DXコンサルタントとして活動していく中でご縁があり株式会社猿人様主催の「自治体DX 友だちの輪」にてコラムを掲載させていただいておりました。

こちらのコミュニティが昨年度で終了したとのことで今回、猿人様よりこれまで投稿していた記事を私のNoteで掲載する許可を頂きましたので投稿していきます。

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▼前回のコラムはこちら

筆者:では専務、これからの秋田はどう取り組んでいきましょうか。

石黒専務:消費喚起など施策も色々行われていますが、まずみんなの気持ちに余裕がないとなんにもできないです。暇とお金が無いとできることが限られてしまいます。私は経営者としてそれもまず作り出せたらいいなと思っています。自治体には無料設備の整備や減税などを依頼したいこともありますが、私は事業家としてやるべきことがまずあると思っています。事業をしっかり運営して仕事は楽しい、そして給与も高い、という環境を実現することが第一の理想です。まだまだです、もっともっと頑張ります。

筆者:なるほど。まさしく経営者の本筋を突っ走られるご覚悟ですね。

ちらと自治体の話題が出ましたが、自治体とお仕事されることはありますか?冒頭にもお伝えしましたが、当記事は自治体ご関係者向けのコミュニティで発表される記事なんです。

石黒専務:そうでしたね。私がそんな場に登場していいのだろうかとは今も思っていますが。笑

筆者:ここまでのお話で秋田人のアイデンティティについて、とても深いお話を聞けたと私は思っております。テーマが重すぎて記事にするのがきっと大変です。笑

実際専務は自治体の方とお仕事する機会はありますか?

石黒専務:全く無いです。お役に立ちたい気持ちはあるのですが。

資金援助的な話だけではなく、具体的に手伝えることがあれば考えたいと思っています。まだ現実にその機会は得られてないですが。たとえば接客マナーの研修や、DXの推進を共同研究/検討するとかも色々あるのではないかなと思います。

筆者:なるほど。その接客マナーという話面白いですね。何か思い当たるきっかけがあったのですか?

石黒専務:市役所の窓口それなりに行くのですが、正直あまり良い雰囲気ではないかと。窓口にお伺いして気分よく帰路につくことがあんまりないです。弊社はまずお客様に“気持ちよくお帰りになっていただく”ことを大切にしているので。どういう目的意識になってああいった窓口対応になるのかなって思ってしまうんです。個々人で知り合うと、いい人たくさんいるのにも関わらず、です。

役所の職員のみなさんが、秋田市民の役に立ちたい、喜んでもらいたい、笑顔になってもらいたい、と思えばやりがいもたくさんあるはずだけど、きっと中にいると縦割りで階層があって、制約もあって、働いている方たち自身が悲しい気持ちになることも多いのかな、そんな気持ちになってしまうのかな、なんて妄想しちゃいます。過激な発言かもしれませんが、そんな悲しい気持ちになってしまう職場なのだったら全部機械に変えてしまったらいいのにとも思ってしまいます。

筆者:辛辣ですね。でもある種愛情も感じます。本当なら楽しい職場にしたいし、訪問した人もありがたい気持ちになって帰ってもらいたいですよね。

石黒専務:そうなんですよ。その方が働く側だって楽しいしやりがいもあるじゃないですか。でもそれができない環境なのかなって思ってしまいます。何か私共で協力できるのであれば是非、と思うんです。秋田を“働きたい場所”にするための協力は秋田人として惜しまない気持ちはありますので。

筆者:不思議ですね。秋田でこうしてお会いした皆さんいい人たくさんだし、私も大好きです。役所にお邪魔しても冷たくされたということはあまりないものの、よく思い出してみると確かに最初はにこやかにご対応いただいてもいざ一緒にお仕事しましょう、と働きかけると急に冷たい反応が帰ってくる経験は思い起こすと少なくないです。特に秋田にお邪魔し始めた最初の頃。特段のご紹介を介せずにいろんな方にお会いしていた頃はそうだったことを思い出しました。

石黒専務:“えふりこき”ってやつです。とにかく外面はいいんです。でも本心ではあまり歓迎していない。自分も数年前まではそうでしたからわかります。そういうの嫌だなぁと思いながらもそうでした。

筆者:実際のところこれからの秋田は変わりそうですか?

