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『葬送のフリーレン』を見て俳句を70句詠んだ半年間の旅の記録

こんにちは。趣味で俳句をしている広瀬康です。

アニメ『葬送のフリーレン』を見て俳句を詠んだので、アニメを振り返つつ、自句自解をしていこうと思います。


アニメ吟行をするということ

そもそもアニメを見て俳句を詠むってどうなの?という疑問を持つ方もいらっしゃる方もいるかもしれない。

アニメを見て詠んだ句は、季語の現場に立って詠んだ句に比べて、浅くなってしまうのではないか? 

あるいはそうかもしれない。けれど私はそれでもいいと思っている。

浅いか深いか、季語の現場に立っているか否か、そんなことよりも楽しいと思えるかどうかの方が大切だと考えている。

アニメを見て俳句を詠む「アニメ吟行」のいいところは、気力・体力・お金がなくても、想像力次第で部屋にいながら遠出ができるところだ。

現実の季語からしか得られないものがあるならば、アニメの季語からしか得られないものもあるはずだと私は信じている。

放送前に詠んだフリーレン俳句

原作の漫画をすべて読んでいた私は、フリーレンのアニメが金曜ロードショーで放送されると知って狂喜乱舞した。

PVもよかったので期待は日を増すごとに大きくなっていった。

そこで私はフリーレン放送に先がけてこんな句を愛媛新聞の若手俳人向け俳句投稿欄「青嵐俳談」に投句した。

葬送の流星群のやまぬ丘

結果は森川大和選の地選。フリーレンが老いたヒンメルたちと再会し、一緒に半世紀(エーラ)流星を見たシーンを詠んだ。

「葬送のフリーレン」という作品に出合わなければ、「葬送」という言葉と季語「流星群」を組み合わせる発想は、一生湧いてこなかっただろう。

こんな句が詠めたのは、葬送のフリーレンという作品のおかげである。

金曜ロードショー初回2時間スペシャル!!

待ちに待った放送の日。

仕事を早く切り上げて帰り、夕食も風呂も21時までに終わらせて、作句用のA4ノートと歳時記を用意してアニメを見ました。

期待をはるかに超えるクオリティでした。

ここではいくつかの自句を紹介しつつ、アニメを振り返ります。

春の土かける勇者の棺へと
ヒンメルの埋葬のシーンを詠みました。スコップで土をかけていって、棺が見えなくなるんですね。

そして時間差で悲しみに気づき泣き出すフリーレン。泣かないでフリーレンの頭をなでるハイターと背中に手を置くアイゼン。

ここのフリーレンの涙に対してのアンサーがアニメ28話のヒンメルの台詞「涙の別れなんて僕たちには似合わない」なんですね。

だからフリーレンはもう一度ヒンメルに会うために死者の魂の眠る地オレオールを目指すと。すごすぎる。

葱を切る音の途切れてじき別れ
死期の近いハイターとフリーレンの会話を、葱を切りながら背中越しに聞いているフェルン。

もうすぐ死んでしまうハイターのことを思い、フェルンは葱を切る手を止め、包丁を持ったままその袖で目元をぬぐいます。

台詞に頼らずキャラクターの動作でフェルンが泣いたことを視聴者に伝える。こういう表現好きです。

腐敗なる封印解けて初嵐
腐敗の賢老クヴァールとの一戦を詠みました。このアニメ、繊細な表現だけじゃなくて戦闘シーンもすごいんかいとびっくりしました。

そして七崩賢でもないのに株が上がり続けるクヴァール。この作品の魔族ってなんか好きになっちゃうんだよな。

私の三大お気に入り魔族は、クヴァール、アウラ、マハトです。ソリテールは嫌い。

この初回2時間スペシャルに関しては、私が運営するアニメ俳句部でも俳句の募集を行い、全94句のフリーレン俳句が集まりました!

