『となりのトトロ』の俳句鑑賞
こんにちは!
アニメ俳句部部長の広瀬康です。
先日、アニメ俳句部で『となりのトトロ』の俳句を募集したところ、計81句の俳句が集まりました。
みなさまが詠んでくださった句の中から広瀬が個人的にいいなと思った句をピックアップし、鑑賞文を書きました。
句のあとに作者名を敬称略で記させていただきます。
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日盛や母の帰りを疑ひて 雨野理多
体が弱く入院しているメイとサツキの母。病院から電報が入り、母の一時退院ができなくなるかもという不安が姉妹の胸中に生まれます。「母の帰りを疑ひて」というマイナスなイメージのフレーズに対し、「日盛」という夏の日中の日が最も照りつける明るい季語を取り合わせているのが巧いです。
しがみつく子のやはらかし盆休み イサク
「しがみつく子」はメイ、しがみつかれているのはお母さんというふうにこの句を読みました。久しぶりに会えた我が子の感触のなんとやわらかいことか。「盆休み」に家族がそろったほっとするひととき。
万緑の中引越の大荷物 一久恵
冒頭の草壁一家が村へ引っ越してきたシーンですね。「万緑の中」という表現にぴったしなトトロの舞台。崩れ落ちそうになるまでにこれでもかとオート三輪に積まれた「引越の大荷物」。余計な脚色はせずに、冒頭のシーンを十七音の言葉で過不足なく描写できていていいですね。
木と人は仲良しだった夏日影 土佐藩俳句百姓豊哲
時代が進むごとに科学は進歩し、自然環境は破壊されていっています。トトロを観て「木と人は仲良しだった」時代に思いをはせます。「夏日影」は夏の日の光のこと。木も人も太陽の光に育まれ、生きていきます。
オカリナの音は書斎へ星涼し 土佐藩俳句百姓豊哲
メイとサツキが樹上でトトロと一緒にオカリナを吹いていたシーンですね。この句のよいところは、オカリナの音色のゆるやかな動きが見えてきそうなところです。この句の「書斎」はきっと戸や窓が開いていて、オカリナの音が入って来るし、夜空に涼し気に輝く星を見ることもできる、そんな素敵な書斎なのでしょう。
大中小のトトロ秋日和の散歩 鳥田政宗
サイズの異なる三種のトトロ。メイが最初に見つけたのは、中トトロと小トトロでしたね。大気が澄んで気持ちのいい「秋日和の散歩」に出かけたら、あなたもトトロに会えるかも。「散歩」は作中のオープニングテーマのタイトルにもかかっていますね。
井戸水にくるりくるりとなすとまと なつふじ
カンタのおばあちゃんの畑で採れた野菜を冷やしているのでしょう。中七の「くるりくるりと」で野菜の回転する動きが見えてきます。「なすとまと」の平仮名表記もやさしい感じがします。
ボロ傘や取っ手に君の汗の跡 北欧小町
これはカンタがサツキに貸してあげた傘のことだと読みました。季語は「汗」。傘の取っ手についた汗の跡の描写から、サツキにどう声をかけようかというカンタの緊張が感じ取れます。気持ちの直接表現ではなく、描写で気持ちを伝えようとしているところがすごいです。
とうもろこし抱いて夕暮れの迷子 ろまねす子
メイのことを詠んだ一句。季語「とうもろこし」は母へのお見舞いの品です。夕暮れの迷子ですから、辺りが暗くなるにつれてメイの不安はいっそう大きくなっていきます。頼れる姉もそばにいない今、「とうもろこし」を強く胸に抱きしめるしかありません。「夕暮れの」と時間帯を限定したのがすごく効果を発揮しています。
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謝辞
みなさま、素敵なアニメ俳句をありがとうございました。
今回の『となりのトトロ』の俳句81句は一覧画像にしてアニメ俳句部のアカウントからツイートする予定です。でき次第、後日、ツイートします。
今後もアニメ俳句部はアニメと俳句をかけあわせたイベントを開いていきます。
【アニメ俳句部今後の予定】
9月23日~ 『竜とそばかすの姫』の俳句募集
リクエストご要望等ございましたら、いつでも気軽にリプライやDMをお送りください。
ではまた。
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