石黒専務:なかなか難しいでしょうね。前年首長選挙がありましたが特に新しいことは起きずに現職の候補者が当選しました。この事自体は良い悪いも無いのですが、「このままじゃ駄目だよね」という話はあちこちで聞くけれど変化は望まない。「俺もやんねぇからお前もやるな」という県民性が強いなとしばしば感じます。大きく変えようとして失敗するリスクがあるくらいなら、やらない、そういう考え方です。だけど出る杭は打つ。自分以外の人が特別に成功するのは嫉妬しちゃうから。

筆者:それって翻って、日本全体にも蔓延している性質かもしれないです。

石黒専務:その度合が秋田は高いのかなぁと感じます。

筆者:それは御社内でもそうですか?

石黒専務:思い出すのが辛いですがそういう場面がありました。今も完全になくなってはいないですが。

これからの仕事の展開や自身の将来が不安になって会社を辞めていく、そして今度は残った社員の負担がその影響で重くなっていく、その辛さでまた辞めてしまう社員が出てくる。本当にいけない負のスパイラルです。これを歯止めするために全力で状況を変えていかなければならないと思っています。

筆者:いまご一緒させていただいているDX部やSNSマーケティングチームなどはその一環としての役割が重要ですね。この活動の究極ゴールは“従業員みんなの収入を上げていこう”ですから専務の進みたい方向に貢献できる力をもっと身につけてくれることが期待できますよね。

石黒専務:そうですね。焦らずに地道に若い子たちが結果を出し始めてきてくれている。これらの活動には期待感いっぱいです。まだまだ社内での認知が足りないのでそこは私が頑張らないといけないです。

▼DX浸透へ!LINE WORKSではじめる秋田スズキの取り組み

筆者:専務のそういった“思い”を実現させる活動って仲間はいますか?

石黒専務:過去は孤軍奮闘しているイメージでおりました。今は上記活動のメンバーもそうですし、社内でも少しずつ増えてきてくれています。私が口に出して、行動に移していくことで共感してくれて話を聞いてくれて一緒に動いてくれる人が社内で少しずつ増えてきてくれています。まさに変革のフィールドが少しずつできてきているなという感覚があります。これから私の中心である秋田スズキは変革の道を進み始めていると感じています。

筆者:専務のお考えだと秋田スズキの変革が、より愛される・誇りに思える秋田に近づくための専務としての貢献ですもんね。

石黒専務:私にできることはまずそれだと思っています。

いままでは比較的、“ないもの”ばっかりみて不満に思っていましたが、これからは見つけられてなかったいいものを見つけて、もっといいものを作り出していけたらと考えています。

石黒専務:さっき廣瀬さんがあげてくれたDXやSNSの活動もそうですが、役員間での会話も圧倒的に増やしているんです。これは心強い仲間だと感じています。話す時間をこうして増やすことで意識もどんどん私と一緒に変わってきてくれていて、こうした仲間を得られることはとても幸運なことだなとも感じています。

秋田のイメージって根雪のように深くしばれているところ。それは絆とかの強さでもある一方で変化することを難しくしている。でも、自分の家の床下から少しずつ溶かしていって、最初に秋田スズキという自分の家の空気を“ここに居たい”ともっともっと思える場所に変えていきたいという思いです。自分ちを最初にいい場所にできなきゃ秋田もましてや日本なんて絶対に変えていけないですよね。その基軸としての秋田スズキ改革だと思って取り組んでいます。

筆者:その温度は自分が秋田を好きになれていなかったことに対する反逆の狼煙ですかね。

石黒専務:そうですね。出ていくことは良くないことだという感覚を少しずつ変えていって、出ていく人はどんどん出ていっていい、そして秋田の良いところも悪いところも全部見ることができるようになってその上で秋田を選んでもらえるようにしたらいい。

そのためには我々が選びたくなる秋田を作っておくよ、という覚悟です。

筆者:覚悟は若者たちに対してお父さんのそれですね。

石黒専務:お兄さんでお願いします。笑

温かいなって思われる土地になりたいですよ。「なんもないけどよく来てくれたね!」っていつでも言ってくれる人たちがいっぱいいる秋田に。理想的な秋田のイメージは“コンパクトだけど人があったかい”って場所です。