私には詠めないすばらしい俳句ばかりですので、ぜひご覧ください。

シュタルク編 <ふざけんなよクソババア!>

シュタルが仲間になった5話・6話。

ちなみにフリーレンのアニメは、全話2回見ています。

1回目は俳句のことを考えずただ楽しく。2回目は俳句の種を集めつつ、作句しながら。

ジャンボベリースペシャルアイスちっさくて
シュタルクが注文した「ジャンボベリースペシャル」というアイスを詠みました。

お菓子もなんでも時代を経るごとにちっさくなっていきますよね。

「服が透けて見える魔法」を使用中のフェルンがシュタルクを見て口にした「ちっさ」という言葉も意識して使ってみました。

ハンカチの返却断固拒否されて
この句は実はアウラ編の句なのですが、シュタルクつながりでここで紹介しておきます。

飲み物をこぼしておもらしみたいになった股間を拭いたハンカチの返却を拒否されるシュタルク。

シュタルクって強いだけじゃないから、町のみんなに好かれるんだろうなあ。

断頭台のアウラ編 <ヒンメルはもういないじゃない>

ついにアニメであの台詞が聞けました。

フリーレンのアニメは、声優さんの声も芝居もすごくて、本当に死角のない神アニメだと思います。

すごすぎて、マジでこのアニメなんなの?とドン引きするレベル。

「月が綺麗? ヒンメルはもういないじゃない」
鍵括弧ついてますけど、「?」とか入ってますけど、これも俳句です。

俳句のいいところは作者が俳句だと言い張れば俳句になるところだと思ってます。アウラに対し静かにブチ切れるフリーレン、最高でした。

満月の放つ魔族を殺す魔法
フェルンの放つゾルトラークを詠みました。

フェルン対リュグナーの一戦、表情ひとつ変えないフェルンとだんだん焦ってくるリュグナーがいいんだよな。

フェルンの速射連射能力がアニメだとさらにかっこよく描写されていました。

天秤に量る狐火てふこころ
アウラの「服従させる魔法」を詠みました。

アニメ俳句を作るときに「狐火」という季語はとても便利なんですね。

他にも「風光る」とか「空高し」とか私はよく使ってしまいます。

ザイン編 <もう付き合っちゃえよ!!!>

葬送のフリーレンは、かわいいキャラだけじゃなくて、かっこよくて渋い大人がたくさん出てきます。

ザイン、リヒター、デンケン、レルネン。不器用な強者男性好きです。

年惜しむ今さらでなく今のこと
「私は今の話をしている」ヒンメルがフリーレンを仲間に誘うときに口にした言葉を、今度はフリーレンがザインに言うエモさ。

自分も今さらって思う癖があるので、響くんですよね、この台詞。

冬茜ちゃんと大人をやれている
フェルンとシュタルクの和解を促したことで、フリーレンに「ザインはちゃんと大人やれていると思うよ」と褒めてもらったザインを詠みました。

二十歳になっても全然大人になれなかったし、今年で三十歳になるのに全然大人をやれていない広瀬康に比べて、ほんと、ザインはちゃんと大人をやれていると思うよ。

仲裁は僧侶の仕事暖炉燃ゆ
またまたフェルンとシュタルクの喧嘩を仲裁したザイン。

これのあと、例の名台詞「もう付き合っちゃえよ!!!」が出るんですね。

ザインは一時離脱しましたが、今からどんな風に再会するのか楽しみです。

一級魔法使い試験編 <殴り合いじゃぁぁぁぁッ!!!!>

1月から始まった一級魔法使い試験編。

このクオリティで連続2クールとか大丈夫かと思いましたが、そんな不安を吹き飛ばすように本当に毎週面白かったです。

ローブ脱ぎ捨て夕立の殴り合い
フリーレンパーティーに敗北し、魔力も切れたデンケンたちが取った最後の手段、殴り合い。

魔法使いらしからぬ手段を用いてでも最後まで醜くあがくその姿勢がめっちゃよい。

デンケンは作中で一番好きなキャラなので、アニメでもめっちゃ有能に描かれていて嬉しかったです。

黄金郷編も絶対アニメ化してくれると信じてます。

破滅なる雷 地獄より業火
フリーレンが自身の複製体との戦いで用いた戦闘用の二種の魔法「破滅の雷を放つ魔法」「地獄の業火を出す魔法」を二物衝撃で俳句にしてみました。