筆者:今私が感じている秋田は、ご縁を頂いた人たちに恵まれているからかそう感じることの方が多いです。でも専務やみなさんがもっとそれをたくさん感じる秋田にしてくれたらもう離れられないですね。

石黒専務:いま47番目ですからあとは上がっていくだけです。やりがいだらけです。我々は企業側民間側で働く居場所をもっと良くするという意味でまだまだ頑張ります。今回のテーマでいうところの行政のみなさんも秋田の人、県外の人に対して来てくれる人をおもてなししようよって言いたいです。ふわっとした感覚ですが、お年寄りへ支援する仕組みは色々整ってきている、それももちろん大事だけど、同じくらい若い人も大事にしなくちゃと思うし、観光資源だってちゃんと整備されてないだけでたくさんあるんだから県外から来てくれる人に向けて、秋田に来たくなるような、一度限りではなく何回も何回も来たくなるようなおもてなし特化な仕組みを考えてほしいなって思います。

筆者:それは絶対響くと思います。私もそうですが「わざわざウチまで来てくれてありがとうな」ってもてなされたら一瞬でその土地・人に惚れてしまいますよね。

石黒専務:ですよね。我々もそういう環境を作るために頑張りますし、行政の皆さんにも来てくれた人に対してもっと「おもてなし」の心を基本に仕事しようよって思っています。またここに来たくなるような取り組みをもっともっと起こして欲しいです。秋田スズキの社員にも話しているのですが、特別なことでなくても自分たちが今持っているもので工夫して親切にしてあげる、そういう気持ちの持ち方から始めなくちゃいけない。なんか偉そうなことばっかり言っちゃいましたが、まずは私が自分ちの秋田スズキに対して責任持って頑張ります。それ以外のことも協力したい思いはいっぱいあるので機会をもらえたらなって思います。

筆者:今日はとっても真摯な思いが詰まった秋田愛を聞かせてもらった気がします。秋田もっともっと良くなりそうですね。私も尽力したい思いが強まりました。専務、最後にどんな変化が秋田に起きてほしいですか?いや起こしたいですか?

石黒専務:そうですね、これは私自身に向ける言葉でもあるんですが、ワクワクするスローガンが欲しいです。健康寿命日本一とかスポーツ立県とか言われても正直ワクワクしないです。もっとワクワクするものを目指したい。死ぬまで今の状態が守れればいいって雰囲気が強すぎるのですが、そうじゃなくて子や孫の世代にどんな秋田を残すんだってもっともっと考えなくてはいけない。「自分が動けるうちは命使おうよ」って思います。“えふりこき”しないで命使って頑張ったら、きっといい方に物事は進みますから。

筆者:おおおお。最高の励ましですね。

石黒専務:わたしここまで秋田の悪口ばっかり言ってません?でも、ここまで話してたらやっぱり私は秋田が大好きなんだって再確認してます。私ばかりがここでボロッかすに言ってるんじゃないかって不安にもなってきましたが、敢えてここで言葉にすると私だけはせめて秋田を愛してないと!と思っているのは間違いないです。

振り返ってみると若い頃あまり秋田の伝統や文化に関わりが少なかったなと思うこともあるなあ。例えば無形文化財としてのお祭りが日本で一番多いのが秋田だとお褒めいただくこと多いのですが、自分は関わりが多くないので自分ごととして誇りに思えてないんです。もっと関わっていたら良かった。

筆者:そう感じたら今からもっと関わりましょうよ。是非私も混ぜてください。

石黒専務:そうですね、そうしましょう。

筆者:専務、今日は真摯誠実なお話ありがとうございました。私は秋田の魅力をたくさん知っているつもりですがこれからもっと秋田が素敵な土地になる予感がたくさんするインタビューでした。

石黒専務:ありがとうございました。大丈夫かな、うまく書いてくださいね、今になって心配になってきました。

筆者:承知しました。専務の秋田愛が伝わるように致します。

石黒専務:よろしくお願いいたします。

©2023年 株式会社猿人ならびに「自治体DX 友だちの輪」コミュニティ

本資料は株式会社猿人主催「自治体DX 友だちの輪」コミュニティにてコラム掲載。
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