分かち書きなんて普段の投句では絶対にしないけど、フリーレンを見ていると魔法と同じように俳句ももっと自由でいいかなーと思って分かち書きの句を作ってみました。

コピーレンとの戦闘シーンは、原作にない魔法も盛り盛りですごかった。

忘れ得ぬ弟子たちの名や花畑
アニメではゼーリエの弟子溺愛っぷりが爆発していましたね。

フランメを「あの子」と呼ぶゼーリエ。

弟子の弟子の弟子に私の弟子になれと言うゼーリエ。

フリーレンを一生出禁ではなく、たった千年出禁にするゼーリエ。

声優の伊瀬茉莉也さんの声も芝居もすばらしかったです。

青嵐俳談 <嵐を呼ぶ一句>

2月16日の青嵐俳談。

後日譚語るエルフの息白し
神野紗希先生選で嵐を呼ぶ一句に選んでいただけました。

もろフリーレンを詠んだ句とわかる一句でしたが、なんと載せていただきました。

アニメ俳句も載せてくれる青嵐俳談は本当に懐が深いです。

「エルフという幻想の存在を、季語が肉体化した」という評をいただいて、幻想を季語で肉体化するといい句になるんやと気づかされました。

今後アニメ俳句を詠むときの参考にします。

広瀬康が詠んだフリーレン俳句一覧

葬送の流星群のやまぬ丘
後日譚語るエルフの息白し
十年の旅の終わりの流星群
竜の角しまひし箪笥より夜霧
春の土かける勇者の棺へと
ブロッコリ仲間の皿へ連投す
葱を切る音の途切れてじき別れ
秋晴や一番岩を撃ち抜いて
空経由して荷台へと積むかぼちゃ
エルフ知る蒼月草の花言葉
蝶生る別に魔法じゃなくたって
花畑わたしをほめてくれた馬鹿
誕生日だからかたまらなく夕焼
魔法史の本読み聞かす星月夜
腐敗なる封印解けて初嵐
マフラーを巻いて海岸清掃へ
私より私知る君初日の出
葡萄へと酸味を還す魔法かな
過ちは千年先や苗木植う
風光る魂眠る地の対話
最愛の死者の幻影めいて霧
空高し修行の跡の亀裂美し
薫風や師匠譲りの手の震へ
くだらなく楽しい旅のかき氷
ジャンボベリースペシャルアイスちっさくて
行く春に像を残してゆく理由
ハンカチの返却断固拒否されて
「月が綺麗? ヒンメルはもういないじゃない」
長き夜を両断したる戦斧
満月の放つ魔族を殺す魔法
花畑ふくめて先生のお墓
天秤に量る狐火てふこころ
白露は千年以上生きてなほ
タメ口は死罪ぞ水ぬるむ無罪
雪の降る剣の里の言ひ伝へ
冬帝の服だけ溶かす薬かな
汗かいた戦士へでかいハンバーグ
身ぐるみを剥がされ大人冬銀河
年惜しむ今さらでなく今のこと
花野へと勇者を倒す投げキッス
若者の特権日脚伸ぶ和解
冬茜ちゃんと大人をやれている
冴返る鏡蓮華の指輪かな
月の夜の路銀のための社交界
蛍とぶ長寿の友の記憶のせ
風光る戦士ゴリラの行き先は
仲裁は僧侶の仕事暖炉燃ゆ
風光るきっかけとなる勇者かな
枝垂れたる氷柱を響かせり桜
風邪の手を握られていてもう大人
ひざに寝て冬青空が半分だ
聖杖の証の錆となる緑雨
みづうみに隕鉄のよな小鳥来る
湖凍る対人戦の始まりぬ
春を得る特権なんてくだらない
ローブ脱ぎ捨て夕立の殴り合い
蝶青し空の果てまで晴れに晴れ
零落の王墓を満たす春の闇
未踏破を踏破してみよ大試験
髪洗うしないよ邪魔も手助けも
ちりちりと灼くる匂ひの縦ロール
おっさんにおっさんと言う氷面鏡
破滅なる雷 地獄より業火
人間の時代もうすぐ秋夕焼
囀の速射を躱しきれず斜視
最悪な気分勤労感謝の日
弟子として師匠へ毛布かけ直す
忘れ得ぬ弟子たちの名や花畑
羊群の過ぐるを待てり春の空
あっさりと別れる春はだってまた

後日譚とちょっと宣伝

アニメ「葬送のフリーレン」を見て俳句を詠んだこの半年間は、私の人生のかけがえのない時間になりました。

この素晴らしいアニメを生み出してくれた方々に本当にありがとうございましたと言いたいです。

続編も絶対あると信じて、明日からも生きていきます。
そして最後にちょっと宣伝を。

記事中ちらっと触れたのですが、私、広瀬康は、アニメを見て俳句を詠む「アニメ俳句部」という活動をしています。

年会費無料、会員登録なし、入脱会自由、参加資格不問、初心者も玄人も大歓迎の俳句グループです。

不定期で(主に金曜ロードショーでアニメが放送されるときに合わせて)アニメ俳句を募集するイベントを開いていますので、ご縁がありましたら、ぜひご投句ください!

最後まで記事をお読みいただきありがとうございました!
ではまた。

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